メンテナンスの注意点(エンジン編)
RS125R / RS250R / メンテナンス情報
レーシングマシンRSはサーキットを走るために高いポテンシャルを秘めています。しかし基本的なメンテナンスを怠れば性能は大きなパーセンテージで落ちてしまいます。定期的に各部をチェックし、定められたインターバルで部品の交換、オーバーホールを必ず行って下さい。
定期交換部品(消耗交換部品)
項目 | 交換時期 | 判定基準 |
プラグキャップ | 約1000km(メンテ時毎回清掃) | |
シリンダー | 約2000km | 磨耗、損傷 |
ピストン | 約500km | スカート部損傷、磨耗 |
ピストンリング | 約500km | 合口部欠損、磨耗 |
ピストンピン | 約500km | 焼け、損傷、段付き磨耗 |
ピストンピンクリップ | 約300km(取り外し時毎回) | |
コンロッド小端ベアリング | 約500km | 焼け、損傷、磨耗 |
クランクシャフト | 約2000km | 歪み、損傷 |
クラッチアウター/センター | 約2000km | 磨耗、損傷 |
スパークプラグ | 電極の摩耗、すき間 | |
イグニッションコイル | 磨耗、損傷 | |
リードバルブ | ヘタリ、損傷 |
オーバーホール
項目 | 交換時期 |
フロント・リヤサスペンション | 2000km又は4レース毎 |
ワイヤー類(スロットル、クラッチ) | 2〜3レース毎(雨天走行後は毎回) |
ブレーキマスター | 1シーズン毎 |
ステアリングステム | 1シーズン毎(転倒後は要チェック) |
サスペンションリンク部 | 新車時、部品交換時 |
ホイールベアリング | 異音、ガタ、作動不良 |
その他各部ビスの点検
ブレーキ系、フロント、リヤアクスル廻りは特に注意が必要。ワイヤーロックも確認
定期交換部品距離設定の訳
例:500kmで交換のピストンの場合
耐久性の問題: | ピストン表面の条痕が減る(オイルだまり) |
クラック等の発生 | |
性能の低下: | ピストン変形 |
吹き抜け(リングによるリング溝の叩かれ・磨耗) |
上記のように、レーシングマシンとして高い性能を発揮することの出来る距離。又、耐久性から来るトラブルが発生しない距離を設定してあります。
(他部品についても同様に距離設定があります。マニュアル参照)
エンジンメンテナンス
シリンダー
2001年モデルRS125R・RS250Rは、パワーアップに伴いほぼメーカーキットエンジンと同様のシリンダーポート形状・タイミングとなっています。そのため今まで以上にシリンダのメンテナンスが重要となってきます。基本的にはマニュアルに書いてある項目を実施してもらえれば良いのですが、ここでは面取りの必要性について解説します。

ある程度走行したシリンダーのスカート側から斜めにエキゾーストポートの上面の面取りを見ると上記の様に光っている状態になっている事があると思います。

このポートの面取り部を断面で拡大して表すと上記の様になります。ピストンリングはピストンの上下運動時にごくわずかですがエキゾーストポートに張り出します。 そしてこの面取りで再びボア面に収まります。しかし、シリンダー面取り境界部分に鈍角でも角部があると次第にピストンリングの動きが悪くなり、面取り部のリングによる「あたり」が強くなる恐れが出てきます。この様な理由から面取りを行なうのですが、ポート上下の面取りを行なう際、耐水ペーパーを下図に示したボア面とポート面取りの境界に小さな角度(10〜15°)で当て、境界にRが付く様にしてください。面取りのメンテナンスによってリングスティックやシリンダーポート部のメッキはがれを起こしにくくする事ができます。

ピストン
ピストンの当たり
ピストンの当たり取りについては通常は行わないで下さい。
シリンダーとの当たりが特にきついときには何か他の原因が考えられます。ピストンは特別なプロフィル(形状)で造られています(真円ではない)これは適正な熱を持ち、ピストン、シリンダーが変形した時に当たりがきれいに出るようにしたためです。したがって不用意なピストン修正はピストンの理想的なプロファイルを崩し、他部分への当たりを強くしてしまいます。

リングスティック対応

年々エンジンの使用回転域が高回転に移行していく事に伴い、キーストンリングを使用していてもスティックが発生することがあります。リング・ピストンが新品の場合、スティック対策のリング溝修正は必要ありませんが、メンテ時、リング固着がみられたときには必ず修正を行って下さい。大幅なパワーダウンになると共にトラブルの原因となる可能性が有ります。リングスティックしたマシンはエンジンの始動性が悪くなる・排気音にこもり感が出るなど、エンジンをかけた時の症状でも判断出来ます。
ピストンリング

ピストンリングの合い口隙間を丸やすり等を使用して、面取りを行って下さい。これはピストンが上下運動を行う時に発生した回転力によってストッパーピンが削られるのを防ぐためです。
ピストンサイズ (2002 RS250Rまで該当)
ピストン・シリンダー嵌合表

※2001年モデルからのシリンダーについてはA/Bの識別マークが無くなりました。シリンダーサイドにNXAの刻印があります。
シリンダー及びシリンダーヘッドの取り扱い
シリンダーやシリンダーヘッドの取り扱いには十分注意をして下さい。
特に合わせ面に傷などがつくと、密着性が悪くなり、吹き抜けなどをおこす可能性があります。万が一傷や打痕がついてしまったら、サンドペーパーなどを使い突起部をきれいにとってから使用して下さい。但しOリングをまたぐ形、またはOリングの溝の中に傷が入った場合はOリングが吹き抜けを起こす可能性がありますので使わないで下さい。
RCバルブ (2002 RS250Rまで該当)
RS250Rの場合RCバルブの調整が出来ていないと大幅なパワーダウンを招きます。(1〜5PS程度)ピストンメンテを行わない時でも、熱をかけた後などはバルブの位置がずれますので再度調整して下さい。
クラッチアウター部
定期的な点検・交換を行って下さい。点検時にガタ、クラック等が有るときは、早めに交換して下さい。(クラッチアウタービス部)(ビスが飛び出てくると125はパルサープレート、250はケースカバー等を破損する恐れがあります。)
ウオーターシール
ウオーターポンプから水が漏れているときにシールを交換しますが、その時ウオーターポンプシャフトもよく見て下さい。シャフト表面の色が変わり荒れているものがあります。ある程度使い込まれて表面が荒れてしまった物はシールを変えても水漏れは止まりません。両方一緒に交換して下さい。それでもまたすぐに洩れてしまう場合ウオーターポンプベアリングやバランサーシャフトベアリングも点検して下さい。
キャブレター
キャブレターの清掃をする際、フロートを取り付けたまま高圧エアーにて吹かないで下さい。油面が狂ってしまいセッティングが大幅にずれる可能性があります。
キャブレターフロート
キャブレターフロート部分は非常にデリケートな部分です。点検整備など分解した時は十分に注意して取り扱って下さい。万が一油面がずれてしまった時は、マニュアルを参照の上調整を行なって下さい。油面がずれていると、他と比べて濃くなる、薄くなる、カブルなどの症状が出る時があります。又、フロート部を上下に動かした時に引っ掛かりが無いかの確認も行なって下さい。フロート部に引っ掛かりがあってスムーズに動かないと、スロットル開けはじめなどでボコツキ症状が出る事があります。又、燃調が不安定になった為にデトネーションが多発する事があります。
フロート油面確認位置

フロートレベルの確認はフロートバルブとフロートリップが軽く接する位置で行なう。 油面高さを測る時はメインジェットの位置ではなく、フロートの一番高い位置で測定する。
RS125Rの注意点
2001年 シリンダーヘッド
2001年モデルからの2次容積は2000年モデルまでと比較してシリンダーヘッドの容積で0.2cc少なくなっています。又、2001年モデルのシリンダーヘッド形状はセンターが突き出た形となっていますので組み込み状態での容積測定は出来ません。(エアーだまりが出来る為)ヘッド単体による測定のみ可能となります。
二次容積基準値
項目 | #1前側 | #2後側 |
2002年モデル | 34.2mm黒色 | 29.2mm銀白色 |
2001年モデル | 27.5mm銀白色 | 29.5mm黒色 |
正規組み合わせで走行しないと、高回転が回りづらく、振動を伴うなどの症状が現れ、本来のポテンシャルを発揮できません。又、2000年モデルのエキゾーストジョイントと2001年のエキゾーストジョイントではジョイント部の径が違う為共通して使う事はできません注意してください。
RS250Rの注意点
エキゾーストジョイントガスケット
2001年モデルではこれまでの厚さのある銅タイプの物から薄めのステンレスの物に変えられています。(耐久性アップ)したがってエキゾーストジョイントのチャンバー取り付け部同様、液体ガスケットを塗布してからエキゾーストジョイントを取り付けて下さい。
リードバルブ
2001年モデルからリードバルブボディを変更。2000年までのモデルに比べて角度が変わっています。(2001年モデルは急角度)そのためリードバルブ本体をやや薄くして開きやすく、サポートを取り付ける事により大きく開いた時のバルブ本体の腰を持たせています。
マニュアルのアドバイスにあるようにバルブ、サポーター、ストッパの向きをよく確認して取り付けて下さい。