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INSIGHT PRIME STORIES

#09:1/28(月)-31(木)レーシングドライバー佐藤琢磨さんに訊く
「日々どのような鍛錬をしているのか」

2019年1月28日(月)
●マイスター:佐藤琢磨(レーシングドライバー)

サッシャ: ものづくりの本質を探究するマイスター、より上質な仕上がりを目指す
クリエイティブの現場に迫る「INSIGHT PRIME STORIES」
今週は、モータースポーツの世界で車の限界を引き出し
スピードを追求するマイスター、レーシングドライバーの
佐藤琢磨さんにお話を伺います。おはようございます。

もう僕の世代のヒーローです。
F 1、インディカー両方の表彰台を知る、唯一の日本人レーシングドライバー
そしてなんといってもインディ500のチャンピオンになりまして、
アジアで唯一の頂点に立った方。すごいです、お会いできて光栄です。
日々のどのような鍛錬によってその実績が生み出されているのか、
4日間に渡って伺っていきます。

琢磨さんは、僕もレースの世界で伝える立場で携わっている身として、
本当に尊敬すべきドライバーです。
ドライバーの中には子供の頃からゴーカートなどをやっていたり
いろんな人がいますけど、最初は自転車だったんですよね。

佐藤: そうなんですよ。
まあもちろん車が大好きだったので運転したかったですし、
レースもやりたかったんですけど、身近なところにレースできる環境がなくて
子供が唯一乗れる車輪がついて転がるものって、自転車しかなかったですね。
それでレースを表現する、自分にとっての唯一の道具が自転車だったんですよ。

サッシャ: すごく結果も出されていらっしゃったということで、
ひょっとしたら、自転車の世界でそのまま頂点を目指すということも
選択肢としてあったと思うんですけど、いかがでしたか?

佐藤: やっているときは確かに、自転車競技にすごくのめり込んでいて、
頂点を極めたいなって気持ちはあった一方、
ずっと持ち続けた忘れられない夢があって、
やっぱりそれは自分の中でも、モータースポーツがすごく強かったですね。

サッシャ: それで、ホンダと鈴鹿サーキットが開講した、
鈴鹿サーキットレーシングスクールフォーミュラに
入られてからはがむしゃらだったんですか?

佐藤: そうですね。
そのレーシングスクールの存在を知ったことが大きなきっかけでしたし、
実際には1987年、当時10歳のときにF1が初めて鈴鹿で開催されて、
そこで初めてサーキットに行ってレースを見て受けた衝撃が忘れられなくて、
レースをやりたいと思ってから10年かかっているんですけど、
20歳のときにレーシングスクールの存在を知り、これしかないと思って始めました。
夢に向けて、自分の人生を完全にリセットしてもう一度再出発する!
みたいな感じでしたね。

サッシャ: レーシングスクールにいた他の生徒、ライバルたちは
小さい頃からカートに乗っているような方々も多いですよね。
そこに後から追いついて、追い越していく、というのは
相当タイム的にハンデもありましたよね。

佐藤: ありました。やっぱりうらやましいなとずっと思っていましたね。
例えば、音楽を長くやっている方の中には、
絶対音感つけるのに3歳とか4歳からピアノを習っている方もいるじゃないですか。
レースの世界も深く知ると同じで、自分のヒーローだったアイルトン・セナや
ハミルトン、ベッテル、ちょっと前だとシューマッハなどの選手たちは
みんな4歳前後から何かしらゴーカートを始めています。
でもそんなの、普通なかなかできないですからね。自分もできてないですし。
ただその世界の子達はそうやって20歳まで練習してきて、
ずっと英才教育を受けていると、プロとしてデビューする頃には
もうすでに10年15年のキャリアがあるんですよね。
自分にはなかったのですが、若気の至りで「自分だってできるんだ!」と
その世界を知らないが故に、自分なりの自信だけはありました。
でもそれはただ単に車が大好きだったんですね。

また当時、自転車競技に対する意識はすごく高かったのですが、
レーシングスクールの世界を知ったとき、もうこれしかないと思いました。
ここでやって逆にダメだったら、もう潔く諦めることもできるだろうと。
でも自分は負ける気なんかないので。
やってみてその世界に入れるかどうか挑戦したかったんですよね。

サッシャ: そして実際フォーミュラに乗れることになったのですから、
もう相当嬉しかったんじゃないですか。

佐藤: いやもう、嬉しくて嬉しくて!
まずバイザーを下げて、グローブをはめてハンドルを握っている自分の手がある。
オンボード映像、車載カメラ、憧れて見ていた世界で自分が走る。
自分が初めてレースを見た原点、憧れの鈴鹿サーキットのレーシングスクールで
フォーミュラカーに乗るんですよ。
本当に嬉しくて、ヘルメットの中で叫んでいましたね。
ちょっとでも速く走ろうと数センチ、数ミリ単位で攻め込んでいくと、
それが結果になっていくのが面白かったです。

サッシャ: 日本でレーシングドライバーとしてデビューした後、イギリスへ行かれた琢磨さん。
これは日本でキャリアを積むという選択肢もあったと思うんですが、
やっぱり世界を見たかったということですか?

佐藤: 日本のモータースポーツのレベルってすごく高いんですよね。
ただ僕は日本人なので、まず一番最初に当たる壁は言葉の問題ですね。
もちろん当時は世界的なF1ドライバーを目指していましたが、
自分は海外生活の経験もないし英語も話せなかったので、
会話ができないということは車を運転する以前の問題だと思ったんです。
海外で国籍関係なくレーシングドライバーとして認められて、
F1の世界に行きたかったので、英語をしっかり身に着ける必要があると思いました。
僕がずっとヒーローだと思っている、
アイルトン・セナというブラジル人のドライバーがいて、
事故で亡くなってしまったのですが、彼は単身渡英して、ジュニアフォーミュラから
イギリスF3というカテゴリー、そしてF1に上がっていったんです。
彼の軌跡を見ていると、第1回F1グランプリ開催の地であり、
モータースポーツの聖地としても名高いイギリスを、僕も目指したくなりました。
F1チームも7割8割はイギリスベースだし、
ヨーロッパ中、世界中のドライバーがみんなイギリスを目指して、F1に行く。
なのでもうそこを目指すしかないだろうなと思いました。

サッシャ: そのアルトン・セナはブラジルからイギリスへ渡ったわけですが、
ポルトガル語が母国語、同じアルファベットを使うという意味では、
日本語をベースにしていた琢磨さんにとっては相当ハンデもありましたよね。

佐藤: でも逆に、F1の直下に当たる、当時のイギリスF3に行くまでには、
やっぱり自分の意思をしっかり伝えられるようにならないといけないと思いました。
単純に車を速く走らせるという意味では、言葉のスキルはそんなにいらないですが、
ただ環境や状況が刻々と変化していく中で、
レーシングカーってすごく細かい微調整をするんですね。
そのためにメカニックがいて、車のセッティングの方向性を考えるエンジニアがいて、自分がどうしたいのか、そして車が今どうなってるのかというのを
しっかり言葉で伝えないと車を速くすることができないんです。
すごく簡単な話をすると、レーシングドライバーって、
車が良くないところは自力で何とかしよう、という気持ちは持っているんですが、
レースって完全に科学の世界なんですね。
時速100キロ出る車と90キロ出る車があって、
90キロを全力で知らせても90キロしか出ない、でも
100キロの車は90%の力で90キロじゃ無いですか。
ってことは、もし100キロの車を100%出されちゃったら、
どんなに素晴らしいドライバーが乗っていても、90キロの車じゃ勝てないんですよね。
だから車を早くしなきゃいけない。
その作業をするのに言葉は絶対的なものだなと、強く感じました。
そして僕の場合は、ジュニアフォーミュラからF3に上がるとき、
イギリス人はそもそもなんでこんな考え方になるのか、勉強しました。

サッシャ: マインドから!

佐藤: 結局一緒にいる時間なんですよ。
同じもの食べて、同じ空気吸って、彼らと共にすることで
そもそもこういう考え方なのか!というところから始まらないと、
深い意味での本当のコミュニケーションは取れないと思ってますね。

サッシャ: そのためにも四六時中ずっと一緒にいたんですね。

佐藤: そうですね、最初はいわゆる留学生ですね。
ホストファミリーの家でホームステイをしながら、
平日は語学学校に行って、週末だけレースに行く。
学校に行っていない時間帯はほとんどレーシングチームに行って、
少しでも長く彼らと一緒に過ごすようにしていました。
最初は絶対に話せないと思っていましたが、
やるしかないので、いわゆる試験で点数を取るための勉強ではなく、
生きていくために必要なことを実践的に学ぶ。
そうすると面白いぐらいに色んな言葉が聞こえてくるようになったし、
一年、一年半と経つと、自然と言葉のキャッチボールができるようになってきました。

サッシャ: 本当にその努力があって、F3でも本当に好成績を伸ばしたんですね。
憧れだった、あのアイルトン・セナと同じマカオグランプリで優勝して、F1の世界へ。
同じ足跡をたどることになったわけですね!

佐藤: そうですね。
当時F1を目指すドライバーにとって、イギリスF3でチャンピオンになる
というのは、とても名誉なことでした。
今はヨーロッパ全体が統合されていますが、イギリスF3もあれば、
ドイツF3、フランスF3、イタリアF3と色々ある、各国のローカルレースで、
F1チームからの注目度も高い。
本当に色々なテストを経てジャンプアップして、
そのF1マシンに乗る機会を得ることができるわけです。
やっぱり自分がこだわったのは、
イギリスで3チャンピオンとして世界統一戦のマカオF3で勝つこと!
そうすれば誰にも文句言われることなく、
その年のジュニアドライバーとしてナンバーワンの形でF1に行くことができる。
F1に出ることはもちろん大きな夢、目標でしたが、
出るだけじゃなく、僕はあそこで勝負したいと思っていたから、
勝ち上がっていくために必要なルートがあるということも学びました。

サッシャ: 素晴らしいマネジメント。
今週はそんな佐藤琢磨さんの話を伺っていくのですが、
このコーナーではご出演いただいた皆様からのこだわりの逸品も聞いてるので、
琢磨さんのこだわりの逸品も教えていただけますか。

佐藤: そうですね。
やっぱりその身に付ける「レーシングギア」はこだわりますね。
ほんとちょっとしたそのサイズ感の違いや素材でフィーリングが変わってくるので、
レーシングスーツ、レーシングシューズ、つま先から頭のてっぺんまでで、
特に僕がこだわるのはグローブ。
縫い目ひとつ取ってみても、こまかな違いがたくさんあるんです。
僕が好きなのは「外縫い」という外側にほつれた感じの縫い方で、
内側はものすごくきれいになってるんですね。
グローブはオーダーメイドで、指の長さは一人一人違うので、
長さ、サイズ感も合わせて、滑り止めの位置も自分オリジナル仕様になっています。
なので、特にグローブはそういうこだわりが顕著に出るのではないでしょうか。

サッシャ: ハンドルにもピタッとくっつくように握れるっていうことですね。

佐藤: そうですね。
だからそのハンドルサイドもある意味、
グリップという握る部分を自分の形に合わせて作り直すんですけど、
全てがテーラーメイドなんですよね。
色々な車を乗らないといけないから、さすがにハンドルはオリジナルにできないので、
まるで素手で触ってるような感覚になるグローブは、かなり重要だと感じます。
ただ、ご紹介してもいいんだけど売ってないんですよ。
ベースとなるモデルはあっても、そのサイズ感は売っていないので、
昨年、2018年シーズンの使ったやつがありますから、プレゼントさせていただきます。

サッシャ: ありがとうございます!じゃあ、よく握ったところはちょっと滑り止めが?

佐藤: 結構ほつれているし、やっぱり擦れてしまいます。
今のレーシングカーのギアチェンジ、実はステアリングの裏側に
パドル、板みたいなのがあって、それを引くことでギアを1速、2速、3速。
3、2、1って落としたり、1周の中で何十回も、ギアシフトしなきゃいけないので
1レース終わると指先部分がなくなっちゃうぐらい消耗するんですよ。
路面からの凹凸を伝わってきたハンドルは物凄くぶれるので、
それを抑えようとすると、手が血豆のようなものができるし、
グローブの手のひらの部分もやっぱり擦り切れてなくなってしまいます。
その二つは見れば新品と一回使ったものは、やっぱりくたびれかたも全然違います。

サッシャ: 貴重なものをありがとうございます。
こちら欲しい方はこの後おしらせしますので、ご応募いただきたいと思います。
明日は佐藤琢磨さんのコミュニケーション力について伺っていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

※ 本プレゼントキャンペーンは終了しております

2019年1月29日(火)
●マイスター:佐藤琢磨(レーシングドライバー)

サッシャ: ものづくりの本質を探究するマイスター、より上質な仕上がりを目指す
クリエイティブの現場に迫る「INSIGHT PRIME STORIES」
今週は、モータースポーツの世界で車の限界を引き出し
スピードを追求するマイスター、レーシングドライバーの
佐藤琢磨さんにお話を伺っております。宜しくお願い致します。

佐藤: 宜しくお願いします。

サッシャ: 今日は「コミュニケーション能力の高さ」について掘り下げていきたいと思います。
私もレースの世界に伝える側で携わっていて、
佐藤琢磨さんの凄いところは、初期の頃から英語も含めて、
コミュニケーション能力が高いという印象があります。
「言葉は大事だ」とイギリスに渡る前から意識されていたのでしょうか?

佐藤: 自分の気持ちを伝える手段として、もちろん行動や結果が一番説得力があるんですけど、そもそもそこに到達するまでに、どう伝えて、どう共感してもらうか、
というのは言葉がないと表現できないんですよね。
自分がレースを始める年齢が遅かった、というのもあります。
それまでは自転車を使ってレースを表現してきたんですけど、
当時インターハイを目指していたものの、自分の学校には自転車部がありませんでした。
高校体育連盟に学校として登録しないと高校総体を目指す公式戦に出れないので、
担任の先生に話をして実際に部を作ってもらいました。
最初の一年間サークルをやって実績を残さなきゃいけない、とか色々なルールがあって、「そんなことしてたら間に合わない。」この思いの丈を伝えるのは言葉でした。
そこから自分の行動に繋がっていくわけなんですね。
サーキットレーシングスクール入るときもそうだったし、
オーディションシステムがなく履歴書だけで審査されるとき、
周りを見ると幼い頃から経験を積んだ、自分より年下の子たちばかり。
自分は年齢制限一杯一杯で経歴ゼロ。
これで選ばれるわけが無いと頭を抱えていたのですが、
僕は質疑応答のとき、どうやって選ぶんですかと質問をしました。
とにかく履歴書だけでは困るから話をさせて欲しいと、面接を嘆願して、
その場で面接を作ってしまったんですね。
そうすることで「こいつ面白そうだな」って人は思ってくれたりする。
でももちろんそれでチャンスが生まれるかどうかは分からないですよ。
でも少なくともやってみて、その先道がつながるんだと。
ある意味、学生時代にずっとやってきたことから始まってるんだと思いますね。
それでイギリスに行きました。
ただ、本当に言葉が通じない。自分が言ってることは発音が悪すぎて通じない。
考え方も生き方も違うし、そんな中でいきなりレーシングカーを
200㎞以上でコーナリングしろっていうのは難しいわけですよ。
自分も車に自信を持ちたいし、絆を深めていくためには
コミュニケーションをとるしか無いんですね。
ってなると、自分が言いたいこと言わなきゃいけないし、伝えていかなきゃいけない。
そんな中で自然とコミュニケーション能力は身についた気がしますね。

サッシャ: ヨーロッパに行くと、往往にしてむこうの人たちが意見をはっきり言ってくるから
日本人は尻込みする人がいるんですよ。琢磨さんはそれ感じました?

佐藤: 全然違いましたね。
日本っていうのは相手の気持ちを察する、一を言って十を知るっていうか、
それが美徳とされる文化ですが、欧米は逆ですよね。
十を言って一を知るみたいな、それだけ言っても中々伝わらないし、
外国人で母国語じゃ無い言葉を話してるわけだから、
何度も再確認をして物事を進めていったのが加速させたのかもしれないです。

サッシャ: じゃあ尻込みはしなかったんですね。

佐藤: そうですね。しなかったというよりもそんなことしてる場合じゃなかった。
常に崖っぷちで時間がないわけですよ。
その限られた時間の中でパフォーマンスするというのは
周りの人のサポートがすごく大事で、それが不可欠なんですよね。
ってことはありったけの想いをまずはテーブルに出そうよ。と、
やっぱり自分の主張だけでは相手もプライドがあるし付いてこない、
相手の言うことを聞くっていうのも一つですよね。
聞くっていうのは理解しないといけないから
よく「イエス。イエス。イエス。」ってとりあえず首を振って、
わからない言葉があっても素通りしちゃうじゃないですか。
それをやっちゃうと自分がどこにいるのか分かんなくなってしまうから、
理解し合えるまで一つ一つ全部聞いてましたね。
本当にわからないときはやってみるしかない。
やってみて良いか悪いかそのあと決めればいいわけですから、
そうやってみると意外と苦労することなく、
あるいは周りはすごい努力してるって見えるのかもしれないけど、自分は楽しくて毎日が挑戦だったし楽しかったですよ。

サッシャ: それを楽しめるのは一つの才能のような気もしますね。
またレースを走る際、車をドライバーが速く走らせる訳なんですが、
車とドライバーと対話のような感じもしますよね。
実際はいろんな方がチームに関わっていて、
コミュニケーションはどういった形でとてるんでしょうか?

佐藤: もちろん理想はチーム全員と直接話すことなんですけど、
F1の世界だとチームが500人にも上るので一人一人と話すことは不可能なんですね。
なので、僕には自分の窓口的な役をしてくれるレースエンジニアがいます。
メカニックたちはドライバーのために、時には徹夜をしたり、
とてつもなく厳しい労働環境の中で、彼らも好きやこだわりがあって車を作ります。
1ミリ寸分違わず車を作ってくれるのですが、そこに仕事としてやるのか、
このドライバーを勝たせたいと魂を込めてやるのかで、全然ちがうんです。
そういう意味で、ドライバーには彼ら全員の気持ちを一つにする
絶対的な中心力がなきゃいけない。
そういうドライバーが成功していくと思うんだけど、
これをやるためにはエンジニアといい車を作っていく。
そして自分なりのレースを表現できるようになるとメーカーが付いてくるんですね。
だからエンジニアと時には喧嘩もするけれども、コミュニケーションを取る必要がある。実はコミュニケーションって言葉だけじゃないんですね。
もちろん最低限、単語だったりとかは学ばなきゃいけないですけど、
例えば赤ちゃんが泣いても、僕らは何もわからないじゃないですか。
でもお母さんは、お腹すいてるのかなとか、おしめ変えたいのかな、暑いのかな、
とかなんとなく分かるじゃないですか。
あれって四六時中見ているから分かるんです。
お父さん帰ってきて泣いてるけどどうしていいか分かんない。
でも赤ちゃん言葉喋る訳じゃない。ってことは言葉だけじゃないんですよ。
本当にちょっとした、ニュアンス、空気感だったり、表情だったり、
エンジニアたちとそういうコミュニケーションが出来てくると、
長く時間を過ごし仲良くしようという気持ちがあれば、
片言でも身振り手振りでも、文法なんて全く関係ないですね。
こいつはこういうとき、こう言いたいんだなとか、エンジニアもわかってきます。
その延長上にいった時に無線で短い言葉で効率よくレース中に話をしていくと
今自分必要なものが話せるようになってきますね。

サッシャ: 300kmで話さなきゃいけない訳ですからね。

佐藤: 話しますよ。結構聞き取るの大変なんですけどね。

サッシャ: コミュニケーションを取る上で、もしくはその人との距離を縮める上で
日頃から大切にしていることってなんですか?

佐藤: やっぱりリスペクトかな。
何を言いたいのかなって自分自身も興味ありますし、
その人がどう考えてるのかなというのも気になります。
たとえ自分と考え方が違ったとしてもやっぱりまず聞いてみたいなと思います。
その上で俺はこう思うよってなるかもしれないし、なるほどみたいになるかもしれない。
そこって結構単純なことなんですけど、なんか大事なような気がして、
でもオフィシャル的にやってる訳じゃないですね。
本当に自分にとって仕事をする上で必要な人たちがいるわけで、
その人たちと円滑にやっていかないと物事が進まない訳で、
ある程度面白くなくてもやらなきゃいけないときもあるし。
ただ、やっぱり周りは気持ちいい男たちが多くて、
レースの話をするときは、みんなレース馬鹿ですから、車大好きスピード大好き。
そんな人たちと究極の目標に向かって突き進んでいるとき、
みんな同じ方向を向いているので、以外に難しい話とかしていても、
やっぱり最後は楽しいっていうのが残るかな。

サッシャ: 例えば自分がミスをして、車が壊れてしまいました。でもレースに行かなきゃいけない。その直さなきゃいけないというモチベーションを、自分としてもチームを立て直す。
その立場にならなきゃいけない時もあるじゃないですか。

佐藤: 最悪ですよ。
でもある意味、自分のミスのときは自分の中で片付けられるので、
怒りの方向は自分の中だけで済みます。
そうゆう意味では凄く嫌だし辛いけど、それは受け入れるしかないですよね。
それと同時に機械なのでやっぱり壊れちゃうときもある。
それが人為的なミスなのか、あるいは機械が壊れてしまったのかでだいぶ違うけど、
本当にもうちょっとだってタイミングに壊れたときは、ものすごい絶望感ですよ。
ただ自分が受けてる以上にそれを触っていたメカニックたちは受けてるから
そこで無意味に攻めたりすることはないですよね。
僕らは運命共同体なので、お互いのミスはもちろん最小限にしなきゃいけないんだけど、
なんでダメだったのか?なんで壊れたのか?そこを究明することが大事です。
やっぱり「次頑張ろうよ」とみんなと気持ちを前へ盛り立てていくのももちろんです。
自分もミスしてクラッシュしたりとか嫌なことがたくさんありますが、
その前にあそこでこうしてればっていう反省もあるので、
そうやって少しずつ少しずつ理想に近づいていくんでしょうね。

サッシャ: やっぱり仲間。そして競技に対するリスペクトがあるからなんですね。

佐藤: そうですね。
やっぱりそこがないと、レース以外でも共同作業でいいものは生まれないと思いますね。

サッシャ: なるほど。
明日はそんな佐藤琢磨さんのレーシングテクニック、どうしてこんなに上手い?
どうやって世界の頂点に上り詰めたのか伺っていきたいと思います。
明日もよろしくお願いします。

佐藤: よろしくお願いします。

2019年1月30日(水)
●マイスター:佐藤琢磨(レーシングドライバー)

サッシャ: ものづくりの本質を探求するマイスター!
より上質な仕上がりを目指すクリエイティブの現場に迫る『INSIGHT PRIME STORIES』。
今週はモータースポーツの世界で車の限界を引き出しスピードを追求するマイスター、
レーシングドライバーの佐藤琢磨さんにお話を伺っています。よろしくお願いします。

佐藤: よろしくお願いします。

サッシャ: 今日はレーシングテクニックの巧さを掘り下げていきたいと思うんですが、
佐藤琢磨さんといえば車の頂点「F1」、
そしてアメリカのレースを代表するこれもまた頂点のインディカー、
両方の表彰台を知る唯一の日本人レーシングドライバーであり、
そしてそのインディカーの中でもトップの「インディ500」、
世界三大レースの一つ、ここの頂点に立った唯一の日本人でアジア人ということですが、
レーシングドライバーって何が求められているんですか。
速く走るために重要な事って何でしょうか。

佐藤: もちろん一つじゃないですよね。
やっぱりそのスピード感覚っていうのはやっぱり大事だと思います。
道具を使うスポーツなので、やっぱりその道具を知ってその力というか、
その潜在能力を10、ないし100に近づける作業するのがレーシングドライバーだと。
そこに立って、総合的にタイヤや路面状況の状態を確認したり、
燃料が今日は重いとか今軽くなっているからプッシュするとか、
いろんな条件の中で車を速く走らせなきゃいけないんですよね。
速く走らせるためにはエンジニアと共に共同作業でセッティングを煮詰めていくので、
そこでもコミュニケーション能力が必要だと思います。
一方、スピードのセンスとタイヤの使い方も超重要!
実はタイヤをどう使いこなすかっていうのは、大切な一つの技術なんですね。
どんなに優れたレーシングドライバーが乗っていても、
どんなに優れたマシンがあったとしても、実はタイヤをうまく使えなければ速く走れない。
なぜなら、タイヤが唯一路面に接しているからです。
タイヤって実は常に滑ってるんですよ。
もちろんグリップ走行とかオンザレール感覚とか、
速い車は滑ってないように見えるんですけど、実はそれらも細かい話をすると
車を横に向けたりラリーカーのようにドリフトしているとき、
車はスライドしている「スリップアングルの状態になっています。
これは速く走るひとつの方法でもあります。
だからフォーミュラーカーと呼ばれる非常にサーキットで速く走る車も、
実は車がずっとドリフトしている状態なんです。
そのスリップアングルを感覚的に読み取る、しかも瞬時に読み取る力が、
スピード的なセンスと共に備わっていないと、車を速く走らせることが難しいと思います。

サッシャ: そのためにどんな努力をされているんですか。

佐藤: んー、何もしてない!(笑)

サッシャ: 天性のものですか?

佐藤: いやいや、日々の練習はもちろんあります!
そうは言っても毎日レーシングカーに乗るのは物理的に難しいので、
レーシングドライバーって最も練習ができないスポーツ選手なんですよね。
それは例えばイチロー選手にしても、昔のマイケル・ジョーダンにしても、
その天才と言われる人たちも一日に何千何万本も素振りをしたり、打ったり、
あるいはシュートを決めたり、朝から晩まで練習に練習を重ねていますよね。
もともとセンスが良くてそこに練習を重ねるから、
もう到達できない天才の域に行くわけですね。
レーシングドライバーももちろん毎日運転してた方がいいんですけど、それが叶わない。
すごく難しいんですよ。
だからイメージすることがすごく大事だし、そのイメージに近づけるように
手足を動かせる、つまりハンドコーディネーションがとても大事です。
特にハンドルを回す動作は直接タイヤを動かすのではなく、
間接的に動かすことでタイヤの軸を曲げていきます。
その際、どうしても利き手の方が細かい作業をしやすいですよね。
でもこれ実は右手だけ、左手だけ、と独立してやるよりも
一緒に作業させた方がいいし、時には片手でやんなきゃいけないし、
そこがアンバランスだと恐らく細かい作業ができないだろう、と考えて
利き手の、あるいは利き手じゃない方の不器用さを取る努力はしました。

サッシャ: 例えば、左手で箸を持ったりとかそういうことですか?

佐藤: そういうことです。
当時、雑誌で「全日本女子バレーの監督さんが選手全員に左手で箸を持たせている」
という記事を読んで興味を持ったのですが、よく考えてみると、
結局確かに理にかなってるわけですね。
それを実現したからって車を速く運転出来るわけじゃないんだけど、
右脳と左脳のバランスにも影響して、より正確な作業ができるかもしれないと思って、
それまで一度も使ったことない左手で歯を磨いたり、箸を使ったり、
積極的に普段の生活に取り入れていきました。
「さあトレーニングやるぞ」っていうと、やっぱり腰も重たいし僕面倒くさがりやだし、
なかなかやらないんですけど、食事や歯磨きはやらざるを得ないでしょ?。
やらなきゃいけないことで積極的に左を使うことで、
身体のバランスを保つようにできたらいいなと思って、ずっと実践していましたね。

サッシャ: へえ、すごい!確かに、日々の欠かせないことに取り入れたら必ずやるようになりますね。
路面からくる情報を手とか体で感じられるっていうのは、
やっぱりそういう日頃の鍛錬と関係してそうですね。

佐藤: そうですね。あとやっぱりイメージを持つこともすごく大事だと思うんですよね。
例えば科学的な話をすると、先ほど話した「スリップアングルを感じる」というのは、
要は三半規管なんですよね。
よくレーシングドライバーは、車を動かしたいように、体を使って表現することがあります。
例えば、車に乗っていて「もっと前に進みたい!」と思うとき、
腰をくっと出すような表現方法をするんですよ。実際そんな気持ちになる。
面白いもので、人馬一体ならぬ人車一体ですよね。
本当に自分の理想的な走りが出来るときって、
車に乗り込み、シートベルトを締めて走り出すと、
手足指先の神経がブワァーッと車のタイヤの先までいくような感覚になって、
自分の体のように操れるときがあるんですよね。
いわゆるスポーツ選手がよく言う「ゾーンに入る」っていうときです。
そういう状況になったときって、本当に自分の体が走ってるような感覚になるので、
研ぎ澄ませる意識や、集中して「ゾーン」に入るイマジネーションがすごく大事だと思うし、
だからフィジカル的なトレーニングだけじゃなくて、やっぱり集中力を欠かさない。
もちろんすごく体力を使うことですが、そういうやり方をやっていかないと、
やっぱり極限の状況で神経を張り詰めている中でもリラックスして、
必要な時に集中力を上げることがすごく大事だと思いますね。

サッシャ: 今の話だけでもいかにすごいアスリートかっていうのが分かります。
明日は最終日、レーシングドライバーの身体能力の話も伺いたいと思います。
よろしくお願いします。

佐藤: はい、よろしくお願いします。

2019年1月31日(木)
●マイスター:佐藤琢磨(レーシングドライバー)

サッシャ: ものづくりの本質を探求するマイスター!より上質な仕上がりを目指す
クリエイティブの現場に迫る『INSIGHT PRIME STORIES』。
今週はモータースポーツの世界で車の限界を引き出し、スピードを追求するマイスター、レーシングドライバーの佐藤琢磨さんにお話を伺います。
最終日もよろしくお願いします。

佐藤: よろしくお願いします。

サッシャ: 本当にレーシングドライバーってアスリートですよね。
佐藤琢磨さんもガッと首が太くて、その体つきを見てもわかります。
ヘルメットをかぶって車の中にいるし、息が上がっているところも外には見えないので、
意外と伝わらないんですけど、私も近くで見ていて本当にすごい人たちだなと思います。
相当の体力がないと、レーシングドライバーって一流にはなれないですよね。

佐藤: 今のアスリート全般に言えることですが、
体力はもちろん、機敏に動けて、体幹が良くないとできない思います。
全てがそこから始まるわけですよね。
僕らのレースで、フィールドを走り回っている選手は
汗もかくし息も切れるし見るからに疲れますよね。
僕らはシートに座って運転しているだけだから非常にわかりづらいんだけど、
実は1レース終わると、体重でいうと2キロとか3キロ失うんですね。

サッシャ: それだけ汗をかいてるということですか?

佐藤: ほとんど水分なんですけど、心拍数でいうと常に170を下回ることはないですね。

サッシャ: 170以上ですか?!

佐藤: 人によりますけど、だいたい170から180、
若いドライバーは190くらいまで行くと思うし、静止的な運動なんです。
「アイソメトリック」と言うんですが、動的でなく常にじっと耐えるということです。
例えば、今スタジオにある頑丈な机を持ち上げようとして、ぐっと力を入れて壁を押す。このとき体は動かないけどじわっと汗が出て、筋肉に乳酸が溜まって痛くなります。
これと同じことが車の中で行われてるんですよ。
僕らの世界では「ジーフォース」というグラビティーなんですけど、
遠心力がかかって上のクラスに行けば行くほど高くなるわけですよね。
今こうやって座っている状態が1Gなので、
レーシングカーでは、インディーでやるのが6Gだと考えると、
自分の体重の6倍の圧力が横からくっついてくるわけですよね。

サッシャ: 50キロの人なら300キロの重さがかかっているんですね。

佐藤: 血液が行ったきりになるので、ある意味心拍数も早くなってしまうし、
強靭な心臓だけじゃなく、細かい血液、毛細血管を動かすのは筋肉なので
しなやかな筋肉がないと十分な酸素が行き渡らない。
そうすると「ハンドコーディネーション」、動きたいのに動けない状況になります。
スタミナをつける、体幹をしっかりつける、必要なところをパワーアップ、
レベルアップさせて、なおかつ動きたいように自分の思うように体が動くようにする、
というアスリートとしては基本となる部分がないとやっぱりレースはできない。

サッシャ: それだけでもすごいですが、さらにレーシングドライバーは
コースを走らないといけないですもんね。
レースの最中って、100m走を全力で走ってる最中に算数をいきなり言われて解くくらい
脳みそも同時にフル回転している、という話を聞いたことがあります。
つまり心拍数が180か190のときに「62-45」とか言われて、
ぱーっと答えを言うくらい、走りながら頭もフルで使っていると。

佐藤: タイヤの状況や燃費の計算、ラップタイムは走りながら考えないといけません。
ピットストップのタイミングでタイヤ交換と燃料補給があるんですけど、
常に全開で走れるわけではないし、むしろストラテジーやシーケンスが変わってくると
ピットストップを一周、二周伸ばしたいっていうときがあって、
そのためには燃料を維持しないといけない。
なるべく燃料を使わず、ラップタイムも落とさないようにするのはすごく難しくて、
「燃費走法」ってのんびりエコドライブに聞こえるけど、
実はものすごい高度な技術が必要なんですよね。
例えばコーナーに突っ込む時もいろんなテクニック、 予選以上の集中力が必要です。
そのために数字と自分の感覚、常にデジタルとアナログのものを
くっつけて考えないといけないので、そういう意味では色々考えていますね。

サッシャ: 心拍数が170と普通だったら冷静なことを考えられない状況のときに、
それをやらないといけないと。

佐藤: 確かにそういうトレーニングはやってますね。
クロストレーニングで今は科学的にやったりするじゃないですか。
全力疾走や自転車などの無酸素運動で心拍数をあげた状態で
光るものを触ったり、計算をやらせたり、
そういうトレーニングはみんなやっているみたいですね。

サッシャ: 若い頃と今、40代になってトレーニング方法は変わりましたか?

佐藤: 変わりましたね。トレーニングの質を上げないといけない。
若い頃はいくらやってもある意味疲れないし、怪我もしないけど、
回復力や回復スピードは徐々に遅くなるじゃないですか。
そうなってくると効率のいいトレーニングをしてあげないともたない。
トレーニングしてるだけで疲れちゃうし、故障していっちゃうんですよね。
故障との戦い、故障したらレースに出れないだけじゃなくて
トレーニングもできなくなってしまうので、どんどん悪いスパイラルにはまってしまう。
そういう意味では自分のフィジオというかトレーナーをつけて、
ここ10年間はずっと二人でやってますね。

サッシャ: なるほど。
この状況で、インディー500とかだったら3時間を超えると。信じられないですね。
40代でそれでまだ現役でトップを狙うというのは、本当にすごいです。

佐藤: とは言ってもイチローさんもまだまだじゃないですか。

サッシャ: いや~最近はすごい人がいっぱいいますね。

佐藤: サッカーの三浦知良さんもですね。
身体的なパフォーマンスは、もちとん20代~30代になったばかりのときが
一番いいと思うんですけど、僕らの場合は単純な体力勝負じゃなくて、
そこに経験値と技術が入ってくると、
総合パフォーマンスとして僕はまだ上がってる気がするんですよ。
たぶん自分で思うようにものが動かせなくなったり、考えられなくなったら、
それはパフォーマンスが落ちてますから、自分で走っても面白くないと思うんですよね。
そうしたら辞めます。それまでは思い切りやりたいなって気持ちが強いんですよね。

サッシャ: まだまだモチベーションもあがっているという今年42歳、素晴らしいですね。
2019年シーズン、開幕、インディーは3月10日ですが、
今シーズンは同じチームで2シーズン目ということになりますね。

佐藤: そうですね。
一戦ずつトップになれなかったにしても、総合優勝を狙いたいですね。

レーシングドライバーにとって
シリーズタイトルを獲る=個々のレースに勝つことは特別で価値のあるものであり、
シリーズチャンピオンはいかなる状況下でも
常にパフォーマンスを出していかないといけない、
そしてインディーカーシリーズはいわゆる常設のコースですよね。
サーキットで走ることもあれば市街地のなかを走ることもあるし、
オーバルでも走らないといけないし、ある意味バラエティに富んだ環境のなかで
トップを走り続けるのは、安定しないからすごく難しいんですよね。
そこでチャンピオンになるのは、真の王者だからやっぱり憧れますね。

サッシャ: しかもシーズンを通してフィジカル、マインド両面を
維持しなきゃいけないのは大変ですね。

佐藤: そうですね。自分自身が準備できるところは100%やっていきたいと思っていますし、
やっぱりレースなので、時にはチームの得意・不得意もあるし、
得意じゃない分野は2018年シーズンも見えたんですけど、
なんとかして押し上げようとチーム全体でモチベーションがすごく上がっているので、
みんながそうなら自分も頑張らないと、とお互い相乗効果で最高のシーズンにしよう!と
今、着々と準備を進めています。

サッシャ: 期待しています。日本人初の総合チャンピオンも!
そしてそのモチベーションも高いのに鈴鹿サーキットスクール校長にも就任されて
今度は後進の育成も、次の佐藤琢磨も生むということですね。

佐藤: 自分が育った鈴鹿サーキットレーシングスクールで、
25年間続いてきた中嶋悟さんがずっと校長を務められた後、
19年シーズンから僕がバトンを受け継ぐと。大変光栄なことです。
当時生徒だった自分が、まさか中嶋さんから引き継いで
スクールの全体を見る校長になるなんて夢にも思わなかったです。
あのときも自分はレースの世界になかなか入れなかった、
でもこのスクールでチャンスを掴み、その環境を作ってもらって、
そこから世界に飛んでいくことができたわけですよね。
そういったレーシングスクールに対する想いもあって、
これだけ年齢が上になってくると若手にライバル意識もありますが、
それよりも次世代ドライバーを育成したいなって思いも芽生えてくるんですよ。
ちょうどタイミング的にいいので、僕は物理的に全部は行けないけど
若い勢いのあるレーシングドライバーたちと接することで新しい刺激をもらって、
自分がこれまで世界で活動してきたことを余すことなく教えて、
きっかけとして彼らに気づいてもらいたいことがたくさんあるし、
自分自身もより高みを目指して頑張っていきたいなと思っています。

サッシャ: 今、F1には日本人ドライバーはいないですよね。
インディーも佐藤琢磨さんに選手として続けて欲しいという状況ですが、
目標はありますか?

佐藤: やっぱり今は、カテゴリー問わず本当に自分が活躍できる環境を
自ら作っていく強いドライバーが求められる。
非常に特殊な環境下でも車を速く走られることができるドライバーなんて
世界中にいるんですね。
日本にも本当に優れたドライバーはたくさんいるし、
だけどF1やインディーカーでチャンピオンになるドライバーって速さだけじゃない、
そこに強さやトータルでマネージメント力である。自分にも欠けているものですね。
これまでレースに勝ったことはあっても満足に勝てたわけでもないし、
今も毎回試行錯誤なんですよ。
だからそういう意味では今の若い子たちって才能溢れる子がたくさんいるので
教えて学ぶことじゃないし、少なくとも事前に知っていたら自分なりに学びたい、
学ぼうってするきっかけっていうのは少なくとも与えることができると思うんですよね。
そういうことで相乗効果で鈴鹿サーキットレーシングスクールから
再びF1の世界で走る、トップで走る日本人選手が生まれるのは僕らも夢見ているし、
自分がそうなれるように北米で挑戦し続けています。
北米でも日本人が行って自分がチャンピオンになるかもしれないし、
さらに記憶を塗り替えていくような日本人選手に期待したいですね。

サッシャ: ぜひそんなドライバーを目指している人たちには
今週、琢磨さんが言っていたこと全部聞いてもらって、
テープに録っておいたほうがいいんじゃないかと思います。
色々アドバイスも繋がることも教えていただきました。
今週はレーシングドライバー、佐藤琢磨さんにお話を伺いました。
一週間ありがとうございました。

佐藤: ありがとうございました。

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