Honda Racing to TOP
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 芝生席とあわせて35万人もの観衆をレース・トラックまで効率よく運び込む術は、92年という長い間に培われたものだ。自分のクルマで来る人もいるが、多くの人は一時的に一方通行に作り替えられた広い道路を、警察のエスコートするバスで“ブリックヤード”入りする。
 通常観客は早朝6-7時にホテルを出てサーキットへと向かう。1時間足らずで到着するが、敷地内に繰り広げられる多彩なアトラクションを覗いたり、食事をしたりしていると、驚くことにあっという間に午後のレースのスタート時間になってしまうのだ。伝統あるインディ500の美しいレース・クイーンのお披露目や、バンドやモーターバイクに乗った警官による豪華なパレードも楽しみにしている人が多い。
 気付いた時にはもうすでにスタートラインにマシンが集められ、伝統にのっとって、“Back Home Again in Indiana”の大合唱が始まる。数え切れないほどの風船が空に向かって放たれたあと、有名なセリフがレース・マーシャルによって競技者に告げられる。
  『レディース・アンド・ジェントルマン、スタート・ユア・エンジンズ!』
 普段その冷静さをもって知られる自動車ジャーナリストでさえも、エンジンがスタートし、ペース・ラップが始まると、知らず知らずのうちに血は騒ぎ出し、膝を乗り出してトラックを見つめ始める。観客は総立ちで口笛を鳴らし、囃し立てる。あたかもレーシングマシンよりもっと大きな音をたてようとするかのように。

 グリーン・フラッグが打ち振られるやいなや、決勝に進出した33台のマシンは唸りを上げながら第1コーナーに殺到する。クラッシュなどでイエロー・フラッグが出る回数にもよるが、優勝車がゴールに駆け込むまで約3時間、手に汗握る攻防戦が繰り返される。事故による緊張、ピットストップ時の華麗なる技の応酬、レーサーとチーム間の駆け引き、優勝への飽くなき挑戦、そのすべての要素を余すところなく、わかりやすく伝える、一流アナウンサーの実況レポート。
 事実、インディ500はあまりに面白くてあっという間に終ってしまい、レースが終るとがっかりして気が抜けてしまう。チェッカー・フラッグが振られ、優勝ドライバーの頭にオリーブの冠が載せられる。そして伝統にのっとって、チャンピオンがシャンペンならぬ「ボトルの牛乳」を飲む儀式が行われる。そして祭りが終わる。

 生涯忘れることのない日を胸の奥に刻みつつ、35万人の観客が来た時とは逆に“ブリックヤード”を背に家路を急ぐ。(終り)
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フッタ
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