全日本モトクロス選手権MFJグランプリの会場は、スポーツランドSUGO。今年は開催直前に日本列島の東を通過した台風の影響で豪雨に見舞われ、金曜の時点ではひどいマディ状態となりました。土曜にはタイムスケジュールの変更やコースのショートカットが実施されるほどでしたが、スタッフによる懸命の整備作業により、コースはマディからベストコンディションへと変わりました。
IA1クラスには、世界選手権MX2ランキング11位のミッチ・エバンス(オーストラリア)が出場。CRF450RWに乗り換えての活躍が注目されました。
●IA1 ヒート1
ホールショットを奪ったのは、Team HRCから3戦連続でスポット参戦したAMAライダーの富田俊樹。これに成田亮(Team HRC)と岡野聖(ヤマハ)、ゲスト参戦したエバンスが続きました。そしてエバンスが、オープニングラップから実力を発揮して、いきなりトップまで浮上しました。
シリーズタイトル獲得にリーチをかけた山本鯨(Team HRC)は、慎重なスタートで1周目6番手。それでも3周目には、北原岳哲(カワサキ)と岡野を抜いて4番手に上がりました。これでTeam HRCが上位を独占しましたが、すでにエバンスは富田から6秒以上のリードを奪い、富田も3番手をキープする成田を15秒ほど先行していました。
一方、成田と山本は僅差で、4周目には山本が先行。成田は次周、岡野にも逆転されましたが、ここでペースを上げて7周目に岡野を再逆転すると、再び山本との距離を詰めました。そして9周目に成田が山本をパス。リスクを避けたい山本は、成田をマークするも勝負を仕掛けませんでした。そして16周のレースは、エバンスが独走で勝利。富田が2位、成田が3位、山本が4位でゴールしました。
●IA1 ヒート2
ヒート1を終了した段階で、成田に対する山本のポイントリードは26点。山本は、ポイント獲得圏となる20位以内でゴールすれば自力でチャンピオンを決定できる状況でした。このヒートではエバンスがやや出遅れ、安原志(カワサキ)に山本と富田、成田が続きましたが、山本は1周目に順位を下げ、富田が2番手、成田が3番手に浮上しました。
エバンスは1周目を5番手でクリア。これに山本が続きました。2周目、成田は5番手に後退し、エバンスは3番手に浮上。次周、富田が安原を抜いてトップに立つと、次周にはエバンスも安原をパスしました。そして5周目、エバンスが富田を抜いてトップ。同じ周に、負傷しているヒザのじん帯を再び痛めた成田は、9番手にダウンしました。
先頭に立ったエバンスは、このヒートでも再び独走。富田は、徐々に単独走行の2番手となりました。レース中盤、山本はややペースを上げて追い上げを開始。11周目には安原を抜きました。そしてレースはエバンスが優勝し、富田が2位、山本が3位で再びTeam HRCが表彰台を独占。成田は9位でゴールし、山本がシリーズチャンピオンに輝きました。
ミッチ・エバンス(IA1・優勝/優勝)
「オーストラリアのクイーンズランドにあるコースとよく似たレイアウトでしたが、久しぶりにレースを楽しむことができました。昨日はマディでしかも短いコースだったので、どうなることかと思いましたが、今日はとてもいいコンディションになりました。テクニカルな部分が多々ありましたが、自分の走りに集中することでダブルウインを取ることができました。ヒート1は好スタートが決まり、オープニングラップのうちにトップに出て、あとは自分の走りをするだけのことでした。ヒート2では出遅れてしまったのですが、焦らずに時間をかけてトップに立ちました。450に関してはまだ不慣れですが、レース経験もあるし、身体の大きい自分には250よりも450の方が合っていると思います」
富田俊樹(IA1・2位/2位)
「両ヒートともミッチ・エバンス選手には及びませんでしたが、日本に戻ってきて3戦目にして、ようやく少し自分本来の走りができるようになってきた感覚があります。両ヒートとも、スタートも決まりました。ただし、レース中盤から終盤にかけては、まだ足りていないと思います。実際のところ、エバンス選手に大きく離されてしまうと、気持ちとしてあきらめかけてしまうということもあるのですが、それ以上にラインを参考にできないという問題も発生します。2~3秒くらいの圏内にいれば、相手のラインも見られるしターゲットもあるので走りやすいのですが、それ以上になってしまうと、こちらのライン選択に迷いが生まれ、試行錯誤している間にもさらに離されるという悪循環。それだけに、抜かれてからもう少し粘りたかったです」
山本鯨(IA1・4位/3位)
「昨年、ポイントでリードしながら今回と同じスポーツランドSUGOでの最終戦で転倒し、負傷リタイアでチャンピオンを逃すということがあったので、レース前はめちゃくちゃ緊張しました。もちろん昨年もプレッシャーを感じていましたが、その比ではなかったですし、終わってから振り返れば、自分も普通の人間なんだなと思います。ただし、昨年そういう苦しい経験をしたことが、自分を成長させてくれたと思います。ヒート1は成田亮選手とのバトルになり、自分が前でゴールすればヒート2を待たずにチャンピオンが決定する状況でしたが、成田選手からものすごい気迫を感じたこともあり、一歩引いて冷静に、チャンピオンを獲るために最良の方法を選択しました。今季は、シーズンオフをケガのリハビリに費やし、開幕1カ月前からようやくバイクに乗りはじめました。厳しい状況でしたが、多くの方々に支えられ、辛い時期も乗り越えられました。ありがとうございました!」
成田亮(IA1・3位/9位)
「前戦に続いてヒザのじん帯を負傷した状態でレースに臨み、ヒート1はなんとか3位になれましたが、どんな状況でもトップを目指すのがプロフェッショナルなレーサーだと思うので、表彰台に上がれたうれしさではなく、勝てなかった悔しさを感じました。ヒート2は、3コーナー手前の2連ジャンプを跳べずに通過したときにバランスを崩してしまい、ケガしている足を着かずにクリアしようとガマンしたのですが、転倒しそうになって足を着き、それでまた痛めてしまいました。チャンピオン争いに関しては、山本鯨選手が今年もアクシデントでポイントを取りこぼすなんてことはまずないと思っていましたが、今回のレースでトップ争いをするために万全の体調で走りたかったというのが本音です。とはいえ、ケガした自分が悪いので仕方がないです」
本田太一|HRCオフロード部門マネージャー
「オーストラリアの有望なライダーで、今後が非常に期待できるミッチ・エバンスを呼んで、世界に通用するライダーを育てるという目標に向かって邁進しました。エバンスはシーズンオフで、しかもまだ慣れていないバイクでありながら好成績を収め、ポテンシャルの高さを見せてくれました。山本についてはタイトル獲得を達成してくれたので、非常に感謝しています。成田は負傷を押して出場しましたが、最後まであきらめない姿勢を見せてくれました。富田に関してはAMAナショナルを終えての参戦になりましたが、今年のベストリザルトでした。Hondaが表彰台を独占する結果となりましたが、これもシーズンを通してTeam HRCを支えて下さいましたスポンサー各位、ファンの皆さまからのご支援のおかげだと感謝しております」
ヒート1
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 143 | ミッチ・エバンス | 16 | 34'05.744 | |
2 | 718 | 富田俊樹 | 16 | +00'40.336 | |
3 | 114 | 成田亮 | 16 | +00'56.794 | |
4 | 400 | 山本鯨 | 16 | +01'01.819 | |
5 | 155 | 大塚豪太 | 16 | +01'19.839 | |
6 | 8 | 岡野聖 | ヤマハ | 16 | +01'32.460 |
7 | 45 | 安原志 | カワサキ | 16 | +01'37.797 |
8 | 44 | 小島庸平 | 16 | +01'44.386 | |
9 | 46 | 小林秀真 | スズキ | 16 | +01'45.120 |
10 | 41 | 北原岳哲 | カワサキ | 16 | +01'49.973 |
11 | 23 | 長門健一 | 15 | +1Lap | |
12 | 17 | 小野千成 | 15 | +1Lap | |
16 | 77 | 鈴木涼太 | 14 | +2Laps | |
19 | 24 | 道脇白龍 | 12 | +4Laps | |
20 | 6 | 星野裕 | 12 | DNF |
ヒート2
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 143 | ミッチ・エバンス | 16 | 33'00.355 | |
2 | 718 | 富田俊樹 | 16 | +00'26.098 | |
3 | 400 | 山本鯨 | 16 | +00'49.610 | |
4 | 45 | 安原志 | カワサキ | 16 | +00'55.861 |
5 | 155 | 大塚豪太 | 16 | +01'02.837 | |
6 | 8 | 岡野聖 | ヤマハ | 16 | +01'06.916 |
7 | 44 | 小島庸平 | 16 | +01'56.359 | |
8 | 6 | 星野裕 | 16 | +02'02.993 | |
9 | 114 | 成田亮 | 15 | +1Lap | |
10 | 166 | 星野優位 | ヤマハ | 15 | +1Lap |
11 | 17 | 小野千成 | 15 | +1Lap | |
14 | 24 | 道脇白龍 | 14 | +2Laps | |
16 | 77 | 鈴木涼太 | 14 | +2Laps | |
18 | 23 | 長門健一 | 14 | +2Laps |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 400 | 山本鯨 | 356 | ||
2 | 114 | 成田亮 | 322 | ||
3 | 8 | 岡野聖 | ヤマハ | 280 | |
4 | 44 | 小島庸平 | 230 | ||
5 | 155 | 大塚豪太 | 227 | ||
6 | 51 | 深谷広一 | スズキ | 220 | |
7 | 45 | 安原志 | カワサキ | 196 | |
8 | 6 | 星野裕 | 194 | ||
9 | 166 | 星野優位 | ヤマハ | 188 | |
10 | 4 | 小方誠 | カワサキ | 176 | |
13 | 718 | 富田俊樹 | 145 | ||
15 | 23 | 長門健一 | 96 | ||
17 | 24 | 道脇白龍 | 80 | ||
18 | 17 | 小野千成 | 79 | ||
20 | 143 | ミッチ・エバンス | 60 | ||
21 | 322 | 横澤拓夢 | 57 | ||
23 | 77 | 鈴木涼太 | 40 |