パワージェット基本概念
RS125R / RS250R / セッティング情報
パワージェット(Pwj)の考え方
まずは下の図1を見て下さい。
スロットル全開時の出力特性をグラフにしたものです。ピークパワー付近のB領域、それ以前のA領域、そしてオーバーレブ部分のC領域。個々の領域では本来必要な燃料流量が有るのですが、通常のMJのみのセッティングでは仮にBの領域に燃料流量を合わせると、A及びCの領域では濃くなってしまう傾向に有ります。

図2の様に燃料の流量は比較的なだらかな棒状の軌跡を描きますが、図1のパワーカーブは山なりの軌跡を描くことからも、MJが1つではA、B、C全てが理想的な燃調にならないことが、わかると思います。パワージェットはこの燃料流量を理想的な山なりに近づけて行くことが可能なわけです。
RS125R 2000年モデル以降のパワージェットセッティング
1999年までのRS125Rのキャブセッティングはピークパワー付近に燃調を合わせ、デトネーションを止めるために比較的小さめのPwj#40を使用した物でした。
2000年以降のモデルではキャブレターの仕様が250と同一となり、250同様のセッティング方法が使えるようになりました。したがってパワージェットは大きめの#48を使い、トルク感のある特性を得ました。但し250とは排気量やRCバルブの有無、使用回転域などの違いから125用のセッティング方法になっています。
2000年モデル以降のキャブ変更点
1998年・1999年 | 2000年 | |
MJH、Body | φ3.5 | φ3.7 |
キャブ油面 | 8.5mm | 8.0mm |
2000年以降のパワージェットキャブによるエンジン特性
(1) オーバーレブ特性の優れたエンジン特性
(2) 立ち上がり時回転(10000rpm〜)のトルクUP
(3) スロットルが開け易いエンジン特性
(4) スムーズでリニアな回転上昇による、高いコーナリング性能
(5) 適度なエンジンブレーキ性能
実際のセッティング方法
基本的なセッティングの方向性としてピークパワー以前の回転域はトルクフルな出力特性を確保し、高回転ではオーバーレブ特性の優れたエンジンにセッティングして下さい。
出荷時の状態はPwjが#40になっていますので、
慣らし後、出荷レベルを確認した上でPwjを#48に変更して下さい。
走行時の気象条件に合わせたJN/MJの設定(暖機後スナップにて)
JNは基本的にR1268/34-4段もしくはR1269/34-4段を使用し、 スナップでレスポンス等を確認し決定する。 ※実走でデトネを打たない様に設定する
この時低回転域からのスロットルレスポンスが一番良い所を探し設定する。
250の様に重く、トルク感のある方に設定すると実走でのフィーリングは悪くなる傾向にあります。
※実走でデトネを打たない様に設定する
MJは各ギヤで最低13000rpm以上回るジェットを選択する。
パワージェットが切れた所でエンジンフィーリングが大きく変化しないようにすること。
例えばパワージェットが切れた時に急激にエンジンが軽くなったり重くなったりする様だとメイン領域でのセッティングが合っていないと思われます。
又、シフトアップ回転はおおよそ13200rpmを目安とし、伸びきりのいい高回転を積極的に使い、シフトアップ後の回転を高くすることでつながりのいい加速につなげます。
デトネーションカウンターがメイン領域で1〜2回/km程度であれば通常13200rpm以上は回るはずです。
より実践的な仕様
パワージェットキャブ仕様のRS125Rをより実践的に仕上げるためにオプションパーツが設定されています。
MJH(メインジェットホルダー)
スタンダードφ3.7に対しオプション設定φ3.9 このφ3.9のMJHに変えることで、さらに開け始めからスムーズで力強い特性になります。但しハンチングが出て乗りづらかったら、φ3.7に戻して下さい。ハンチングを我慢しても速く走れません。 (2000年モデルは1998年・1999年と比較してハンチングやボコツキが出にくくなっているので積極的にφ3.9のMJHが使えます。)
JNのオプションパーツはスタンダードの34針に対して33針が設定されています。(同じ段数で0.5段分濃い)気象条件やコースレイアウト等を考慮し使い分けて下さい。
1998年・1999年モデルでのPwj#48セッティング
1998年・1999年モデルでも2000年仕様と同様のPwj#48セッティング仕様にすることが可能です。
その際油面も8.0mmにすることで2000年モデルと同等の高回転域パワーフィールになります。
さらに中低速でのトルク感を求めて、MJHをφ3.5→φ3.7→φ3.9と変更していくとトルク感が出てきます。但し、ゴボツキやハンチングが出やすい傾向になります。
そこでトルク感を残しつつゴボツキを解消するためにJNの段数などでやや絞る方向にすると、ゴボツキ感が薄れ、レスポンスが全域で向上し乗りやすくなる傾向となります。MJHとJNでバランスを取ってください。 トルク感ばかりを求めるとハンチングやボコツキで乗りづらいマシンとなってしまい、タイム的に悪化する可能性があります。
自分の乗り方(スロットルの開け方)に合わせたセッティングを選んで下さい。
1998年・1999年モデルでのセッティングは従来通りのPwj#40でのセッティングと2000年モデル同様のセッティングを、乗り手の好みで選んでもらえばいいと思います。
油面の変更は大きなセッティング変更を伴います。セッティングで悩んでしまったらスタンダードに戻す事をおすすめします。
RS250R 2000年モデル (NX5) 以降のパワージェットセッティング
RS250Rにおけるパワージェットキャブの特徴は、よりハイオクガソリンの特性を捕らえた結果、高回転まで回るようにして、出来る限り多くの燃料を入れ、効率よく燃やすことで出力を稼ぐ、無鉛ガソリンの特性を活かしたエンジンになっています。無鉛ハイオクガソリンはとても燃えやすく、デトネーションが発生しやすいと考えられます。そこで2次圧縮を下げると同時にシリンダーヘッドの燃焼室形状を変更して、燃焼速度を有鉛ガソリンに近い状態にすることによって、1998年モデルよりも高回転までエンジンが回り、デトネーションの発生も押さえられています。
また、2次圧縮を下げていることでパンチが落ちた部分を、最高出力発生回転数付近で点火時期の見直しにより力強く、最大出力発生回転以上の高回転域で新型キャブレターのパワージェットを積極的に取り入れることで、左図のような出力向上とピーク以降の出力の落ち込みを無くしています。これにより、エンジンの使用回転域が1998年までのモデルと比較して上にずれているのが、パワージェットキャブ仕様の特徴です。

パワージェットキャブによるエンジン特性
(1) オーバーレブ特性の優れたエンジン特性
(2) 立ち上がり時回転(10000rpm〜)の大幅トルクUP
(3) スロットルが開け易いエンジン特性
(4) スムーズでリニアな回転上昇による高いコーナリング性能
(5) 適度なエンジンブレーキ性能
実際のセッティング方法
基本的なセッティングの方向性として低中速はトルクフルでありながらリニアな出力特性を確保し、スロットルを開けやすく。高回転ではオーバーレブ特性の優れたエンジンにセッティングして下さい。
出荷時の状態ではPwjが#40になっていますので、慣らし後、出荷レベルを確認した上でPwjを#48に変更して下さい。
走行時の気象条件に合わせたJN/MJの設定(暖機後スナップにて)
JNは基本的にR1268/34-4段もしくはR1269/34-4段を使用し、スナップでレスポンス等を確認し決定する。
この時レスポンスが良すぎる様だと実走では走らない、やや重いようだがトルク感の有る方に設定すること。
MJは各ギヤで最低13000rpm以上回るジェットを選択する。
パワージェットが切れた所でエンジンフィーリングが大きく変化しないようにすること。例えばパワージェットが切れた時に急激にエンジンが軽くなったり重くなったりする様だとメイン領 域でのセッティングが合っていないと思われます。又、シフトアップ回転はおおよそ13500rpmを目安とし、伸びきりのいい高回転を積極的に使い、シフトアップ後の回転を高くすることでつ ながりのいい加速につなげます。
基本的にはMJ・JNだけの変更で年間を通してほぼベストなセッティングとなるはずです。但し今までとは使う回転域がやや上にずれたため、ファイナル及びミッションの変更をして、コーナ ー立ち上がりでの回転を稼いで下さい。
より実践的な仕様
パワージェットキャブ仕様のRS250Rをより実践的に仕上げるためにオプションパーツが設定されています。
MJH(メインジェットホルダー)
スタンダードφ3.7に対しオプション設定φ3.9
このφ3.9のMJHに変えることで、さらに開け始めからスムーズで力強い特性になります。但しハンチングが出て乗りづらかったら、φ3.7に戻して下さい。ハンチングを我慢しても速く走れません。
JNのオプションパーツはスタンダードの34針に対して33針が設定されています。(同じ段数で0.5段分濃い)気象条件やコースレイアウト等を考慮し使い分けて下さい。
Pwjカット変更
スタンダードの12750rpmに対し12500rpm、12250rpmがあります。
カット回転を早くすることで高回転の伸びきりの良さを期待できますが、デトネーションには十分注意をして下さい。
パワージェットキャブ仕様セッティングのコツ
<セッティングしていく上での注意>
(1) 今までの様にパワーバンドでのパンチを求めるのではなく、扱いやすくトルクフルな中低速と伸びきりのいい高回転になるようにセッティングしていくこと。この時パワージェット仕様は体感でセッティングするのではなく、しっかりとコースにポイントをもって車速をチェックすること。(たとえば、ストレートの途中に目標物を見つけて、通過時のギヤ・回転数をチェックすることで、実際のスピードがわかる)パワージェットキャブ仕様はトルクフルでピーク回転以降も積極的に使用するエンジン特性のため、感覚的に遅く感じることがあり、車速の乗りを判断するときは体感だけに頼らないようにしてください。
(2) 何よりもアクセルの開けやすい特性を大事にすること。2次圧縮の変更等で特性を大きく変えてしまうと全体のバランスが崩れ、パワージェットキャブのいい部分がなくなってしまいます。もしも仕様変更やパーツ変更で迷ったらスタンダードの組み合わせに戻し、そこからスタートすること。
(3) キャブボックスの目張りを徹底し、ラム圧を有効に使うように心掛ける事。
パワージェットカット回転の設定
RS250の場合
モード | コード色 | Pwjカット回転(rpm) | 備考 |
1 | ‒ | 12,750 | スタンダード |
2 | 青 | 12,500 | 同梱部品 |
3 | 黄 | 12,250 | オプションパーツ |
パワージェットカット回転の設定は、走行するコースのレイアウトによる使用ギヤの頻度で選択します。具体的には、5速6速を多用する高速サーキットではスタンダードのモード1を、菅生などの中速コースではモード2を、ほとんど5速6速を使わない低速サーキットではモード3を使用して下さい。(下表推奨モード参照)パワージェットが早く切れるモード3を高速コースで使うと、5速6速の加速中にパワージェットが切れて急激に燃調が薄い状態になり、デトネーションが多発する可能性があります。
パワージェットカットのモードを変えるときはコースレイアウトなどを十分考慮して、デトネーションカウンターやピストンの焼けなどを参考にしながら行って下さい。
モード | 高速コース | 中速コース | 低速コース |
コース | 鈴鹿、富士 | もてぎ、菅生、美祢 | 筑波、間瀬、鈴鹿南 |
推奨MODE | MODE1 | MODE2 | MODE3 |
※推奨モードは使用回転域、1次減速、2次減速の違いによっても多少変化しますので、自分にとって最適なカット回転数を選んで下さい。
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