2010年の全日本モトクロス選手権は、例年通り10戦が開催される。ただし今季は、タイムスケジュールが大幅に変更され、これまでの土・日2日制ではなく、土曜日の昼前から走行が始まる1.5日制に。これによりトップクラスのIA1は、土曜日に練習走行や予選を行わず、日曜日に集中して走る方式となった。
また、10戦中の2戦で、IA1とIA2が1ヒートのみ混走する新方式が試験導入される。ただしこの初戦は、昨年までと同様の方式(IA1とIA2が各2ヒート)で行われた。なお、各クラスの決勝レース時間に変更はなく、IAクラスは30分+1周、レディースクラスは15分+1周で競われる。
昨年は九州で開幕した全日本モトクロス選手権だが、今年は再び、奈良県・名阪スポーツランドが開幕の地に選ばれた。天候は土・日とも晴れ。日曜日の朝方はかなり冷え込み、コースサイドには霜柱が立ったが、日中は暖かな日差しが降り注ぎ、春らしい陽気の中で決勝が行われた。
▼IA1(450/250)ヒート1
今季からIA1にステップアップしたDREAM Honda RT Hirataの平田優が、その初戦でいきなり予選をトップ通過。決勝ヒート1では、1周目7番手から上位進出をねらった。DREAM Honda RT Masudaの増田一将も好スタートを切り、1周目を5番手でクリア。さらに平田の後方には、DREAM Honda RT Fukudomeの福留善秀が続いた。
2周目、2番手を走っていた小島庸平(スズキ)の転倒により、増田、平田、福留はそれぞれ1つ順位アップ。3周目には平田、4周目には福留が、辻健二郎(ホンダドリームRT 高浜)をパスして、4番手以降に増田、平田、福留が並ぶと、レース中盤に平田が増田をパスし、Honda勢のトップに立った。
レース後半、3番手だった新井宏彰(カワサキ)の転倒により、増田、平田、福留は再び1つずつ順位を上げた。ところが終盤、増田はコースアウトを喫して後退。これで福留が4番手となった。そしてレースは19周でチェッカー。平田は、IA1初レースで3位表彰台。福留は後続の追撃を振り切って4位、増田は6位に入賞した。
▼IA1(450/250)ヒート2
平田が好スタートを決め、成田亮(ヤマハ)とホールショット争いを展開すると、1周目を3番手でクリア。さらに4番手に福留、6番手に増田が続いた。2周目、増田は5番手に浮上したが、その次周、ヘアピンでエンジンをストールさせ、12番手まで後退してしまった。
レース序盤、平田はトップの2台には引き離されてしまったが、4番手以降との差は拡大し、3番手のポジションをキープ。しかし福留はペースが上がらず、徐々に順位を落としていった。また増田は、5台で形成された集団でのバトルに競り勝ち、6周目には8番手まで順位を回復した。
ところがレース中盤、増田が身体を痛め、9周目を終えたところでリタイアを決断。さらに平田は、転倒を喫して6番手まで順位を落としてしまった。そして、平田と福留は最後までその順位をキープ。平田が6位、福留が7位でチェッカーを受けた。この結果、両ヒート総合成績では平田が3位となった。
▼IA2(250/125)ヒート1
スタート直後の1コーナーで、10台近いマシンによるマルチクラッシュが発生。予選5番手から決勝へと臨んだHRF SEKI Racing MotoRoman&KBF-RSの星野優位も、これに巻き込まれ、大きく出遅れてしまった。しかし、星野と同じチームから参戦する深谷広一は好スタートを切り、1周目を2番手でクリアした。
2周目、深谷は勝谷武史(カワサキ)に抜かれて3番手に後退したが、トップを走る島崎大祐(スズキ)や2番手の勝谷とともに、レース序盤から後続を引き離していった。トップ争いは、5周目にトップに立った勝谷が抜け出す展開に。深谷は懸命に島崎との差を縮めようと試みるが、逆転はならず。3位でのゴールとなった。
▼IA2(250/125)ヒート2
ヒート1に続き1コーナーで多重クラッシュが発生したが、深谷はまずまずのスタートを切り、これに巻き込まれることなく1コーナーを通過すると、1周目を7番手でクリア。2周目には2台をパスして5番手、次周にも1台を抜いて4番手に浮上した。ところがその後はあまりペースが上がらず、前の3台とは差が開いていった。
それでも深谷は、レース中盤になると本来の速さを取り戻し、3番手を走る山本鯨(スズキ)との差を徐々に詰め、射程圏内に捕らえた。しかしここで深谷が痛恨の転倒を喫し、すぐに再スタートしたものの、山本との差が再び拡大。深谷は、最後まであきらめることなく3番手浮上を目指したが、そのまま4位でのフィニッシュとなった。
▼レディース
クラス唯一の4ストロークマシンとして活躍中のCRF150Rを駆り、3年連続のシリーズタイトル獲得を狙うHRF SEKI Racing MotoRoman&KBF-RSの益春菜が、1周目を2番手でクリア。邵洋子(スズキ)を追った。2周目、益は邵に接近すると、パッシングポイントを探りながら、邵をマーク。有利にレースを進めていった。
そして6周目、益がついに邵をパス。ところがその直後、再逆転を試みた邵に押し出された益が、コースアウトして転倒。すぐに再スタートしたがこのアクシデントが響き、益は2位でのゴールとなった。なお益の後方では、3台による3番手争いがラストの9ラップ目まで展開され、CRF150Rを駆る山本泉(TEAM HAMMER)が5位入賞を果たした。
平田優(IA1・3位/6位)「昨年までのIA2を卒業し、今年はIA1に参戦します。このシーズンオフは、年末にケガしてしまったのですが、バイクに乗れない代わりにしっかりとフィジカルトレーニングができ、バイクに乗れるようになったのは開幕1カ月前だったにもかかわらず、意外なほどすんなり250ccから450ccに乗り替えることができました。ヒート2こそ転倒した後はリズムがつかめませんでしたが、予選でトップ、決勝ヒート1で3位なので、IA1の1年生としては、まずまずの初戦だったと思います。ただし、自分が思っていたよりも成績がよかった半面、トップのライダーは自分が思っていたよりも速いということも分かりました。今年中に1勝することを目標にしているので、達成できるよう、さらに努力していきたいと思います」
福留善秀(IA1・4位/7位)「このシーズンオフは、ケガにより1カ月以上もバイクに乗れない時期がありましたが、それを考えれば、まずまずの状態まで仕上げて開幕を迎えられたと思います。ただしこの大会は、ヒート1のスタートが決まらずに苦戦し、ヒート2はうまく乗れずに順位を落とす結果となってしまいました。やはり乗り込み不足の影響もあるのだと思います。今年の目標は、モトクロス・オブ・ネイションズ(国対抗戦)の代表選手3名に選ばれること。大好きなアメリカで開催される今年のネイションズだけは、どうしても出場したいです。そのためには、全日本で好成績を残し続けることが最低条件。今年は、セッティングのことなどであまり考えすぎず、ストイックな走りで上位安定をねらっていきます」
増田一将(IA1・6位/DNF)「ヒート1は、中盤は腕上がりで少しペースが落ちましたが、後半にまたペースを上げることができました。ところが、ちょっとしたミスでコースアウト。ネットに引っかかってしまい、順位を落としてしまいました。ヒート2は、追い上げ中にマシンが大きくフラれ、転倒を避けようと耐えたら、身体を変な方向にねじってしまいました。その後にギャップを通過したら、身体の動きがロックされたような状態となり、痛みも激しくなってきたので、レースをあきらめました。年末に負傷し、開幕1カ月前くらいまでバイクに乗れなかったので、テストは足りていませんが、それでもトップ争いができるスピードはあると思うので、2週間で身体のケアとマシンの調整を行って、第2戦に臨みたいと思います」
深谷広一(IA2・3位/4位)「ヒート1は、途中で腕上がりの症状が出てしまいました。土曜日の練習走行で転倒した際にヒジを痛め、これをかばって走っていたのが原因だと思います。ヒート2は序盤のペースが悪く、それでも残り10分で3番手に接近できたのですが、そこで転んでしまい、時間切れになってしまいました。どちらのレースも、ペース配分がイマイチでした。とはいえ、今季はチャンピオンを目指し、全戦で総合成績3位以内というのを最低目標にしているので、初戦で総合2位になれたのはよかったと思います。もちろん総合成績だけでなく、常に優勝をねらっていきたいとも思っているので、次戦は両ヒート優勝を目指してがんばります」
益春菜(レディース・2位)「邵選手の後ろでチャンスをうかがっていて、完全に自分が有利な展開だと思っていたのですが、抜いた直後に、邵選手にコース外へと押し出されるような形になってしまいました。ちょうど2台の周回遅れも同じコーナーにいて、混戦状態になっていたことも、アクシデントにつながりました。抜くタイミングが悪かったです。今季は、シーズン序盤はIBクラスには参戦せずに、レディースクラスだけに集中して、早めに3連覇を決めることを目標にしています。初戦でいきなりつまずいてしまいましたが、次戦でまずは今季初優勝ができるようにがんばりたいと思います。今年も、たくさんの応援をよろしくお願いします」
IA1 : ヒート1
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | 成田亮 | ヤマハ | 19 | 33:12.442 |
2 | 4 | 熱田孝高 | スズキ | 19 | +00:10.920 |
3 | 39 | 平田優 | Honda | 19 | +00:41.625 |
4 | 7 | 福留善秀 | Honda | 19 | +00:52.509 |
5 | 6 | 田中教世 | カワサキ | 19 | +00:54.097 |
6 | 2 | 増田一将 | Honda | 19 | +01:31.610 |
10 | 9 | 辻健二郎 | Honda | 19 | +01:46.661 |
11 | 25 | 鈴木友也 | Honda | 18 | +1Lap |
14 | 14 | 芹沢直樹 | Honda | 18 | +1Lap |
21 | 75 | 山本亮平 | Honda | 16 | +3Laps |
22 | 35 | 馬渕崇之 | Honda | 14 | +5Laps |
RT | 20 | 芹沢翔悟 | Honda | 7 | DNF |
RT | 15 | 高濱龍一郎 | Honda | 6 | DNF |
IA1 : ヒート2
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | 成田亮 | ヤマハ | 19 | 33:28.494 |
2 | 4 | 熱田孝高 | スズキ | 19 | +00:03.020 |
3 | 331 | 新井宏彰 | カワサキ | 19 | +00:30.438 |
4 | 6 | 田中教世 | カワサキ | 19 | +00:41.693 |
5 | 44 | 小島庸平 | スズキ | 19 | +00:47.597 |
6 | 39 | 平田優 | Honda | 19 | +01:23.954 |
7 | 7 | 福留善秀 | Honda | 19 | +01:39.739 |
8 | 9 | 辻健二郎 | Honda | 19 | +01:44.899 |
11 | 14 | 芹沢直樹 | Honda | 18 | +1Lap |
12 | 25 | 鈴木友也 | Honda | 18 | +1Lap |
19 | 35 | 馬渕崇之 | Honda | 17 | +2Laps |
RT | 2 | 増田一将 | Honda | 9 | DNF |
RT | 75 | 山本亮平 | Honda | 7 | DNF |
RT | 15 | 高濱龍一郎 | Honda | 4 | DNF |
IA2 : ヒート1
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | 勝谷武史 | カワサキ | 18 | 32:13.436 |
2 | 43 | 島崎大祐 | スズキ | 18 | +00:07.055 |
3 | 41 | 深谷広一 | Honda | 18 | +00:16.079 |
4 | 53 | 田中雅己 | ヤマハ | 18 | +00:23.946 |
5 | 122 | 稲垣佳樹 | スズキ | 18 | +00:30.198 |
6 | 615 | 須田純 | カワサキ | 18 | +00:49.517 |
10 | 58 | 杉山和起 | Honda | 18 | +01:12.605 |
15 | 54 | 黒澤良太 | Honda | 18 | +01:40.198 |
17 | 63 | 冨田健二 | Honda | 18 | +01:47.077 |
20 | 59 | 富田俊樹 | Honda | 17 | +1Lap |
21 | 166 | 星野優位 | Honda | 17 | +1Lap |
RT | 80 | 松下光 | Honda | 4 | DNF |
IA2 : ヒート2
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | 勝谷武史 | カワサキ | 18 | 32:16.591 |
2 | 935 | 小島太久摩 | ヤマハ | 18 | +00:12.200 |
3 | 01 | 山本鯨 | スズキ | 18 | +00:16.269 |
4 | 41 | 深谷広一 | Honda | 18 | +00:17.876 |
5 | 43 | 島崎大祐 | スズキ | 18 | +00:18.373 |
6 | 444 | 星野裕 | カワサキ | 18 | +00:24.529 |
9 | 59 | 富田俊樹 | Honda | 18 | +00:53.266 |
17 | 63 | 冨田健二 | Honda | 18 | +01:41.634 |
19 | 166 | 星野優位 | Honda | 18 | +01:52.361 |
22 | 58 | 杉山和起 | Honda | 17 | +1Lap |
23 | 54 | 黒澤良太 | Honda | 17 | +1Lap |
30 | 80 | 松下光 | Honda | 15 | +3Laps |
IA1
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | 成田亮 | ヤマハ | 50 |
2 | 熱田孝高 | スズキ | 44 |
3 | 平田優 | Honda | 35 |
4 | 田中教世 | カワサキ | 34 |
5 | 新井宏彰 | カワサキ | 32 |
6 | 福留善秀 | Honda | 32 |
8 | 辻健二郎 | Honda | 24 |
11 | 鈴木友也 | Honda | 19 |
12 | 芹沢直樹 | Honda | 17 |
13 | 増田一将 | Honda | 15 |
21 | 馬渕崇之 | Honda | 2 |
IA2
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | 勝谷武史 | カワサキ | 50 |
2 | 深谷広一 | Honda | 38 |
3 | 島崎大祐 | スズキ | 38 |
4 | 田中雅己 | ヤマハ | 32 |
5 | 小島太久摩 | ヤマハ | 30 |
6 | 三原拓也 | カワサキ | 27 |
14 | 富田俊樹 | Honda | 13 |
15 | 杉山和起 | Honda | 11 |
19 | 冨田健二 | Honda | 8 |
22 | 黒澤良太 | Honda | 6 |
25 | 星野優位 | Honda | 2 |