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Honda勢トップの3位入賞を果たしたカナーン |
今年で第87回目の開催を迎えた伝統のイベント・インディ500は、曇り空の下、華やかなセレモニーの後に恒例の「レディー・アンド・ジェントルメン、スタート・ユア・エンジンズ」の掛け声がかかり、スタートが切られた。心配された雨も降らず、午前11時に40万人の観客が見守る中、33台の出場者にグリーン・フラッグが振り下ろされた。
時速360キロ以上の高速で行われるバトルは3時間11分以上に及び、Honda Indy V-8勢の中からはトニー・カナーンが3位でフィニッシュした。シリーズ第3戦のもてぎから出場を始めたグレッグ・レイは8位、ルーキーのロジャー安川は10位でゴール。Honda Indy V-8勢3人がトップ10フィニッシュを達成した。
全長2.5マイル=約4キロのオーバル・コースを200周するレースは、8人のドライバーの間で合計14回のトップ交代劇があった。アクシデントなどによるフルコース・コーションは9回出され、完走は出走した33台のうちの半分以下である16台だった。
女性ドライバーのサラ・フィッシャーは僅か14周でクラッシュし、2年連続シリーズ・チャンピオンのサム・ホーニッシュJr.は残り5周でトラブルに見舞われて15位という結果となった。そして、2年連続のインディ500ウィナーで史上初の3連勝を狙ったエリオ・カストロネベスは、史上3番目の僅差で2位に敗れた。今回が現役最後のレースとなるマイケル・アンドレッティは、13位スタートから1周で8位まで一気にポジションを上げ、その後は28周に渡って力強くトップを走ったが、スロットル・リンケージの小さなパーツが壊れたために94周でリタイアとなった。
高木虎之介は、予選7位のポジションから日本人として史上最高位の5位でフィニ
ッシュした。これは今年出場したルーキーの中ではトップの成績であった。
●3位 トニー・カナーン
「勝てるマシンだった。しかし、残念なことにレース終盤はオーバーテイクが不可能だった。自分たちのマシンは間違いなく速かった。マイケルがリードしていた時、今日は彼が勝つと思っていた。彼がピット・インした時には本当にガッカリした。そしてその時、"自分がやらなくては"と思い、ベストを尽くした。チームは素晴らしい仕事をしてくれた。1ヶ月前、自分はこのレースに出場できるかどうかわからない状態だった。しかし、チームが頑張ってくれ、勝つだけの力があるマシンを作り上げた。しかし、ジル(ド・フェラン)とエリオ(カストロネベス)をパスすることができなかった。」
●8位 グレッグ・レイ
「単独走行でのマシンは素晴らしい状態だった。しかし、トラフィックの中でのハンドリングが良くなかった。ダウンフォースの設定は、大きい方でもなかったし、小さ過ぎもしなかったと思う。それで単独走行ではとてもいい走りができていたんだけれど、タービュランスを浴びながらの走行は大変だった。誰かをパスしようとしてそれができなかった時、後ろのドライバーに逆にパスされるシーンが何度かあった。それで3つか4つはポジションを損したとも思う。」
●10位 ロジャー安川
「インディ500に出場し、優勝することが僕の子供の頃からの夢だったので、こうして今日インディの決勝を走ったことで、一歩自分の夢に近づくことができたと思います。初めての500マイル・レースでしたが、完走することもできましたし、トップ10入りもどうにか達成できました。オーバーテイクの仕方、トップ・グループのドライバーたちの走り方など、レース中に学んだことも多かったんですが、インディ500は1ヶ月に渡る長いイベントで、毎日のようにたくさん走ることができ、多くの距離を走れたので、それによってインディカーというものをより深く理解することができたと思います。次のレースからは、より深い話をエンジニアとできるはずで、今まで以上に高いレベルで戦って行けると思います。」
●14位 中野信治
「走り出してすぐにクラッチが使えなくなって、ピット・ストップのたびにエンジンが止まってしまったので、ピットストップ1回で20秒は少なくともロスしていましたね。マシンのハンドリングも最初は良くなくて、それをピット・ストップで調整して行きました。500マイルのレースを完走するのは今回が初めてだったので、タービュランス、路面の変化、リスタートなど、長いレースを戦う中で得られたものは本当に多かったですね。この経験を基に、次へと続けて行きたいと思います。」
●16位 ケニー・ブラック
「勝てるマシンを手にしていながら、レース序盤にしてトラブルで遅れをとった。本当に悔しいよ。最初のピット・ストップで1速ギヤが使えなくなってしまったんだ。マシンのハンドリングはとても良かったんだけれど、1速がなくなったことでピット・アウトする時にエンジンをストールさせ、タイムをロスしていた。127周目にはすべてのギヤがスタックしたので、ギヤを全部交換することにし、それで4周の遅れを取ってしまった。レース中盤にはとても速いペースで走れていて、一時は19位まで下がっていながら、トップ10に食い込む9位まで挽回できた。そこまでは良かったんだけど……。」
●19位 ダン・ウェルドン
「ターン2の出口で大きなアンダーステアが出た。サム・ホーニッシュJr.に抜かれないようにと考えて、ちょっとインに入りすぎたのかもしれない。あの瞬間、自分の前には数台のマシンがいたので、タービュランスの影響を受け、突然マシンはオーバーステアになった。次の瞬間には壁にぶつかっていた。幸運にも、体はまったく無事だった。」
●21位 ロビー・ゴードン
「マシンはとても調子が良かったのに、ギヤボックスが壊れてしまった。レース序盤に遅れを取ったのは、人と違うタイミングでピットストップを行う作戦が原因だった。その後にちょっと慎重に過ぎるペースで走ったこともマイナスに作用してしまった。今年のインディ500は非常にオーバーテイクが難しく、トップ12まで挽回したところでギヤボックスが壊れてしまった。」
●26位 ジミー・バッサー
「ギヤボックスに大きな穴が開いていた。その原因はまだわかっていない。突然5速ギヤが抜けたと思ったら、その直後にギヤボックス全体がバラバラになった。チームメイトのケニーが1速ギヤを失ったという情報はその時点までで聞いていたけれど、自分のギヤボックスについては何の前触れもなく壊れた。スタートからずっとギヤボックスを丁寧に扱っていたつもりだたったんだけどね。今日はずっとタイミングが悪くて、コーナーで遅いマシンに追いついてばかりだった。それで勢いを削がれてしまって、リズムにも乗れなかった。」
●27位 マイケル・アンドレッティ
「マシンが突然失速した。スロットルの部品が壊れたんだ。非常にガッカリしているよ。走り始めはダウンフォースが少し大き過ぎたけれど、ピット・ストップでそれを減らして行くことができ、マシンは速くなっていったからね。自分が引退することについては、ハッピーだと感じている。インディでの僕にはいつも不運なことが起こるようだけれど、それも人生だ。今は本当にいろいろな思いが頭の中を駆け巡っているところだよ。長い間応援してくれたファンの人たちに対して感謝の気持ちでいっぱいだ。インディ500ではついに勝つことができなかった。それが僕に与えられた運命ということなんだろう。でも、オーナーとしては20回ぐらい勝てる運命かもしれない。」
●ロバート・クラーク:HPD VP&ゼネラルマネージャー
「エンジンのパフォーマンスはほぼ互角でしたね。我々のエンジンには勝てる力はあったと思います。ゴールの前に2度フルコース・コーションがありましたが、リスタートでトニー・カナーンはやや離されるものの、ハイスピードでの周回が続けばその差をどんどん縮めて行くことができていました。短い開発期間で開幕戦を迎え、そのホームステッドと続く第2戦フェニックスでの成績、パフォーマンスが非常に良かったことで、我々は少し楽観的になっていた面もあると思います。今後も開発の手を緩めず、全力を挙げて行きます。」
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