GO FOR IT!

失意のケンタッキー

ウェルドン選手の逝去を悼み、3台横並びでパレードランを行った最終戦ラスベガス。3台並びでパレードしたのは、彼が2勝を挙げたインディ500にちなんでのことだった。

 まったく不思議としかいいようがなかった。ケンタッキー・スピードウェイは、予選4位、決勝5位の成績を得たテキサスと同じ1.5マイル・オーバル。ところが、今回はまったくスピードが伸びず、予選22位、決勝15位という不本意な結果に終わった。チームメイトのカナーンも予選19位/決勝17位、EJは予選23位/決勝23位と惨敗に終わった。レースでは力強く走れたつもりだった。ピットストップも素晴らしかったし、再スタートでは何度順位を上げたかわからない。それでもレースが安定してくると1台、また1台と抜かれてしまい、何をやってもスピードを伸ばすことができずに苦戦を強いられたのだ。
 こんな状況のままシーズンを終えるわけにはいかない。2週間後にはラスベガスで最終戦が行われる。そこでのリベンジを目指し、マシンの問題点を徹底的に洗い出すことをチームは約束してくれた。

悲しい結末

 マシンを分解して検査や清浄を行い、必要な部品は新品に交換する。レースが終わるたびにこうした作業が行われるが、最終戦ラスベガスを前に、チームはボルトの1本1本までバラバラに分解し、ケンタッキーで経験した問題点を探ってくれた。シーズン中にここまで徹底的にマシンのセットダウンとセットアップを行うのは、シリーズ最大の一戦であるインディ500以外、あり得ないこと。チームはそれほどまで懸命に問題の究明に取り組んでくれたのだが、残念ながらトラブルは解消されずじまい。ただし、手がかりとなるようなことはいくつか判明したので、それらの対策を行ってからラスベガスの戦いに挑むことになった。
 予選ではまたしても16位と低迷したが、他のマシンと接近して走行するときのハンドリングは良好だ。バンク角が強く、コーナーの曲率が大きなラスベガスでは、決勝中にマシンが密集することが予想された。「これだったらレースで追い上げられるかもしれない」 そんな期待を抱いて、僕はスタートに臨んだ。
 狙いどおり、レース序盤にして僕はトップ10を狙うポジションまで浮上していた。しかし、その直後に未曾有の悲劇が起きてしまう。
 11周目、15台のマシンが関連する多重クラッシュが発生。2台もしくは3台が横並びになって接戦を繰り広げていたことが被害を拡大した。そしてサム・シュミット・モータースポーツからスポット参戦していたダン・ウェルドン選手が亡くなる痛ましい結果となった。
 ウェルドン選手はインディ500を2回制し、シリーズ・チャンピオンにも輝いたことのある名手。個人的な接点はそれほどなかったが、偉大なレーシングドライバーであると同時に本物の紳士だっただけに、彼が命を落としたことは残念でならない。
 ウェルドン選手が逝去したことを踏まえてレースは中断のまま終了となり、全車が3列となって走るパレードランを行って追悼の意を表することになった。ウェルドン選手のご冥福を心からお祈りしたい。

3年目の挑戦を目指し……

 こうして僕の2011年シーズンは幕を閉じた。初優勝を目指して2年目のインディカー・シリーズに挑んでいただけに、満足できる成績を残せなかったことはとても残念。しかし、あと一歩で優勝というところまで何度か漕ぎ着けたほか、オーバルレースの難しさを改めて学んだこともあった。悔しい思いもしたけど、大きな自信に繋がったシーズンだったことは確か。この経験を生かせば、きっと栄冠をつかみ取ることができる。僕はそう信じてさらなる挑戦を続けたい。
 2012年シーズンのことはまだ発表できる段階にない。ただし、僕自身はインディカー・シリーズへの参戦を最優先に考えている。まだ調整しなければいけないことは残っているけれど、関係者の皆さんに協力していただきながら、3年目のインディカー挑戦を必ず実現させるつもり。ファンの皆さん、もう少しお待ちください!
 そのときがやってくるまで、この「GO FOR IT!」もお休みをいただきます。2011年も力強いご声援、ありがとうございました。また来年、お会いしましょう。