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INSIGHT PRIME STORIES

#05:12/31(月)、1/2(水)、1/3(木)一本の筆で文字の魅力を引き出すマイスター
書道家・武田双雲さんに書道の極意に迫る!

2018年12月31日(月)
●マイスター:武田双雲(書道家)
●コメントゲスト:伊藤亀堂(墨職人)

サッシャ: ものづくりの本質を探究するマイスター。
より上質な仕上がりを目指すクリエイティブの現場に迫る「INSIGHT PRIME STORIES」
今週は一本の筆で文字の魅力を引き出すマイスター書道家、
武田双雲さんにお話を伺います、おはようございます。

武田: サッシャさん、ご無沙汰です。

サッシャ: 元日は番組がお休みになるので、元日を挟んで3日間にわたって、
双雲さんの仕事を支える3人の職人にまつわるお話を伺います。
その過程で、年賀状、書き初めのシーズンだからこそ知りたい
書道の極意、文字を書く素晴らしさ、さらに魅力的な書き方、なども伺えたらと思います。
まず双雲さんにとって、ちょっと大きな話ですけど、
理想とする「書」とはどのようなものでしょうか。

武田: 人の人生を根本から変えるような、根本治療じゃないけど・・・
みんなを楽に、楽しくするような、深いところにアクセスしたいなって常に思ってますね。

サッシャ: 書道家として日々、鍛錬とかってあるんですか?

武田: 鍛錬はですね、自分が例えば、医者の不養生っていうくらいだから、
自分がハッピーじゃない、自分が楽しんでない、自分が楽していないのに
人類を根本からとか言う資格はないから、僕にとっての修行は、
毎日朝から晩までどれだけ楽できるとか、楽しめるか、というところですね。

サッシャ: そうか、楽と楽しいって同じですからね。

武田: リラックスとエンジョイなので、自律神経でいうと、
交感神経と副交感神経がちょうどいいとこで
絶妙にバランスを取りながら、天の恵みに気づき、
日々のこの森羅万象の素晴らしさに感動し、
受け取っている状態、ゾーンに入っている状態を
どれだけ毎日の中で日常の些細なことから生み出せるか、という修行ですかね。
具体的には枕にキスをするとか、ドライヤーに声をかけるとか。

サッシャ: そういうルーティーンみたいなのがあるんですか?

武田: まぁルーティーンですね、ある意味で。

サッシャ: さぁ、そんな双雲さんの「書」を支える3人を挙げていただきたいと思います。

武田: 墨職人の伊藤亀堂さん、筆職人の亀井正文さん、
そして和紙問屋さんの杉原吉直さんの3人です。

サッシャ: じゃあまずは1人目、墨職人の伊藤亀堂さんについて伺いたいと思います。
伊藤さんの墨は、他と比べて違うんですか?

武田: やっぱり違うんですよ。
亀堂さんの墨のまず分かりやすい特徴は、
全て一人で最初から最後まで一人で作業しているところです。
ふつう墨づくりには何十もの工程があるので、
専門の企業がはいったりして分業しているんですね。
そんな全部自分でやる人は今ほとんど日本にいないんですよ。
あとは、墨って滲むっていうじゃないですか。
僕は実際に書いたところから滲み出すところの境界線にこだわっているんですけど、
その滲み出したところと滲み出してないところ、実際に書いたところの
境界線のラインが超美しいんです。伊藤さん独特の滲みラインを出しますよ。
マニアックですけど、そこに命をかけてやってる人たちなので。

サッシャ: じゃあ、そんな墨を作る鈴鹿墨進誠堂の代表 墨匠、伊藤亀堂さんは炭作りに対して
実際にどのように向き合っているのか、
亀堂さんへのインタビューの模様を聴いてみましょう。

伊藤: 理想の墨を作ることに対して、求めている部分は複数あります。
ひとつは、自然の黒、作られていない黒を目指しております。
機械的に作られて染められたモノ、というよりも
自然の道具と人間の手から生まれる自然の黒を究極の目標としております。
まず自然に逆らわない、という当たり前の作業を続けることです。
自然に逆らってしまうと人間というのは
力ずくでモノを作ってしまうところがあるんですが、
まずその日の気候・湿度・温度に配慮しながら、自然のまま作っていく、ということ。
それと、自分の中でいちばん大切なのは、
一番初めに作ったものと一番最後に作ったものの誤差を、
極力無くしていくということです。
それを積み重ねていくことによって、「このポイントでにじみが出る」
というところが訓練と経験で表現できていくと思います。
墨には大きく分けて4つ〜5つの工程があります。
まず、こんでん、整形、乾燥、仕上げ、の4工程すべてを私はひとりでこなします。
その最大の理由は、すべて自分で墨に対して責任が取れるからです。
失敗が起きたとき、どの工程で失敗したかも自分、どの工程で成功したかも自分。
それともう一つ最大のポイントは、
その人だけの墨を作るには、すべての工程を熟知していないと、
その人だけのオリジナリティを出せる色、というのは表現できません。
例えば双雲先生の好きな色、ということであれば、
私がすべての工程をこなさなければお好みにあう墨は絶対に作れないと確信しています。
ただ大量に生産できないというジレンマはありますが、
どちらかを捨てないと良いものは出来ないと思っていますので、
私の場合は大量生産を捨てました。

サッシャ: さぁ、双雲さん、亀堂さんの墨とのそもそもの出会いは?

武田: そうですね、まずNHKの書道の道具を扱う番組で共演したことがきっかけで、
墨の面白さを教えてくれました。
伊藤さんは一人全部やってるからチャレンジもしやすいですよね。
分業だとそれぞれ職人がやることが決まってくるので革命が起きにくいんですけど、
伊藤さんは今だに顔料入れてみたりとか、全く違う手法でやってみたりとか、
アイディアをどんどん形にするんです。新作が楽しみ。

サッシャ: こんなの作ってみたので使ってみてください!といったこともあるんですか?

武田: この前ちょっと感動したのが、
僕は今書道とは別のところでやっているアートでのことです。
日本画では有名な岩絵の具というのがあるんですけど、
フェルメールも愛したという、僕も大好きなラピスラズリのような色を超える、
見たこともない美しい「青」を墨の製法で作りだしたんです!
墨職人がつくる青にあまりにも驚いて、
今これを世界に広めたいと、新しい作品がバンバン生まれています。
フェルメールがもし生きてたら絶対惚れ込むだろうなっていう青。
亀堂さんは発明家だと思ってますね。

サッシャ: すごいなぁ。発明家としても支えてくれているということですね。
それでは、双雲さん明日はお休みですので
年をまたいで1月2日、明後日もよろしくお願いします。

2019年1月2日(水)
●マイスター:武田双雲(書道家)
●コメントゲスト:亀井正文(東京都知事認定伝統工芸士・筆職人)

サッシャ: ものづくりの本質を探求するマイスター!
より上質な仕上がりを目指すクリエイティブの現場に迫る『INSIGHT PRIME STORIES』。
今週は一本の筆で文字の魅力を引き出すマイスター、
書道家・武田双雲さんにお話を伺っています。
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

武田: あけましておめでとうございます。よろしくお願いいたします。

サッシャ: 一昨日から年をまたぎました。
今週は、双雲さんの仕事を支える3人の職人さんにまつわるお話をご紹介しています。
その中で今日は3要素のうちの2人目、筆工房亀井のご主人で、
東京都知事認定伝統工芸士・筆職人 亀井雅文さんの話を伺いたいと思います。
亀井さんの筆は、やっぱり他と違うのでしょうか。

武田: 前回の伊藤さんもそうなんですけど、全部、一人で全行程作業しているんです。
亀井さんも仕入れから完成から販売まで全部自分でやっていて、
こだわりが強すぎる人で、誰にも任せないんですよ。
最初に会ったときは、まず「すぐ FAX 送ってくれ」と言われました。

サッシャ: FAXですか!?

武田: オーダーメイドで頼みたかったのでご連絡をしたのですが、
A4の紙に書いたものでいいからFAXで送ってくれ。それで大体分かるからって。
と言われたので、直筆のものをすぐに送りました。
書き手の癖を見抜くんだそうです。

サッシャ: 書いた文字を見るだけでどういう筆が合うかが分かるんですね。

武田: 最初はびっくりしましたが、実際出来上がってみたら
本当に僕のやりたいことを再現してくれるとんでもない職人でした。
周りから中心まである毛の長さを1ミリ単位でコントロールするんですよ。

サッシャ: 真ん中、中心部がどのくらいの長さで、
外側がどのくらいの長さでとかってそういうことですか。

武田: そうです。
亀井さんの特徴は、最後の最後の毛一本まで筆が収斂していくっていうか、
開かないんですよ。ひたすらとんがるんですよ。

サッシャ: すごい。じゃあその筆職人 亀井正美さんへのインタビューを聴いてみましょう。
亀井さんのお仕事の流儀、筆への思いはどのようなものなのでしょうか?

亀井: まず江戸筆の場合には、捌き筆といって、元まで下ろして、
根元までしっかり墨をつけて書く捌き筆、という作り方になります。
通常は分業して流れ作業が多いんですけど、
東京の場合には1から10までひとりの職人が仕上げていくという作り方で、
要所要所、筆の大事な部分っていうのは職人がすべてやっていきますので、
当たり外れのない筆になると思います。
基本的にウチで作っている筆は動物の毛100%ですので、
よく髪の毛の「キューティクル」という言葉をご覧になったことがあると思うんですが、
動物の毛も同じようにキューティクルが一本ずつの毛にあります。
それを毛もみという作業で、キューティクルが傷んだ状態、
毛羽立たせることで毛の間に毛細管現象がより出来て、墨の含みがよくなる。
そこに+α、自然の動物ですので、毛先の悪い毛を徹底的に抜き上げていく
「さらい」という作業をしたうえで筆づくりをしています。
通常、我々が作っている筆は中国の山羊毛という毛と、ミンク、コリンスキーという毛。あるいはイタチ、馬の大脇というしっぽの生え際の毛、リス。
動物ではその程度なんですが、例えば羊毛ひとつに関しても
羊毛が大体30通りに分かれて中国から選別されたものが入ってくるんですが、
オスであったりメスであったり…その毛をどう選ぶか。
一番大事な筆先をまとめる毛なのか、コシに入れて墨をもたせる毛なのかというのを、
選別する段階でかなり厳密に選んでいます。
ひとつの袋に大体10キロぐらいなので、それをだいたい16種類くらいに分けます。
分けたものを「この筆はこういう筆を作るとき」あるいは
「こういうオーダーがあったときに毛を使う」といったような考え方で、
かなり選別っていうのは微妙な部分でやっています。
武田先生と知り合いになってから13~14年経つんですけど、
一番最初は先生方がお書きになっている、
インターネットを調べたりしてある程度文字っていう部分は調べるんですが、
その方の特徴のある線っていうのがあるんです。
それを見せてもらうことで、筆の太さと毛の長さのバランスとか、筆の硬さ、
反発力があるのかないのか、あるいはかすれがどういう風になっているかを
トータル的にみることで、その方の特徴のある線っていうのがあるんですよね。
このへんを見せていただいた上で、その方に合わせた筆づくりをデータ化したものを
累積することによって、より一個ずつその方にあったもの、
あるいは「今後こういう風に書くんであろう」という部分の想像をしながら
筆づくりをしてさせていただいています。
併せて、先生がどういう風な希望、あるいは今後どういう風な作品作りに
取り組んでいくかというのも想像しながら製作しています。

サッシャ: ちょうど書き初めの時期ですし、書いた方もいるかもしれませんが、
もしかしたらこれからっていう方もいると思います。
学校始まると「書き初め書いてください」みたいなのが授業であるかもしれません。
僕らみたいな一般人が書道する際の筆捌きのヒント?コツ?みたいなのはありますか?

武田: やっぱり筆捌きは、例えば錦織のラケット捌きとか、イチローのバット捌きと一緒で、
鍛錬して一流になればあらゆる動きができると思うんですけど、
まだ皆さん聴いている方は素人の方が多いですから、
いきなりイチロー、錦織レベルは難しいですよね。
ほかのスポーツとも共通しているのは、その道具、筆と仲良くなることです。
何だこのやろう!とやっていると筆も嫌がります。

サッシャ: うまく書けないなーと思っちゃうと、思い通りに書けなくなっちゃう。

武田: 筆との一体感を楽しんでもらいたいです。
サッカーの言葉「ボールはともだち」と一緒で、筆と友達になってほしいなと思います。

サッシャ: ぜひチャレンジしてみてください!
明日は双雲さんの「書」を支える3要素の3つ目、
和紙を仕入れる際に利用されている老舗和紙問屋「杉原商店」さんへの
インタビューの模様をお届けします。 明日もよろしくお願いします!

武田: よろしくお願いします!

2019年1月3日(木)
●マイスター:武田双雲(書道家)
●コメントゲスト:杉原吉直(老舗の和紙問屋「杉原商店」の10代目)

サッシャ: 『INSIGHT PRIME STORIES』
今週は、一本の筆で文字の魅力を引き出すマイスター!
書道家の武田双雲さんにお話を伺っています。
そして今日は、双雲さんがお仕事をするうえで欠かせない3つの要素から〆の逸品!
老舗の和紙問屋「杉原商店」の10代目、杉原吉直さんのお話をお聞きいただきます。
杉原さんは、和紙の問屋さんとして、普段、
どのような想い・流儀で仕入れる「和紙」の選定/目利きを行なっているのでしょうか?

杉原: 越前和紙の作られる「越前」は、
全国にある紙の産地の中でも一番歴史があって、生産量の多いところです。
人間国宝もいらっしゃれば、大きな襖紙やもっと大きな紙も作れますし、
名刺などのカードも作る多様な職人さんが集まっていて、
他とは毛色が異なる、日本一古くて大きい和紙の産地なんです。
紙の作り方は1000年以上前からある程度変わらないんですが、
書を書くためのフラットな紙から、凸凹したり、穴が空いた紙、といった多種多様な紙は
職人がそれぞれに合った道具から自分で考案して作っています。
また特徴として、鎌倉以降の武家社会で作る公文書用の紙や、
最上級のお殿様がお触れを出したり、朱印状や黒印状につかうものは越前の紙に限る!
ということをずっと言われておりまして、
他の産地ではそういう将軍が使うような紙はおそらく作っていなかったと思います。
特別、最上級のモノを奉書と呼ぶようになり、越前の守護大名の斯波高経が
「ここにこんな素晴らしい紙がある」ということを全国に広め、
全国の戦国武将がこぞって良い紙を求めたんです。
良い紙を持っているのは、権力の象徴でもありました。
実は紙はいろんな種類があって、
和紙の原料でも楮、三叉、雁皮、麻を使ったりするんですが、
その使う方によって必要とされる紙は違うわけです。
武田さんはこういう紙がお好き、だけど絵を書く人はこういうものが好き、
描かれる人の中でもにじむ方が良い、にじまない方が良い、もしくは線が太い方が良い、
繊細な方が良い、光沢があった方が良い・・・いろんな好みがあります。
だから「一番良い紙をください」と言われるのが一番困るんです。
その方が求めている紙をこちらが理解しなきゃいけないので。
ですから私がまずお聞きするのは、お医者さんが診察するように、
どういう紙がどういう風に使われて、どういう効果を求めているんですか?とお聞きして、一番適正なものが、その方にとって一番良い紙、になるんですね。

サッシャ: 3日間お話をうかがってきましたが、日本の書に日常で接する機会というと、
大河ドラマのタイトルや、今年はなんといっても、新しい元号が発表になるときでしょうか。

武田: 平成、みたいな感じでね!きたらすぐ書きますよ!

サッシャ: 挑戦し続ける書道家・武田双雲さん。2019年の抱負はなんでしょう?

武田: 今思いついたのは創作の「創」。
今までになく、創作意欲が溢れていて、道具にも感動していて。
「なんだこれ!なんだこれ!」と。
独立したときにも同じような感情があって、そのとき次々に作品が生まれたんです。
だから今は第二次ブームが来ていて、
こういう職人さんたちのモノをつかって、バンバン作品が生まれる予感がしています。
創作意欲が止まらないので、このまま突っ走るんだろうなと思います。
だから創作の「創」。

サッシャ: それを通して、また日本に素晴らしいそれぞれの分野の
とんでもない職人たちがいる、ということもそれを通じて伝わる、
ということですよね。また素晴らしい作品、楽しみにしております。

サッシャ: 『INSIGHT PRIME STORIES』
今週は、書道家の武田双雲さんにお話を伺いました。どうもありがとうございました!

武田: ありがとうございました!

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