CBR250R セッティング解説

第7回

今回は『止まる』、『曲る』、『走る』の『止まる』についてお話します。2輪車を含め、車、電車、飛行機など、すべての移動手段で減速や停止をするためには、ブレーキ機能が必要となります。

サーキットを安全かつ速く走るためには、確実に機能し、ライダーがコントロールしやすいブレーキが不可欠で、大変重要な部品でもあります。ブレーキの性能、機能、メンテナンスを把握して、より安全に速く走れるように心掛けてください。また、11月には鈴鹿でグランドチャンピオンシップが、もてぎでビギナーチャンピオンシップが開催されますので、ベースとなるファイナルレシオなどのセッティング情報をお伝えします。

ブレーキ機能及びメンテナンス

CBR250Rや近年のモーターサイクルは、フロント、リア共に油圧式ディスクブレーキが主流となっています。この油圧式ディスクブレーキは、ブレーキレバーを握ること(入力)で発生した圧力により、ブレーキパッドをディスクと密着させ、摩擦抵抗にて制動します。また、ブレーキレバーの入力を解除することでブレーキキャリパー内のピストンが戻ることをロールバックと言います。このロールバック量を規制しているのはピストンをシールしているOリングで、大変重要な役割をしています。Oリングの劣化や膨ぼうじゅん潤が発生した場合、ロールバック量が変化し、ブレーキフィーリングが変わります。さらにブレーキパッドが戻らず、ブレーキの引きずりが発生する場合もあります。

リアブレーキキャリパー。直立状態からコーナー進入での絶対的な制動力ではなく、車体の安定、コーナー立ち上がり時の車速コントロールなどに活用する

フロントブレーキキャリパー。制動に最も大きな役割を果たす。磨耗粉がつきやすいため、頻繁に洗浄が必要だ。ブレーキパッドとホースの交換は可能

リアブレーキのリザーバータンク。写真はスポーツベース車のスタンダード状態。
タンクステー取り付け位置の変更、追加は認められている

フロントブレーキのリザーバータンク。ブレーキパッドの磨耗により、リザーバータンク内のブレーキフルード量が減少する。常にフルード量のレベルを確認する

■メンテナンスでの注意点

@ブレーキキャリパーを洗浄する場合、ガソリンなど揮発性の高い物は絶対に使用しないこと。
一般走行に比べ、レーシング走行ではパッドの磨耗粉がブレーキキャリパーに付着し汚れやすくなり、頻繁にブレーキキャリパーを洗浄する必要があります。Oリングはゴムが主成分ですので、攻撃性の高いガソリンなどで洗浄すると、急速に劣化したり膨ぼうじゅん潤する可能性があります。ブレーキキャリパーの洗浄は液体洗剤を薄めて使用してください。

Aブレーキフルードの補充は、パッドの磨耗量(厚さ)に注意すること。
ブレーキパッドの磨耗によりリザーブタンク内のブレーキフルード量が減少します。フルード量は新品ブレーキパッドではアッパーレベル、磨耗して薄くなった場合はロアレベルです。仮にパッドが磨耗した状態でリザーブタンク内にフルードを補充し、後にパッドのみを新品に交換した場合は、常に圧力が掛かった状態となり、ブレーキの引きずりや、最悪はタイヤがロックする場合がありますので、十分に注意してください。
※パッド交換時は必ずリザーブタンクのブレーキフルード量を確認することを徹底する。

Bブレーキフルードは吸水性の高い特徴がありますので、保管などに注意すること。
湿度の高い状態でリザーブタンクを開けた場合はできるだけ早く、ブレーキフルードを交換することをお勧めします。また、一度開閉し長期保管したブレーキフルードも、同様に特性変化が発生しやすくなりますので保管には十分注意してください。

ブレーキ性能について

少し前の話ですが、GP500クラスのマシンは時速200q/hからのフル制動テストで、120m前後で停止できるブレーキ性能を持っていました(現在のMotoGPマシンはさらに高い性能を有しています)。このブレーキテストでは、ほぼ後輪が浮いた状態で、フロントブレーキのみで制動している状態となり、リアブレーキは使っていません。このブレーキテストは、停止するまでの究極的な性能確認なので一般走行やサーキット走行では通常使用することはありません。ただし、このブレーキングで、必要なテクニックの参考にすることができます。

ブレーキングテクニックについてのアドバイス

@ブレーキレバー入力コントロール

ブレーキングによる制動性能には、ブレーキシステムの性能に加え、タイヤのグリップ性能や、車体の直立状態を安定させる操縦性も大きな要因になります。タイヤのグリップ性能及び車体の安定性が前提ですが、ブレーキ入力は握り始めにマックス(最大)の力となり、車速の低下及びリアタイヤのリフト量(浮き)を確認しながら入力を開放してコントロールします。仮にブレーキ入力をコントロールしないで握り続けた場合、フロントタイヤがロックするか、リアリフトで前転してしまいます。
※ブレーキ入力は最初に強く握って徐々に力を抜いてコントロールすると覚えてください。

Aブレーキングでの車体コントロール

ブレーキレバーの入力コントロールにも関連しますが、ブレーキングでの減速Gで発生する慣性力(ライダー自身に掛かる前方への荷重)が腕及びハンドルに掛からないよう、フューエル(燃料)タンク後端でニーグリップします。仮に腕で支えた場合、ブレーキ入力がしにくくなり、車体が不安定になります。
※ブレーキングは腕に力が入らないライディングを心掛けてください。

Bブレーキングでの車速コントロール

サーキット走行での初心者は、直進状態で減速してからコーナリングするのに対し、慣れてくると少しずつ制動距離が短くなり、さらに上級者になるとブレーキングはコーナリング中でも使えるようになって、制動距離が短くなります。

初心者のブレーキングに対し、上級者はコーナリング中でもブレーキを多用して車速をコントロールすることができます。
※ブレーキングで車速をコントロールしていると感じることができればラップタイム向上につながります。

Cリアブレーキのテクニック

直立状態での急制動はリアブレーキを使用しませんが、サーキットでの車速コントロールではリアブレーキのテクニックが必要になります。

・ブレーキング初期
コーナー入口でリアブレーキをはじめに掛けることでフロントに掛かる荷重(慣性力)を低減し、車体を安定させることができます。

・コーナー入口
リアブレーキを若干利かせた状態(引きずる程度)でコントロールすることで、オーバーランが防止され走行ラインをキープすることができます。

・コーナー出口
コーナー立ち上りでアウト側に飛び出しそうになった場合、スロットルを戻して走行ラインを調整しますが、スロットルを開けたままでリアブレーキを掛けることで走行ラインをキープすることができます。
※上記のテクニックは、サーキットのコース状況や走行スピードで効果を活かせない場合がありますが、参考にすることで速く走るためのテクニックとなります。

コーナー進入のブレーキング時は、減速Gにより体が前に持っていかれるが、燃料タンク後端部分でニーグリップすることで下半身でしっかりマシンをホールドする。こうすることで腕に力が掛からない