インディ500の興奮冷めやらぬ6月初旬、IZODインディカー・シリーズはテキサス・モーター・スピードウェイで2010年のシーズン第7戦を迎える。
24度のそそり立つバンクが特徴の1.5マイル・オーバルでは、1時間のプラクティスの後に予選が行われた。この時期のテキサスはすでに夏を迎えており、毎年このレースは暑さの中で行われる。今年もその例に漏れず、インディ500の決勝日より暑いコンディションでプラクティスと予選が行われた。
インディカーのオーバルコースで予選は、単独での4周の連続走行で合計タイムを競う方式。テキサスではライアン・ブリスコー(Team Penske)が平均時速215.273マイルを記録した。彼は26人出場中の4人目のアタッカーだったが、彼のタイムを上回る者は結局最後まで現れず、ブリスコーはテキサスで初めてポールポジションを獲得した。
予選2位はインディ500ウイナーのダリオ・フランキッティ(Chip Ganassi Racing)だった。13番目にアタックしたフランキッティは、平均時速215.216マイルをマーク。4周の合計でブリスコーに僅か0.0057秒届かなかった。
今回のポールはブリスコーにとって今季2回目(1回目は第5戦カンザス)、キャリア10回目となる。Team Penskeは第2戦から6戦連続でポール奪取を果たしている。
予選3位は平均時速215.158マイルを記録したウィル・パワー(Team Penske)、予選4位は平均時速215.152マイルのスコット・ディクソン(Chip Ganassi Racing)だった。ディクソンとパワーの差は4周で0.0025秒と、ポールと2位の差よりもさらに小さかった。インディカー・シリーズの実力伯仲は驚くべきもので、テキサスではトップから17位までが4ラップの合計タイムで1秒以内にひしめいている。
武藤英紀(Newman/Haas Racing)は予選7位につけた。インディ500では暑くなった決勝で、マシンのハンドリングの悪さに悩まされたため、今回のレースでは決勝用のマシンのセッテイングをプラクティスで重点的に行っていた。このためインディ500決勝以上に暑くなった予選は、プラクティスで確認していないセッティングでの走行となったが、武藤はインディカー・シリーズでの2年の経験を生かし、予選ではマシンが最もスムーズにロスなく走れるラインを見つけ出して走っていた。
佐藤琢磨(KV Racing Technology)は予選11位だった。初めてのオーバルレースとなった第5戦カンザスと同じポジションだ。バンクの角度、ストレートの長さ、路面や気象といったあらゆる条件がカンザスやインディアナポリスとは異なるが、佐藤の陣営は決勝をにらんだマシンセッティングをメインとしながら、予選でもルーキーとしては満足のいくパフォーマンスを発揮している。
ライアン・ブリスコー(ポールポジション) 「ポールポジション獲得はうれしい。予選のマシンは強力だった。伝統的に、テキサスでのTeam Penskeのマシンは速い。明日は暑さのために、簡単にフルスロットルでコースを1周というわけにはいかないレースになるだろう。Chip Ganassi Racing勢を相手に戦うのはもちろんのこと、チームメートのエリオ・カストロネベスとパワーも手ごわいので、難しい戦いになるに違いない。テキサスでの初勝利、そして今シーズンの初勝利を明日は飾りたい。それができればポイントを稼ぎ、チャンピオン争いに食い込んでいくことができる」
ダリオ・フランキッティ(2番手) 「プラクティスで走った時の予選用セッティングは、正直に言って、いいものではなかった。予選にはセッティングを変更して臨んだが、我々も驚くほどの好タイムを記録することができた。チームのエンジニアリングスタッフがすばらしい仕事をしてくれた。予選アタックの最中には、ドライビングとコックピット内でのセッティング変更の操作で忙しく、自分たちのタイムがどれほどのものになるのか分からなかった。しかし、ブリスコーとかなりの接戦になるだろうとは感じていた」
ウィル・パワー(3番手) 「予選での僕らのマシンはとても安定しており、速さもあった。テキサスでも予選の重要性は非常に高いと思う。明日のレースでのオーバーテイクは、かなりの難しさになるだろう。チームメートのブリスコーがポールポジションを獲得し、カストロネベスは5番手だった。今日はTeam Penskeにとって非常にいい一日となっていた。明日もすばらしい一日にできるよう全力を出しきって戦う」
武藤英紀(7番手) 「インディ500ではマシンが暑さの中でハンドリングが悪いものになっていたので、今回は暑さの中でのプラクティスで決勝用セッティングに専念し、アウト側のラインを走ることのできるマシンを作ることに力を注いでいました。おかげでマシンの仕上がりは非常にいいものにできていると思います。予選用セッティングはプラクティスで一切やりませんでしたが、7番手といういい位置につけることができました。予選でのライン取りはインまで降りないものでした。イン側ギリギリを走れればそれがベストですが、無理に降りようとすればタイムロスするため、少し上のラインをスピードを保って走りました。決勝用セッティングは第5戦カンザス戦を上回るものになっている感触なので、カンザス戦以上のレースを戦えると楽しみにしています」
佐藤琢磨(11番手) 「カンザス、インディアナポリスとオーバルコースを走ってきましたが、今回のテキサスはカンザスと似ている面があるものの、インディアナポリスとはコースの特徴がまったく違っています。バンクが急な分だけトラフィックでも色々なラインを走れるかと考えていましたが、暑さの影響もあってかグリップは思っていたより低かったです。私の担当エンジニアは、とにかくレースで力を発揮しようという考え方のため予選を重視していませんが、カンザス同様に予選用のマシンはハンドリングがよく、11番手という決して悪くない位置につけることができました。この後のファイナル・プラクティスで決勝用のマシンセッティング、そしてフィーリングの確認を行います」
ロジャー・グリフィス|HPD レース・チーム・マネジャー 「予選はトーストになってしまいそうなほどの暑さでした。そのためにタイヤの摩耗が大きく、それを巧みにコントロールしたブリスコーが4周にわたる安定感でフランキッティに勝り、ポールポジションを獲得しました。武藤は暑さで苦しんだインディ500から見事なリカバリーを見せ、7番手に食い込む好走を見せていました。佐藤の11番手という成績も、1.5マイルのオーバルでの2戦目、初めてのテキサスということを考えるとすばらしいものです。決勝レースでは、スタートから次第に気温も路面温度も下がっていきます。多くのチームはレースの終盤に高いスピードを発揮できるマシンを作り上げるべく、今晩のファイナル・プラクティスを走ることになるでしょう。明日のレースではピットストップでのセッティング変更、コックピット内でのセッティング変更をフルに使ってのエキサイティングなバトルが見られることと期待しています」
順位 | No. | ドライバー | チーム | C/E/T | タイム |
---|---|---|---|---|---|
1 | 6 | ライアン・ブリスコー | Team Penske | D/H/F | 01:37.3275 |
2 | 10 | ダリオ・フランキッティ | Chip Ganassi Racing | D/H/F | 01:37.3332 |
3 | 12 | ウィル・パワー | Team Penske | D/H/F | 01:37.3797 |
4 | 9 | スコット・ディクソン | Chip Ganassi Racing | D/H/F | 01:37.3822 |
5 | 3 | エリオ・カストロネベス | Team Penske | D/H/F | 01:37.7187 |
6 | 19 | アレックス・ロイド | Dale Coyne Racing | D/H/F | 01:37.7204 |
7 | 06 | 武藤英紀 | Newman/Haas Racing | D/H/F | 01:37.7332 |
8 | 7 | ダニカ・パトリック | Andretti Autosport | D/H/F | 01:37.8619 |
9 | 32 | マリオ・モラレス | KV Racing Technology | D/H/F | 01:37.9982 |
10 | 26 | マルコ・アンドレッティ | Andretti Autosport | D/H/F | 01:38.0052 |
11 | 5 | 佐藤琢磨 | KV Racing Technology | D/H/F | 01:38.0476 |
12 | 22 | ジャスティン・ウィルソン | Dreyer & Reinbold Racing | D/H/F | 01:38.0889 |
13 | 11 | トニー・カナーン | Andretti Autosport | D/H/F | 01:38.2068 |
14 | 8 | E.J.ヴィソ | KV Racing Technology | D/H/F | 01:38.2112 |
15 | 4 | ダン・ウェルドン | Panther Racing | D/H/F | 01:38.2204 |
16 | 67 | サラ・フィッシャー | Sarah Fisher Racing | D/H/F | 01:38.2479 |
17 | 18 | ミルカ・デュノー | Dale Coyne Racing | D/H/F | 01:38.2638 |
18 | 23 | トーマス・シェクター | Dreyer & Reinbold Racing | D/H/F | 01:38.4104 |
19 | 14 | ヴィットール・メイラ | A.J. Foyt Enterprises | D/H/F | 01:38.4563 |
20 | 77 | アレックス・タグリアーニ | FAZZT Race Team | D/H/F | 01:38.5858 |
21 | 66 | ジェイ・ハワード | Sarah Fisher Racing | D/H/F | 01:38.6217 |
22 | 36 | ベルトラン・バゲット | Conquest Racing | D/H/F | 01:38.6676 |
23 | 2 | ラファエル・マトス | de Ferran Dragon Racing | D/H/F | 01:38.6781 |
24 | 37 | ライアン・ハンターレイ | Andretti Autosport | D/H/F | 01:38.6916 |
25 | 34 | マリオ・ロマンチーニ | Conquest Racing | D/H/F | 01:38.7829 |
26 | 78 | シモーナ・デ・シルベストロ | HVM Racing | D/H/F | 01:39.1627 |