Vol.01

近づくインディ500

アメリカの国内選手権であるIZODインディカー・シリーズが世界中から大きな注目を集めているのは、インディアナポリス500マイル・レース(通称インディ500)がその中に含まれているからと言ってよいでしょう。アメリカ合衆国の東部、インディアナ州々都のインディアナポリスにある全長2.5マイルのオーバルコース=インディアナポリス・モーター・スピードウェイで1911年から開催され続けているレースは、世界で最も長い歴史を誇るだけでなく、40万人とも言われる驚異的な観客の数でもその名を世界にとどろかせています。

昨年、インディ500は100周年を迎えました。大戦中にはレースが行われなかったため、開催数としては95回目でしたが、F1世界選手権、あるいはル・マン24時間レースよりも長い伝統に彩られています。近年のインディカー・レースは大都市での市街地レースが人気を博しており、2012年のレースカレンダーを見ても、ストリートコースでのレース数が増える傾向が見てとれます。しかし、インディ500は完全に別格です。世界一のレースとしてアメリカ人の心をつかんでおり、その魅力を理解するファンはアメリカ国外にもとても多く存在します。

インディ500は、毎年5月末に開催されます。以前は5月はじめより練習走行が開始され、予選は2週末にわたって開催。さらに1週間のインターバルのあと、決勝は、戦没者追悼記念日=メモリアルデイの週末に開催されていました。近年は、約1週間の練習走行のあと、予選は2日間で行われ、栄えある決勝出場車33台が決定されます。そして、決勝レースは全長2.5マイルのコースを200周(500マイル)で争われます。ストレートの長さが約1キロメートルもあり、コーナーが4つしかないコースレイアウトで、そのコーナーすべてにバンクがつけられています。伝統ある世界3大レースといわれるF1モナコGP、ル・マン24時間レース、そしてこのインディ500が開催されるインディアナポリス・モータースピードウェイでの長距離レースは、その超高速の戦いに大きな魅力が存在しています。

Hondaは、2006年から6年間にわたり、Honda Indy V8エンジンを全チームに供給してきましたが、今シーズンから3メーカーによるエンジン競争が始まりました。シャシー(車体)は、全チームが新型のダラーラDW12を使用する初めてのインディ500となります。3月の開幕戦からは4戦続けてストリート及びロードコースでレースが行われてきましたが、インディ500はシーズン最初のオーバルレースとして開催されます。どのチームも十分なデータを持たない中での戦いとなるため、約1週間の練習走行で、チーム、ドライバーたちがどこまでマシンを煮詰めることができるのかが勝敗に大きく影響してくるものと思われます。

また、ピットクルーたちによるタイヤ交換や給油の作業、どのタイミングでピットストップを行うかといった作戦も勝負の行方を大きく左右します。もちろん、シャシーの開発やセッティング、そしてエンジンの技術競争といったテクノロジー面での戦いも大きな見どころとなります。

日本人ドライバーは、F1で活躍した実績を持つ佐藤琢磨選手が、今季もHondaエンジン搭載マシンで参戦します。インディカー・シリーズ3年目の挑戦となる佐藤選手だけに、この超高速オーバルコース、そしてインディ500の戦い方は十分にマスターしています。伝統あるレースに臨む佐藤選手、攻撃的なレースを身上とする彼の5月の戦いぶりに大いに注目したいものです。