近年はシリーズ開幕の地としてすっかり定着しているHSR九州(HONDA SAFETY & RIDING PLAZA Kyushu)で、全日本モトクロス選手権の開幕戦が行われました。今大会は昨年4月に発生した熊本地震から約一年となり、MXGPライダーのイブジェニー・ボブリシェフ(Team HRC)が来日。滞在中は、サーキットに隣接する熊本製作所の訪問や、大会当日にはデモ走行の披露、さらにサイン会などに参加し、復興途上の当地にエールを送りました。
HSR九州のモトクロス場は、2014年にレイアウトと土質を見直し、従来のテクニカルセクションに幅の広いハイスピードセクションを加えた、ダイナミックなコースにリニューアルされました。今年はそのコースへ、新たに大量の山砂が運び込まれ、入念な路面整備が施されました。また、緊急車両などの移動のしやすさと、観客の利便性を両立するため、新たにコースサイドの舗装工事も行われ、さらに快適な観戦ができるようになりました。
全日本モトクロス選手権に参戦するTeam HRCは、今シーズン、最高峰クラスであるIA1にワークスマシンのCRF450RWを2台投入。V11チャンピオンの成田亮、MXGP参戦を経て帰国した山本鯨の2人がタイトルを目指して戦います。
ヒート1では、Hondaのファクトリーチームに加入した12年から、これまで5年連続で開幕戦の両ヒート制覇を達成してきた成田が、平田優(ヤマハ)をパスして1周目にトップへ浮上。山本は1周目に3番手となり、Team HRC勢は上位でレースをスタートしました。成田は2周目で転倒を喫しましたが、素早いリカバリーで2番手にとどまりました。
一度はトップを奪われた成田ですが、あっという間に平田との距離を縮めると、3周目にはトップへ復帰。次周には大幅なタイムアップを果たして、一気に6秒ほどのリードを築きました。3番手の山本は、この時点で2番手の平田まで約3.5秒差でしたが、後続の小島庸平(スズキ)からは、約4秒のリードを奪っていました。
レース中盤になると、トップの成田はリードをさらに拡大して独走態勢に。山本は平田に迫り、レースが後半に入った6周目にこれをパスしました。終盤になっても、トップの成田と2番手を守る山本との差は、多少の増減はありながらも大きくは変わらず。そのまま逃げきった成田が、開幕戦となったヒート1で8年連続の勝利を挙げ、山本が2位表彰台に立ちました。
ヒート2は、成田が星野優位(KTM)に続く2番手でオープニングラップをクリア。2周目に入ったところで成田が先行し、これに小島と山本が続いて縦長のトップグループを形成すると、早くも5番手以下を大きく引き離しました。3周目になると、トップグループの中で2番手の星野から4番手の山本までが接近戦を展開しました。そして4周目になると、山本が小島をパス。しかしすぐに抜き返され、4番手をキープしました。5周目には、小島が2番手に、星野が3番手となり、山本は星野の背後に迫りました。そして6周目、山本が星野の攻略に成功して、3番手に浮上。勢いに乗る山本は、次周に小島をパスして2番手となりました。
この段階で、トップの成田は山本に約7秒のリードを築いていましたが、ここから山本がその差を徐々に削り、成田に迫ります。ラスト2周となった10周目、ついに成田と山本の差は約0.5秒に。最終ラップで山本が前に出ると、最後は成田を抑えてトップでチェッカーを受けました。ヒート1に続いて、Hondaが1-2フィニッシュを達成しました。
山本鯨(IA1 2位/優勝)
「世界選手権を3年間経験して、さらに今年の全日本への復帰に向けて、シーズンオフにはやるべきことをしっかりやってきましたが、それでも勝って当然というような甘い世界ではありません。特にチームメートの成田選手は、全日本選手権で11回もシリーズタイトルを獲得しているライダー。手強くないわけがありません。しかし、そういうライダーと同じチームに在籍して、間近で見られるのは、とても恵まれていると思います。自分のレース歴を振り返ってみると、ケガで欠場した時期もあったので、実は全日本の経験というのはそれほど多くなく、全日本特有のコースやわだちなどに、まだアジャストしきれていない感じがあります。やれることをすべてやり、1戦1戦を集中して勝利を狙います」
成田亮(IA1 優勝/2位)
「ヒート1では、トップを走行中の2周目に転倒して、かなりまずいと思ったのですが、Hondaのファクトリーマシンが軽いおかげですぐに引き起こせて、しかもエンジンが停止していなかったので、すぐに再スタートできました。シーズン最初のレースで勝ちたいという気持ちは、上位のライダーならみんな同じだと思いますが、当然ながら僕も勝利に執着してこのレースに臨み、力を発揮することができたと思います。ヒート2は、終盤に山本選手が後ろから来ていることを知り、勝ちを意識して自分の走りが硬くなってしまったのが敗因です。ミスがすぐに転倒へつながるような、難しい路面コンディションでした。とはいえ、だれかに負けるなら、同じチームの山本選手でよかったと思います」
芹沢勝樹 | Team HRC監督
「今シーズンに向けて、多くのテストを重ねてきましたが、初戦にしてその成果を発揮できたと思っています。かなり難しい路面コンディションでしたが、マシンはマディへの対応も事前にしっかり準備していたので、特に問題はありませんでした。監督である私を含む何名かのスタッフが代わり、またライダーの布陣と参戦クラスの設定も変更するなど、昨年までと異なる要素は多いのですが、チームの総合力は変わらず高い状態であることを証明できました。新米監督の私としては、成田と山本がそれぞれのプレッシャーを跳ねのけて1勝ずつを挙げ、チームとして両ヒートを制覇できたことで、少しほっとしました」
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | 成田亮 | ![]() | 10 | 29'11.896 |
2 | 400 | 山本鯨 | ![]() | 10 | +00'18.607 |
3 | 99 | 平田優 | ヤマハ | 10 | +00'26.903 |
4 | 44 | 小島庸平 | スズキ | 10 | +00'43.112 |
5 | 10 | 小方誠 | カワサキ | 10 | +00'44.197 |
6 | 7 | 深谷広一 | スズキ | 10 | +01'11.226 |
7 | 113 | 田中雅己 | ![]() | 10 | +01'20.040 |
8 | 45 | 大塚豪太 | ![]() | 10 | +01'45.239 |
9 | 448 | 伊藤正憲 | ヤマハ | 10 | +02'19.751 |
10 | 331 | 新井宏彰 | カワサキ | 10 | +02'26.611 |
14 | 72 | 村上洸太 | ![]() | 9 | +1Lap |
15 | 117 | 馬場大貴 | ![]() | 9 | +1Lap |
17 | 09 | 小野千成 | ![]() | 9 | +1Lap |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 400 | 山本鯨 | ![]() | 11 | 30'11.631 |
2 | 1 | 成田亮 | ![]() | 11 | +00'06.523 |
3 | 44 | 小島庸平 | スズキ | 11 | +00'42.944 |
4 | 99 | 平田優 | ヤマハ | 11 | +00'52.358 |
5 | 166 | 星野優位 | KTM | 11 | +00'58.015 |
6 | 7 | 深谷広一 | スズキ | 11 | +01'04.087 |
7 | 331 | 新井宏彰 | カワサキ | 11 | +01'05.389 |
8 | 10 | 小方誠 | カワサキ | 11 | +01'06.787 |
9 | 448 | 伊藤正憲 | ヤマハ | 11 | +01'41.484 |
10 | 793 | 池谷優太 | スズキ | 11 | +01'43.678 |
11 | 45 | 大塚豪太 | ![]() | 11 | +01'57.020 |
13 | 113 | 田中雅己 | ![]() | 11 | +02'37.168 |
14 | 117 | 馬場大貴 | ![]() | 11 | +02'58.415 |
15 | 09 | 小野千成 | ![]() | 10 | +1Lap |
17 | 72 | 村上洸太 | ![]() | 10 | +1Lap |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 400 | 山本鯨 | ![]() | 47 | |
2 | 1 | 成田亮 | ![]() | 47 | |
3 | 44 | 小島庸平 | スズキ | 38 | |
4 | 99 | 平田優 | ヤマハ | 38 | |
5 | 7 | 深谷広一 | スズキ | 30 | |
6 | 10 | 小方誠 | カワサキ | 29 | |
7 | 331 | 新井宏彰 | カワサキ | 25 | |
8 | 448 | 伊藤正憲 | ヤマハ | 24 | |
9 | 45 | 大塚豪太 | ![]() | 23 | |
10 | 113 | 田中雅己 | ![]() | 22 | |
15 | 117 | 馬場大貴 | ![]() | 13 | |
16 | 72 | 村上洸太 | ![]() | 11 | |
17 | 09 | 小野千成 | ![]() | 10 |