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ホンダ勢トップの3位入賞を果したハータ |
ペンシルベニア州ナザレスは、アンドレッティ・ファミリーの生まれ故郷だ。今年のインディ500で現役を退いたスーパースター・ドライバーは、チームオーナーとして初めて戦うレースでグランド・マーシャルを勤め、彼の“ジェントルメン・スタート・ユア・エンジンズ”の掛け声でレースは始まった。
予選日に続いて決勝日もナザレスは過ごし易い天候となった。そして、アンドレッティがオーナーのチームで走るブライアン・ハータ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)が、予選5番手からアグレッシブかつ粘り強い走りを見せ、3位でチェッカーフラッグを受けた。ポイントリーダーとしてこのレースを迎えていたトニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)は、混雑したコース状況でのバトルを戦う中で追突される不運なリタイアを喫し、ポイントスタンディングはトップから32点差の3番手となった。優勝は第12戦ケンタッキーに続きエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)。今シーズンも残すところ3戦となり、ポイント1位から5位までが81点差に並んでいる。
バックストレッチを底辺とした三角形をしているナザレス・スピードウェイは、オーバルコースではあるが、バックストレッチは下り坂で、ターン4手前からピット前までが上りというユニークなショートトラックだ。コーナーにつけられたバンクは3〜6度と小さく、オーバルコースでありながら、ロードコース的な特徴を備えたコースとなっている。それに加え、ナザレスはコース幅が狭いこともあり、オーバーテイクの難しさはIndyCarシリーズのサーキット中随一だ。
225周で争われた決勝レース、予選3番手からスタートしたカナーンはトップの座を争い、トラブルで1台が脱落したことによって57周目に2位へとポジションを上げた。しかし、折り返し地点を越えたばかりの120周目、周回遅れがトップを行くマシンの前にターン2で立ちはだかった際、3位を走っていたマシンが遅いマシンの存在に気づかなかったためか、ほとんど減速することなくカナーンに追突。2台は揃ってコース外側のウォールにクラッシュした。
このアクシデントで出されたフルコースコーションを利用し、ほぼ全車が2度目のピットインを123周目に行った。Honda Indy V-8勢は、ハータが5位、ロジャー安川(スーパーアグリ・フェルナンデス・レーシング)が7位、ダン・ウェルドン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)が8位、ケニー・ブラック(チーム・レイホール)が9位でピットアウトした。
リスタート後に1台をパスして4位へとポジションアップしたハータは、燃費を徹底的にセーブする走りを実現しながらゴールを目指した。そのままフルコースコーションなしでゴールを迎えることとなれば、ハータと同様に無給油で走り切れるドライバーは、彼の前には誰一人としていない状況だった。ところが、残り26周となる200周目にアレックス・バロンがクラッシュし、11周に渡ってフルコースコーションが続いたため、どのドライバーも燃費を心配せずに走れる状況へと変わり、ハータの作戦が功を奏する展開とはならなかった。
1台がアクシデントで消えたことによってハータはひとつポジションを上げ、第12戦ケンタッキーに続いて3位でゴール。ブラックは予選8位から今シーズン5回目のトップ5入りを果たし、ウェルドンは7位、安川は8位でフィニッシュした。ハータのポイントスタンディングは16位から15位へ、安川は12位から11位へ、ウェルドンは14位から13位へと、それぞれひとつずつ上がった。ルーキー・オブ・ザ・イヤーのポイント争いは依然として安川がリードしているが、ウェルドンとの差は20点から18点へと縮まっている。
●3位 ブライアン・ハータ
「スタートする前からわかっていたことだが、実際に本当に難しいレースだった。前を走る3台と同じペースで走るのは無理だったが、第2グループには十分ついて行けていた。今日の僕のマシンはハンドリングが今週で一番良い状態となっていたが、このコースはオーバーテイクをパーフェクトにやってのけるのが難しかった。3位という結果を残せたことは、チームにとって嬉しい」
●5位 ケニー・ブラック
「今日の我々はスタートが良く、リスタートもずっと良かったことでポジションを上げて行くことができた。残念だったのは、最初のピットストップでトラブルがあった点だ。バディ・ライスのピットに置いてあったタイヤにぶつかってタイムロスし、ポジションを幾つも下げてしまった。しかし、そこからリスタートでポジションを挽回して行った。一端スピードが乗ってしまうと、オーバーテイクはとても難しい状況となっていた」
●7位 ダン・ウェルドン
「今日もチームが素晴らしい働き振りを見せてくれた。マシンは今週のベストハンドリングに仕上がっていたし、2度のピットストップはともに時計のように正確なものだった。しかし、コース上でのオーバーテイクは本当に難しかった。それでも、ナザレスで今日ほどドライビングし易いマシンになっていたのは初めてで、次にテストで走る時が来るのが楽しみになった。まだハンドリングには良くする余地がある。毎レースでトップ10を目指しているが、今日もまた良い結果を手にすることができた。この調子を維持してシカゴへ乗り込む」
●8位 ロジャー安川
「厳しいレースでした。しかし、まずまずの結果を残すことができましたし、今の自分たちにとっては、それが大切なことだと思います。マシンのハンドリングは、走り始めは非常に良かったのですが、40周ぐらい走るとトラクションが失われて来てしまっていました。ゴール前の20周では、ターン3からの出口でアクセルを踏み込むのが大変なほどで、そこを突かれてダン・ウェルドンにパスされてしまいました」
●17位 グレッグ・レイ
「2度目のピットストップのすぐ後から突然ギヤボックスの調子が悪くなり、その後はすぐにすべてのギヤが使えなくなった。ガレージにマシンを戻してギヤを全部入れ替えることも可能だったかもしれないが、大幅な周回遅れとなってコースに戻っても、ポイントスタンディングをゲインすることにも繋がらないため、そこで今日のレースは終えることにした」
●18位 トニー・カナーン
「エリオ・カストロネベスがターン2へのアプローチで周回遅れに追いつき、少しスローダウンしなければならない状況となった。自分も同じように減速を余儀なくされた時、後ろからヒットされた。彼がわざとぶつかって来たのではないことはわかっている。しかし、たくさんのシリーズポイントを今日は獲得し損ねたのだから、本当にガッカリさせられる」
●ロバート・クラーク:HPD VP&ゼネラルマネージャー
「ハータの走りは素晴らしく、燃費も非常に良かったことから、カンザスでのように優勝することも可能な状況だった。彼と同じ作戦で走っていたドライバーがもうひとりいたようだが、彼とハータの差は広がって行っており、あのままフルコースコーションが出されずにゴールを迎えていたら彼がトップでフィニッシュできていたはずだ。しかし、バロンのアクシデントによってフルコースコーションが出され、全員がピットストップをせずにゴールまで走れる展開となった。ブラックも粘り強いレースを戦ってくれて5位でゴールし、ウェルドンは7位、安川も8位と、我々の得た結果は決して悪いものではなかった。残念なのは、トップ争いをしていたカナーンが、追突されてリタイアし、ポイント3位へと後退したことだ。カナーンは優勝したカストロネベスと同じレベルのスピードをずっと維持していた通り、今回はマシンのセッティングも良いものにできていた。我々は今後もHonda Indy V-8の開発を続け、次のラウンドであるシカゴにも新しいアイディアの投入されたエンジンを用意する。開発ピッチを上げ、カナーンをポイントトップへと復帰させ、彼がドライバーズ・チャンピオンシップを獲得できるよう全力を挙げて行く」
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