前大会から約1カ月半のインターバルを挟み、全日本モトクロス選手権第8戦が開催された。その舞台となったのは、第2戦と同じ奈良県の名阪スポーツランド。ただし、サンド質の路面が特徴のコースは、ジャンプを中心に変更が加えられ、レイアウトも第2戦とは若干異なる設定がされた。
天候は土・日を通して晴れ。真夏のような暑さとなったが、大会前に雨が降ったため、予選が行われた土曜日のコースコンディションは軟質状態で、深いわだちが多く発生した。しかし日曜日は、ベストに近いコンディションでレースが行われた。
TEAM HRCからは、ポイントランキングトップをキープする熱田孝高選手、第6戦で両ヒート優勝を達成した増田一将選手、そして第5戦で負傷してこれが復帰レースとなる福留善秀選手の3名がエントリー。予選では増田選手がトップ、熱田選手が3番手、福留選手が4番手で決勝へと進んだ。予選2番手には、ホンダドリームRTから参戦する高濱龍一郎選手が入ったため、Honda勢が予選トップ4を独占した。
なお、今季開幕戦で福留選手がデビューさせたFI(フューエルインジェクション)仕様車だが、今大会から熱田選手と増田選手にも供給され、HRC全員が同じマシンを駆ることになった。
▼IA1(450/250)ヒート1 真っ先に1コーナーへと飛び込んだのは福留選手。しかし福留選手は、3つめのコーナーで転倒を喫して大きく後退。さらに高濱選手もすぐ先で他車ともつれるように転倒し、トップからは40秒も遅れてしまった。この混乱したオープニングラップを、トップで戻ってきたのは増田選手。チームメイトの熱田選手が1周目12番手と出遅れる一方で、快調に首位をキープしてレース中盤を迎えた。
ところが増田選手は、8周目に転倒と他車との接触により、7番手まで順位を後退。さらにこの時にマシンを傷めてしまい、9周目を走ったところでリタイアとなった。一方、熱田選手は、2周目に一気に9番手へと浮上すると、その後も追い上げを続けて6周目には6番手。また福留選手も、1周目24番手から7周目には12番手まで順位を回復してきた。さらにその後方では、高濱選手も激しい追い上げを続けた。
9周目には2番手まで浮上した熱田選手が、ラスト3周となる16周目に、ついに戸田蔵人選手(スズキ)をパスしてトップへと浮上。最後はそのまま逃げ切って、今季7勝目を挙げた。2位には戸田選手、3位には加賀真一選手(スズキ)。福留選手は、ラストラップに3台を抜いて5位、高濱選手は1周目最下位から9位まで追い上げてフィニッシュした。
▼IA1(450/250)ヒート2 ヒート1ではスタートで出遅れた熱田選手だが、またしても中ほどの順位で1コーナーをクリア。しかし、1周目で7番手までポジションを上げた。増田選手と福留選手は、ヒート1に続く好スタートで、増田選手が2番手、福留選手が3番手。さらに高濱選手も、スタート直後の混戦で少し順位を落としたものの、6番手で1周目をクリアした。
3周目、福留選手は4番手へとポジションを落としてしまったが、増田選手が溝口哲也選手(カワサキ)をパスしてトップに浮上した。その次の周、6番手を走行していた高濱選手が、ジャンプで大転倒してリタイア。熱田選手は、2つ順位を上げて5番手に浮上した。そしてここから、まずはチームメイトの福留選手をパスすると、さらに溝口選手、成田亮選手(ヤマハ)を順に抜き、2番手まで浮上した。
快調に走る熱田選手は、ラスト5周となる14周目にこのヒートの自己ベストラップを叩き出し、7秒ほど前を走る増田選手との差を、一気に縮め始めた。しかし増田選手も、その次の周に同じくベストラップを記録して応戦。結局、そのまま増田選手が今季3度目となる優勝。熱田選手は2位に入賞し、今大会の総合優勝も獲得した。また3位には、トップ2台から大きく離されたものの最後まで粘りをみせた福留選手が入り、TEAM HRCが5シーズンぶりの表彰台独占を果たした。
▼IA2(250/125)ヒート1 スタート直後の1コーナーでマルチクラッシュが発生。Hondaサテライトチームのセキレーシングモトロマンから参戦する深谷広一選手らが、これにより大きく出遅れてしまった。また、深谷選手のチームメイトとなる勝谷武史選手も、1周目に転倒して、ほぼ最後尾まで順位を下げた。
それでも深谷選手と勝谷選手は、あきらめることなく追い上げを開始。しかし深谷選手は、転倒とは直接関係のないマシントラブルにより6周でリタイア。また勝谷選手は、転倒の際に身体を痛めてしまい、13周を走ったところでリタイアした。なおレースは、終盤に平田優選手(カワサキ)を抜いた小島庸平選手(スズキ)が優勝した。
▼IA2(250/125)ヒート2 ヒート1で負傷した勝谷選手は、バイクに乗れる状態ではないという判断により出場をキャンセル。これで前大会まで3番手につけていたポイントランキングも、大きく後退することになってしまった。一方、深谷選手は、ヒート1終了後にマシン修復を行い、無事にスターティンググリッドに並んだ。
しかしスタートはあまりよくなく、1周目11番手。それでも、予選は4番手と好調だった深谷選手だけに、2周目以降に着実に追い上げ、最後は6位まで順位を上げてチェッカーを受けた。なおレースは、8周目にトップに立った平田選手が優勝。2位には、1周目に転倒して28番手から追い上げた小島選手が入った。
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