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CBR250R セッティング解説

第5回

前回に引き続き、車体のセッティングについて説明します。車体のセッティングは、ライダー個々の好みやライディングスタイルで調整が必要です。カテゴリーや技量の異なるライダーの意見は参考として、自分自身でセッティングをトライし、判断してください。

また、セッティングは車両規則(レギュレーション)などで調整する範囲に限界があり、100%満足のいくセットアップができないことを前提に、妥協点を見つけるように心掛けてください。世界で活躍しているライダーたちも常に100%満足なセッティングでレースを戦っている訳ではありません。70%、80%の仕上がりを自身の技量で補い、ベストな結果を残すことができるライダーが強いライダーであり、チャンピオンになれるのです。

前回、スプリングレート及びイニシャル調整(以後『プリロード』に統一します)で、走行中の車体姿勢が変化することを説明しましたが、今回はそれが実際にどのように変化するのかを説明します。

CBR250Rレースベース車の車重は、整備状態(ガソリン満タン13L)で145.8sです。分布荷重はフロント50.4%、リア49.6%がベースになっています。したがって、1G状態でのフロントに掛かる重量は73.5s、リアに掛かる重量は72.3sが基本です。実際は車体の個体差や燃料残量で若干変化しますので、ご自身で確認してください。前後分布荷重の測定方法は、体重計が2個あれば可能です。

スプリングレート変更

分布荷重から1Gストロークを計算します。
スプリングレート11kg/mmのリアサスペンションの場合リア荷重72.3kg(※リアサスペンション荷重はリンクレシオから約2倍の144.6kg)。
・プリロード8 oのセット荷重88kg(144.6kg-88kg=56.6kg )、56.6kgのストローク量は5.15mm。
スプリングレート10kg/mmに変更した場合
・プリロード8mmのセット荷重80kg(144.6kg-80kg=64.6kg)、64.6kgのストローク量は6.46mm。

同じプリロードで長さ管理した場合、1Gストロークは1.3mm(車高で約2.6mm)変化しています。単純なスプリングレート変更ですが、変化点や管理項目を把握することで、早期セッティングが可能になります。

スプリングレートを変更した場合の特性は図のようにグラフの傾きが変わっていきます。スプリングレートを変更する場合の例として、全体的に固い(柔らかい)、前後の車体姿勢、プリロード調整範囲を超えてしまった、などに対して変更します。
プリロード調整

プリロードは『セット荷重で管理する』ことが基本です。『長さ(mm)』は管理がしやすいため、簡易的に代用していると理解して下さい。スプリングレート11kg/mm、プリロード8mm(88kg)のセットからスプリングレートを10kg/mmに交換した場合は、プリロードを8.8mm(88kg)にすることでプリロード荷重が同じになります。

プリロードを変更した場合の特性は図のようにグラフの傾きは変わらず、全域の特性が平行移動したように変わります。プリロードを変更する場合の例として、全体的に固い(柔らかい)、コーナリング中の位置が高い(低い)、前後の車体姿勢、ストロークの初期から固い(柔らかい)、などに対して変更します。ただし、プリロードをかけすぎると、スプリングの反発力が強すぎて、『チャタリング』を誘発しやすくなります。

同じスプリングレートの場合、『プリロードの変更量』=『車高変化量』になり、プリロードを1mm上下した場合、同じ値で変化すると覚えてください。

ただし、リアサスペンションは、リンクレシオでサスペンションストロークとホイールトラベルの比率は1対2となりますので、車高は約×2の変化量です。

フロントの変化はキャスター角で、1mm=1mmではありませんがほぼ同じと考えて問題ありません。

残ストローク管理について

残ストローク管理の基本はフルストローク値です。フロントサスペンションのフルストロークは130mmです。

フロントフォークのストローク値(トップキャップからボトムケース上部のダストシール部まで)は最大(伸びきった状態)で410mm、最小(縮みきった状態)で280mm 。これにより、フロントフォークのストローク長は130mmとなる

■リアサスペンション
一般走行では凹凸衝撃荷重や二人乗りでの荷重を吸収するために、バンプラバーの有効ストロークを多く設定していますので、サーキット走行ではバンプラバーストロークを積極的に使う必要はありません。逆にバンプラバーに当たった場合の荷重変化で操安が乱れる可能性がありますので、バンプラバーに当たらないように3mmから5mm程度の余裕を持ってセッティングして下さい。レース本番では、ラップタイムの向上及び混戦の中でのライディングとなることで、ストロークが増加する傾向にあります。

■フロントサスペンション
同じく内蔵されたオイルロックピースで全屈手前の吸収荷重を上げています。機能的には、全屈手前の20mmで効き始めます。バンプラバーとは異なり、オイルの流量抵抗を使っていますので、荷重の立ち上がりは若干穏やかでサーキット走行でも使用します。

残ストローク管理はオイルロックピースの作動範囲内に入っているか否かと、ストローク時の違和感の有無で判断します。オイルロックピース範囲のストロークを積極的に使うことは問題ありませんが、全屈しないように10mm前後の余裕を取ってください。

サスペンションのアッセンブリー( A S S Y ) 荷重について

アッセンブリー荷重とは、フロントサスペンション及びリアサスペンションのスプリング反力とエアー反力(油面)とロッド反力(ガス圧)を含めたアッセンブリー状態でのストロークによる荷重変化をいいます。

オイルレベルを変更した場合の特性は図のようにストロークの奥でグラフの傾きが変わっていきます。オイルレベルを変更する場合の例として、スプリングの感じはいいがストロークの奥で動きが止まってしまう→オイルレベルダウン、スプリングの感じはいいがストロークの最後でボトミングしてしまう→オイルレベルアップ、という対処方法があります。

■リアサスペンション
一般的な構造は、ダンパー本体は非分解タイプで、ダンパー内はサスペンションオイルで満たされた状態となっています。アッセブリーでの反力はスプリング反力とロッド反力がアッセンブリー荷重と覚えておいてください。したがって、スプリングレートやプリロード調整でセッティングはほぼ決まります。

■フロントサスペンション
フロントサスペンションも同じくスプリング反力とエアー反力があります。エアー反力は、サスペンションオイルの油面高さで変化し、フルストローク付近での荷重値が大きく変化します。荷重変化のイメージはグラフを参照してください。

フロントサスペンション推奨データ
推奨サスペンションオイル/ Honda ウルトラクッションオイル10W
推奨油面高さ/150o(オイル量331cc)
油面高さ調整範囲/130mm〜250mm
※注意:上記調整範囲を超えた場合、オイルロックや減衰機能変化が発生しますので絶対に超えない範囲で調整してください。『スプリングレート及びプリロード調整は、車体姿勢に影響』し『エアー反力(油面)調整は最大荷重付近のみ調整が可能』と覚えてください。

セッティングの参考例

それでは、具体例を挙げながら、セッティングの参考となるアドバイスをお伝えします。

@コーナリングの安定性やハンドリングは問題ないが、フルブレーキでフロントサスペンションがフルストロークし安定しない場合は、サスペンションオイルで油面の高さを上げる(オイル量を増やす)方向で対応します。

A同じくコーナリングの安定性やハンドリングは問題ないのに、フルブレーキでフロントサスペンションが入らず(突っ張った感覚)、うまくコーナーに進入できない場合は、サスペンションオイルの油面を下げる(オイルを抜く)方向で対応します。

注意点は、必ずサスペンションの残ストロークを確認し、判断をすることと、油面高さでの荷重変化がフルストローク付近で大きく変化することを理解し、細かくセッティングするようにしてください。

ブレーキングでのサスペンションストロークは、走行するサーキット(走行スピード、コースレイアウト、路面状況)により大きく変わります。通常走行しているサーキットをベースにセッティングし、ベースを確認しておくことで、遠征などで走るサーキットに合わせて油面高さを調整することができ、早期のセッティングが可能となります。サーキット違いでのセッティング傾向は左記となります。

@ショートサーキットからロングサーキット
傾向としては、ブレーキングでの荷重移動が増加しますので、スプリングレート及び油面を上げる方向でセッティングします。
Aロングサーキットからショートサーキット
@とは逆の傾向となりますので、スプリングレートや油面を下げる方向でセッティングします。

リアサスペンションは荷重移動の影響が少ないことから共用可能と思います。

次回は、タイヤのウォームアップについてとライディングについて解説します。