2014年シーズンのCBR250Rドリームカップ各シリーズ戦もほぼ終了し、新たな目標に向けて皆さんも充電する時期になりました。2014年を振り返り『よかったこと』、『悪かったこと』が多くあったと思いますが、シーズンオフに準備しておくこと、やるべきことを整理し、実行することで2015年の結果が変わってくると思います。このインフォメーションを読んでいただく読者の方に、よりよい成果を残していただけるよう、2015年に向けてオフシーズンでの車両メンテナンスについてお話します。
エンジンメンテナンスについて【シーズンでの実走行距離から交換に必要な部品を洗い出し、リストアップしてください】
エンジン性能を維持することと、2015年シーズン序盤でトラブルが発生しないようにシーズン後のメンテナンスを行なうことは大変重要なポイントです。
@メンテナンスを依頼する場合<
HRCサービスショップなどにメンテナンスを依頼する場合、各部品の走行距離や使用頻度を記録して交換を明確に伝えることで依頼を受けたショップの参考となります。
例えば体調を崩し、病院で診察する場合に「体が不調で診てほしい!」では、医者も診察できません。問診表に記入したり、体の異常(体温や痛みの個所など)を話すことで的確な診察ができます。
エンジンメンテナンスの依頼も同じで、何もなくメンテナンスを依頼すると各部品の確認で交換判断が難しく、せっかくのメンテナンス効果が得られなくなってしまいます、確実にメンテナンスしてもらうためにもエンジンの現状を明確に伝えるようにしてください。
A自身でメンテナンスする場合
メンテナンスをご自身で行なえる技術力のある方は、テクニカルインフォメーション第3回のエンジン編を参考に各管理ポイントを確認し整備してください。
車体のメンテナンスについて【作動部品を重点的にチェックし、異常の場合は交換するようにしてください】
シーズン中の練習やレースでの走行で、可動部や摺動部が磨耗変形し機能が低下しています。下記部品を参考に各分解及び交換を行なってください。
@クラッチレバー、ブレーキレバー
レバーピボット部の磨耗変形は徐々に変化しガタが増大するため、走行時には気にならない部分でもあります。しかし、このガタがさらに増大すると、クラッチ操作でコントロール性が悪化します。またブレーキも同様に効力コントロールが安定しなくなります。
レバーのピボット穴及びホルダーのボルト穴を含め磨耗変形がある場合は、新品部品に交換することをお勧めします。
Aクラッチケーブル、スロットルケーブル
ケーブル類の曲がりや折れを確認し、不具合がある場合は新品に交換してください。急激な曲がりや折れがあると、フリクションが増え操作荷重が重くなったり、スロットル戻り不良の原因になります。
Bチェンジペダル、ブレーキペダル
レバー同様にペダルピボット部も磨耗変形が徐々に変化し、ガタが増大するので磨耗変形がある場合は新品部品に交換してください。
Cステアリングステム
テクニカルインフォメーション第4回に掲載した『ヘッドパイプの管理』を実施してください。コンレースの打痕、傷及びボールの変形、傷を確認し、組み付けではグリス塗布とトルク管理を必ず実施してください。
Dスイングアームピボット
スイングアームをフレームから取り外し、ベアリングの洗浄と傷、打痕の有無を確認してください。組み付けはグリスを塗布し規定トルクで締め付けます。ピボットシャフトがスムースに入ることも重要な管理ポイントですので必ず確認してください。
E燃料タンク
ガソリン給油などで微小な不純物がタンク内に混入しています。フューエルポンプを取外し、フィルターの清掃を行なってください。
タンク内の不純物でフィルターが詰まると燃調不具合が発生し、エンジン性能不調の原因となります。
一般的に経時劣化部品(バッテリー、タイヤ、ブレーキフルードなど)は、新しいシーズンの走行前に交換することをお勧めします。シーズンオフ中の長期保存時の注意点は以下のとおりとなります。
@冷却水
サーキット走行では不凍液の使用は禁止されていますが、寒冷地での保管時は凍結防止のために不凍液を入れて保管してください。ただし、サーキット走行前に必ず水に抜き替えること。また、冷却水を抜いた状態での保管は絶対にしないでください、ラジエター内、エンジン内が腐食する可能性があります。
Aタイヤ
走行したタイヤは、経時劣化と共にグリップ性能が変化します。長期保管したタイヤは慣らし走行や確認走行用にとどめ、レースでは使用しないようにしてください。
Bガソリン
半年くらい保管する場合は、燃料タンクを満タン(フルタンク状態)にして保管してください。ただし、保管場所などの火気には十分に配慮してください。保管期間が1年を超える場合は、タンク内を空にしてください。保管期間が短い場合は、満タンにすることで燃料タンク内の腐食を防止できます。1年以上の長期保管となる場合は、ガソリンの成分が変化するので、タンク内を空にしておくことをお勧めします。
シーズンオフ期間中の体調管理は、2015年のシーズンスタートに大きな影響を与えます。ただし、プロライダーを目指すライダーを基準に、同じメニューで管理し実践することは現実的ではありません、個々に目標や目的が違いますので、各自の目標と目的に見合った体調管理を心掛けてください。
【体調管理の考え方】
ライディングテクニックで必要な筋力は、通常生活の範囲で補うことができます。ただし、転倒などでのアクシデントに強い体作りは、モータースポーツの競技として必要不可欠ですので柔軟性と持久力を意識した体作りを実践してください。具体的なアドバイスは専門外ですので、お近くのスポーツジムなどの専門施設で相談していただくことをお勧めします。
【ライディングトレーニング】
一般的なアドバイスからは外れますが、GPライダーを含め世界で活躍しているライダーたちのシーズンオフトレーニングは、オフロードバイクでスライドコントロールとバランス感覚取得が主なメニューとなっています。
滑りやすいダートコースでの走り込みやミニバイクでの8の字走行などが中心で、モトクロスのジャンプやギャップ走行は取り入れていません。中には、シーズンオフのトレーニングにモトクロス走行を取り入れて実践されている方も多いと思いますが、目的を明確して繰り返し練習することをお勧めします。2014年のレース経験からライディングテクニックの習得項目(スライドコントロールなど)を明確にし、トレーニングでは常に習得項目を意識して取り組んでください。
【体・技・心の意味】
持論で申し訳ありませんが、相撲の世界では『心・技・体』と精神面を育てることで技術と体力の両面を身につけることができると言われています。しかし、2輪のモータースポーツでは『心・技・体』という表現に違和感を覚えます。サーキットを走るまでのトレーニングや体力作りは強い意思と心がなければ続けることができませんが、実際にサーキットを走行したりレースに参加しているときは、1/100秒の判断やライディングが結果に大きく影響することがあります。したがって、車両の挙動に真っ先に体が反応し、技術でコントロールする『反復反応』が重要と考え、 『体・技・心』と入れ替えました。皆さんも経験があると思いますが、『自然に体が反応した!』、『気がついたら転倒を回避していた!』など、意識せずに体が反応していることがあります。トレーニングもこの状態を意識的に再現し、反復することで高いレベルのライディングテクニックが身につくと思いますので、是非トライしてください。
それでは、レース参加者のみなさん、今シーズンおつかれさまでした。みなさんの来シーズンの健闘をお祈りして、この連載を終了とさせていただきます。