第8戦から5週間のインターバルを挟んで開催された第9戦の舞台は、広島県の世羅グリーンパーク弘楽園。春と秋の年2回開催となっている中国大会は、コースの一部が小変更されたものの、基本的に第4戦と同様の設定。全日本屈指のハイスピードレイアウトで、ジャンプセクションも難易度が高く、また路面がとても硬い難コースである。
例年、マディレースになることが多い秋の中国大会。しかし、今年は天候に恵まれ、予選が行なわれた土曜日こそ一時的に雨が降ったものの、日曜日は秋晴れとなり、決勝レースは完全なドライコンディションで行われた。
前大会から、全ライダーがFI(フューエルインジェクション)仕様のCRF450Rを駆ることになったチームHRCからは、今大会も熱田孝高選手、増田一将選手、福留善秀選手の3人がエントリー。ポイントランキング1位の熱田選手は、前大会終了時点でランキング2位との差を36ポイントに広げており、相手選手の結果によっては今大会でシリーズタイトルの獲得が決定する。なお、増田選手は予選レースで他車と接触して右手じん帯を負傷したため、決勝レースでは右手をかばいながらの走行を強いられることになった。
▼IA1(450/250)ヒート1 ショートカットコースとなる1周目をトップでクリアしたのは熱田選手。しかし、2周目に熱田選手は溝口哲也選手(カワサキ)に抜かれて2番手へと後退。その後方では、出原忍選手(ヤマハ)を挟み、こちらも好スタートを切った福留選手と増田選手が続いた。熱田選手は、3周目に出原選手に先行されて3番手へ後退。さらに4周目からは、チームメートの福留選手が襲いかかる。
しかし、熱田選手は6周目に出原選手をパスし、2番手へと順位を回復。福留選手もこれに続き、再び熱田選手を追った。ところが、その次の周に福留選手は熱田選手を抜けぬまま痛恨の転倒。順位を6番手まで落としてしまった。一方、増田選手はケガの影響でペースを上げることができずに走行を続けたが、それでも7周目から13周目にかけて4番手をキープし続けた。
熱田選手は、レース後半に入っても安定したペースを維持。終盤になると、一度は引き離された溝口選手に再び迫り、ラスト2周となった18周目に鮮やかにパッシング。そのまま逃げ切って、今季8勝目を挙げた。なお、増田選手は6位、転倒の際に足を痛めた福留選手は11位でゴール。ホンダドリームRTから参戦する高濱龍一郎選手は、マシントラブルによりリタイアとなった。
▼IA1(450/250)ヒート2 ヒート1で、ポイントランキング2位の成田亮選手(ヤマハ)が12位に終わったため、ヒート2で熱田選手が成田選手に5ポイント差をつければ、熱田選手のチャンピオンが決定することになった。熱田選手はヒート1に続く好スタートを決め、1周目をトップでクリア。フルコースとなる2周目には、このヒートの最速ラップを叩き出し、序盤から後続を突き放していく。
熱田選手はレース中盤以降も、後続をまったく寄せつけない完ぺきなレース運びを披露。結局、2番手以降を10秒引き離したまま19周を走破し、今シーズン3度目のパーフェクトウイン(両ヒート優勝)を達成した。しかし、成田選手が2位に入ったため、チャンピオン決定は最終戦に持ち越しとなった。熱田選手は、最終戦のどちらかのヒートで20位以内に入ればタイトル獲得となる。
なお、このヒート2では、スタートで出遅れた高濱選手が激しく追い上げるレースを展開し、最後は3位、4位から僅差の5位でゴールした。また、福留選手も序盤10番手から着実に順位を上げ、6位入賞を果たした。増田選手は、ヒート1よりも痛みが激しくなった右手をかばいながら、最後まで走行を続けて16位でゴールし5ポイントを獲得している。
▼IA2(250/125)ヒート1 前大会でろっ骨を骨折した、Hondaサテライトチームのセキレーシングモトロマンから参戦する勝谷武史選手は、長めのインターバルに助けられて今大会に出場することができた。勝谷選手は1周目の8番手から追い上げて、3周目には4番手へと浮上。さらに、レース中盤にペースアップを果たし、ラスト6周で3番手に上がると、前を走る2台を追った。
しかし、勝谷選手は負傷によりトレーニングできなかったことが影響し、いつものような鋭い追い上げを披露することはかなわなかった。それでも、レース終盤には2番手を走行する小島庸平選手(スズキ)に迫るが、最終的には約1.5秒届かず、3位でチェッカーを受けた。なおレースは、中盤に小島選手をパスした新井宏彰選手(カワサキ)が優勝した。
▼IA2(250/125)ヒート2 勝谷選手は、ヒート1以上の好スタートを決めると、前のレース同様に序盤から追い上げ、3周目には4番手、5周目には3番手へと浮上。ところが、その後はあまりペースが上がらず、3番手をキープしたままレース後半を迎えた。その後、勝谷選手は徐々に荒れた路面に対応し、11周目に2番手に浮上すると、さらに13周目にはこのヒートの自己ベストラップを叩き出した。
なおも勝谷選手はトップを追うが、その差を詰めきれずに2位でフィニッシュ。ケガからの復帰戦で、見事に両ヒートとも表彰台に上がり、今大会の総合成績でも2位という好成績を収めた。なお、このヒートも、序盤から逃げ切りをはかった新井選手が優勝。勝谷選手に次ぐ3位には、スタートで出遅れて後方から追い上げてきた平田優選手(カワサキ)が入った。
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