2020年のインディカー・シリーズ第3戦は、今季初めて、ファンをサーキットに迎えてのレースとして行われました。開催地は、ウィスコンシン州の大都市ミルウォーキーの北、約50マイルに位置するエルハートレイクで1955年にオープンしたロードアメリカ。開幕2戦は無観客での開催だったため、この時を待っていた大勢のファンがロードアメリカに集まり、V6ターボエンジンの奏でるエキゾーストサウンドと、目の前で繰り広げられるインディカーならではの激しいバトルを堪能していました。
今週末は2レースが行われるダブルヘッダーで、エントリーは23台。土曜日のレース1は、午前中に90分間のフリー走行を行い、午後になってすぐの2グループに分かれての予選を経て、夕方に決勝のスタートが切られました。
緑が美しく、全長が4マイルと、アメリカのサーキットにしては距離の長いロードコースでのレースは、55周で争われ、Chip Ganassi Racingが作戦力の高さと、予選並みのラップをレース終盤に重ねるスコット・ディクソンの飛び抜けた能力によってレース1で優勝。今シーズンのインディカー・シリーズで開幕から3連勝となりました。
9番グリッドからスタートしたディクソンは、55周のレースの序盤に4~9番手を争う集団に埋もれたため、ピットタイミングを早めて、26周目に2回目のピットストップを行いました。この作戦によってディクソンは周囲に誰もいないコースを走る状況を手に入れ、超高速のラップを連発して、ウィル・パワー(シボレー)に次ぐ2番手までポジションを上げることに成功しました。
その結果、レース終盤はディクソンとパワーの優勝争いとなり、パワーが先行していましたが、40周目のフルコースコーションで全車がピットストップを行った際、Chip Ganasi Racingが完ぺきな作業を行って、ディクソンをパワーの前へとピットアウトさせました。
ディクソンは、トップに躍り出るやライバル勢を沈黙させるファストラップを連発しました。レース終盤にはイエローフラッグが続けて出され、2番手との差はそのたびにリセットされましたが、積み上げた経験を活用したディクソンがトップを譲り渡すことはなく、インディカー通算49勝目、キャリア初の3連勝を達成しました。そして、Honda勢は5位以内に4台、トップ10に8台が入りました。
Dale Coyne Racing with Team Gohのアレックス・パロウは、ルーキーであることが信じられないようなハイパフォーマンスを見せました。ロードアメリカのコースは全長も長く、マスターするのが難しいコースと言われていますが、パロウは初走行ながら、予選14番手からレース半ば過ぎには4番手へとポジションアップ。終盤のリスタートで6番手から5番手、4番手、さらには3番手まで次々と順位を上げていきました。
予選3番手だったライアン・ハンター-レイ(Andretti Autosport)は、トップグループにポジションを保ち続けて4位フィニッシュし、コルトン・ハータ(Andretti Harding Autosport)が5位でした。サンティノ・フェルッチ(Dale Coyen Racing with Vasser-Sullivan)は、最後のピットストップで他車にコース復帰を妨害され、3位でフィニッシュできる可能性の高かったレースで6位となりました。
佐藤琢磨(Rahal Letterman Lanigan Racing)は予選では思い通りのパフォーマンスを発揮できず、15番グリッドからスタート。序盤に21番手までポジションを落としましたが、レースを戦う中で徐々にマシンを自分のものにして、9位まで順位を上げてチェッカーフラッグを受け、2戦連続のトップ10フィニッシュを果たしました。
インディカーのマニュファクチャラーズ選手権では、今季の3戦で3勝を挙げたHondaがポイントを267に伸ばし、シボレーの213ポイントに大きな差をつけてトップをキープしています。
明日は今週末の2レース目が、同じく55周で争われます。スタートはアメリカ中部標準時の午後11時。さらに来週もダブルヘッダーの大会となり、7月17日~18日にアイオワ・スピードウェイのオーバルで開催されます。
スコット・ディクソン(優勝)
「どうやって優勝を達成したのか、自分でもまだ完全に把握できていません。一度、ピットからのアウトラップで大きくタイムを稼げたことは分かっています。ピットへのインラップでも同じように一気にゲインできた時がありました。Hondaパワーで戦えていることを大きな誇りと感じています。予選では望んでいたパフォーマンスを見せることができず、9番手という結果でした。しかし、レースに向けて施した調整により、マシンが速くなっていました。そこがすばらしかったですね。このような週末を送れていることは、今シーズンの私たちにとって大きな意味があるものになると感じています。しかし、このようなパフォーマンスは私だけによるものではなく、チームの力です。彼らがすべてのベースをカバーするようなすばらしい仕事をしてくれているんです。このチームを、クルー全員を誇りに思います」
佐藤琢磨(9位)
「みんなが大好きなロードアメリカに戻ってくることができて、うれしく思います。予選は私たちにとっては厳しいものとなりました。残念ながら思うようにマシンのバランスを取ることができず、15番グリッドからのスタートとなりました。そして、レースでは、1周目のマシンのハンドリングがひどかったため、サイド・バイ・サイドで押し出されたような感じになって、先週と同じく後方まで順位を下げてしまいました。しかし、その後は徐々にマシンのパフォーマンスが戻ってきた上に、チームがすばらしい戦略を立ててくれました。レース序盤にはヘルメットのエアダクトが外れてしまい、相当に暑い状態で走り続けたときもありました。それでも全体的に見れば、非常にいいデータを得ることができたレースとなりました。明日はそれらを生かした戦いがしたいと思っています。予選が楽しみです。今日より前のグリッドをつかみ、レースも上位で戦うチャンスがあると思います」
順位 | No. | ドライバー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 9 | スコット・ディクソン | ![]() | 55 | 1:54'09.8697 |
2 | 12 | W.パワー | シボレー | 55 | +2.5386 |
3 | 55 | アレックス・パロウ | ![]() | 55 | +3.1928 |
4 | 28 | ライアン・ハンター-レイ | ![]() | 55 | +3.9844 |
5 | 88 | コルトン・ハータ | ![]() | 55 | +7.2493 |
6 | 18 | サンティノ・フェルッチ | ![]() | 55 | +8.2004 |
7 | 15 | グラハム・レイホール | ![]() | 55 | +11.3554 |
8 | 5 | P.オワード | シボレー | 55 | +14.7846 |
9 | 30 | 佐藤琢磨 | ![]() | 55 | +15.0046 |
10 | 8 | マーカス・エリクソン | ![]() | 55 | +15.7661 |
16 | 26 | ザック・ヴィーチ | ![]() | 55 | +22.6498 |
18 | 10 | フェリックス・ローゼンクヴィスト | ![]() | 54 | +1Lap |
19 | 27 | アレクサンダー・ロッシ | ![]() | 54 | +1Lap |
22 | 98 | マルコ・アンドレッティ | ![]() | 39 | +16Laps |
23 | 60 | ジャック・ハーヴィー | ![]() | 37 | +18Laps |
順位 | ドライバー | マシン | 総合ポイント | ||
---|---|---|---|---|---|
1 | スコット・ディクソン | ![]() | 155 | ||
2 | S.パジェノー | シボレー | 93 | ||
3 | コルトン・ハータ | ![]() | 88 | ||
4 | J.ニューガーデン | シボレー | 84 | ||
5 | グラハム・レイホール | ![]() | 81 | ||
6 | ライアン・ハンター-レイ | ![]() | 73 | ||
7 | W.パワー | シボレー | 72 | ||
8 | P.オワード | シボレー | 66 | ||
9 | ザック・ヴィーチ | ![]() | 64 | ||
10 | マーカス・エリクソン | ![]() | 61 | ||
11 | サンティノ・フェルッチ | ![]() | 59 | ||
14 | アレックス・パロウ | ![]() | 53 | ||
16 | 佐藤琢磨 | ![]() | 45 | ||
18 | フェリックス・ローゼンクヴィスト | ![]() | 37 | ||
19 | ジャック・ハーヴィー | ![]() | 36 | ||
20 | マルコ・アンドレッティ | ![]() | 32 | ||
21 | ジェームズ・ヒンチクリフ | ![]() | 31 | ||
22 | アレクサンダー・ロッシ | ![]() | 31 |