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メンテナンス

2003年 ワークスメカが語る 耐久レースの戦い方

CBR600RR / CBR600F4i / CBR954RR / メンテナンス情報

マシンのメンテナンス

4耐はレースを含めウィーク中で約1000kmの走行になります。
下の表は、レースユースを前提にエンジンのパーツの交換時期の目安となる物です。もちろん、この距離を越えるとすぐに壊れてしまう様な事はありませんが、やはりメンテナンスを怠ると、どうしてもエンジンの調子も落ちぎみです。ストレートで同じCBRについて行けない事が無い様にしっかりとパーツの距離管理とメンテナンスはしておきましょう。

(参考) CBR600RR エンジンパーツ 推奨交換時期

交換部品/点検項目 距離 作業項目
IN/EXバルブ 3000km毎 交換を推奨
IN/EXバルブスプリング
ピストン
ピストンピン
ピストンリング
コンロッド
コンロッドボルト O/H時交換 1度はずしたら再使用禁止
カムチェーン O/H時交換 リンクプレートの欠損及び伸びの点検
カムスプロケット チェーンの噛み込み、圧損の点検
パルスジェネレーター コード折損及び破損の点検
コンロッド メタルベアリング あたり、磨耗、傷の点検
クランクシャフト ベアリング
クランクケース 基本的に1シーズンもしくは6〜7000km
傷、磨耗、クラックの点検
シリンダーヘッド

クラッチ廻りはレース毎、プラグ、オイル、フィルターの交換や点検も忘れずに!

上の表をもとに、現在の走行距離と4耐での走行距離を考えて、あまりにもオーバーしそうな時には、事前にパーツ交換することをお勧めします。
もし交換までは出来ないとしても、ヘッドのメンテナンス(カーボン落とし、バルブの擦り合わせ)だけでもやっておけば、エンジンの調子や燃費にはプラスとなるはずですので是非試して見てください。
オーバーホール等をした場合には、慣らしやチェックの為の走行を済ませておく事も忘れずに!

エンジン以外のパーツについて

前後ホイール 振れやあたり、エアーバルブの点検
前後ブレーキディスク 振れやそり、磨耗の点検
前後ブレーキパッド 磨耗、偏磨耗の点検
前後ブレーキキャリパー 汚れ、磨耗の点検、清掃
ドライブチェーン 伸び、固着の点検、給油
エアクリーナー 汚れ、つまりの点検、清掃

ブレーキパッドやドライブチェーンなどは、慣らし走行をした方が良いパーツです。
レース前に付け替えたい物については、あらかじめ練習走行等で慣らしをしておくと良いでしょう。

この他にも、オイル、水廻りの点検と、ホースバンドのワイヤーロックなど、耐久レースに備えて、いつも以上にマシンのチェックはしておきましょう。

事前の練習走行で決めておきたい事

インジェクション関連のセッティングは早めに決めておきたい所です。
決めたセットでなるべく多く走行をして、燃費をしっかりと計測しておく、これが重要です。(ペアライダーも同様に)
それに自分のマシンのタンクの実容量を1度しっかりと計っておいて、満タンでどの位走行出来るか把握しておきます。
これを基にペアを組むライダーとの周回数の割り振りを考えます。
ただし、どんなタンクにも死残量が有って、最後のゼロまで使う事は出来ないので、この分の余裕は見ておきましょう。
ブレーキパッドに関してはパッドの残量を計り、練習後の数値を確認します。この時レースを想定した距離と練習で減った量を比較して、交換するかどうか判断して下さい。
耐久レースで1番大事な事はライダーのコンビネーションです。足回りのセッティングは、どちらかのライダーに偏ったマシンのセットアップは禁物ですが、予選通過の為に多少速い方のライダーに合わせる事も実際有り得ます。この辺りは充分な話し合いを持って決めましょう。 ただし、最近の4耐はタイヤ交換をしないチームが多くなっています。それに伴ないタイヤグリップの下がった状態でいかにアベレージタイムを上げるかが、セッティングの重要なポイントになって来ます。
練習時に交換しない想定でセッティングを行って下さい。

さあ!ここからはレースウィークでの注意点の話しをしましょう

レースウィークが始まると非常にたくさんのマシンが走行します。
ただでさえ混雑したコース上で走らなければならない上に、路面コンディションも良い状態とは限りません。
この様な中だと、せっかく決めたセッティングでうまく走れなくなったり、タイヤがグリップしなくなったなど、様々な問題が出て来ます。しかしベースセッティングを大きく変える様な事は無いはずなのです。目先の問題の為に今まで積み上げて来た大事な物を失わない様、あわてず、自信を持って望んで下さい。
走行毎のメンテナンスですが、基本的にきっちり整備をしてサーキットに入れば、やることは多く無いはずです。
それでも、走行ごとの燃費やボルトのトルクチェック、ブレーキのメンテナンスだけはキッチリしておきましょう。

ここでブレーキのメンテナンスについてのアドバイス

よくブレーキキャリパーの清掃に、スプレータイプのブレーキクリーナーを吹きかけているのを目にします。揮発性の高いクリーナーの中には、ブレーキのピストンを支えるシールラバーを侵してしまう可能性がある、ブレーキオイルの拭き取りに使用する位にしましょう。
ブレーキキャリパーの清掃には、水と中性洗剤を使う様にして、ピストンの隙間に入り込んだゴミや汚れも綺麗に掃除します。
この時にブレーキレバーを数回にぎり、ピストンが全て同じ様に出て来るか確認して下さい。
どれか動きが悪いようでしたら、そのピストンを少し多めに出して、汚れやゴミかみがないかチェックし、又押し戻して下さい。
これを何回か繰り返す内に、動き易くなって来るはずですが、もし変化が出ない様でしたら、オーバーホールをお勧めします。
最後にマスターシリンダーのサブタンクのキャップを外し、液を補充して下さい。(キャップを開ける事で大気圧に戻る)

ピットワークについて

順調であれば、ほとんどのチームは給油とライダー交代のみのはずですが、天候の急変によるタイヤ交換や、転倒によるマシンの修復など、不測の事態も起り得ます。
こういった事を想定して、チーム内での役割分担を明確にしておく事と、マシンを使った作業手順の確認は必ずしておきましょう。
それから、耐久レースのピットワークには厳しいレギュレーションが設けられています、違反に対してはペナルティが課せられるので、必ず、チーム全員がこれを理解しておく様にして下さい。

予選後(決勝前)のメンテナンスの注意点

4耐は決勝前のフリー走行の設定が無い為、予選後にパーツ交換をすると、慣らしや機能確認が出来ないまま、決勝レースのスタートになってしまいます。
例えば、ドライブチェーンの初期伸びは取っておいた方が良いし、ブレーキパッドも最初は効きが悪いのであたりは付けておきたいなど、こういったパーツがいきなり新品でレースにならない様に注意して下さい。
前に述べた様に、あらかじめ練習走行で慣らしをした物を作っておくのも一つの手です。

ここまで来れば後は気持ち良くレースをしてもらうだけです。耐久レースは、ライダー、メカニック、ヘルパー、スタッフ全員の力が一つになって戦うもので、どれ一つ欠けても成り立ちません。
是非、悔いの残らない、すばらしいレースとなる様にして下さい。

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