CBR250R セッティング解説

第4回

第4回は車体及びセッティングの基本的知識についてお話しいたします。

皆さんもよく聞く『止まる、曲がる、走る』は4輪車、2輪車を問わず基本的な性能要素となります。
・止まる:制動性能(ブレーキ)。走行する車両のスピードをコントロールし、停止することができなければ安全な走行はできません。
・曲がる:運動性能(操縦安定性)。走行する車両を安定させてコーナーを曲がることができなければ、サーキットを周回することができません。
・走る:動力性能(エンジン出力)。車両を移動させる力です。より多くの出力を得ることで、速く走行することができます。

モーターサイクルなど、2輪車が『曲がる』ためには、乗り手である人の操縦(ライディング)が必要で、このライディング感覚がモーターサイクルの魅力でもあります。

仮に、乗り手である人が操縦しなかったらモーターサイクルは倒れてしまいます。2輪車の操縦性、安定性にかかわるキャスター角、トレール量、ホイールベース、重量分布(ヨー、ロール、ピッチの慣性力)などは、基本車両をCBR250Rに限定していますので割愛させていただきます。

車体の基本

車体(スイングアーム含め)での可動部分はヘッドパイプ(前輪の操舵)と、スイングアームピボット(後輪ストローク)の2カ所だけです(スロットル、レバー類、ペダル類は除きます)。

この2カ所の可動部が正常に機能しない場合は、運動性能に大きく影響することを理解してください。

それでは、なぜ2輪車がまっすぐ走れるのでしょうか。実は2輪車は、左右に揺れながら直進しています。皆さんも2輪車を極低速で走行したり、自転車のこぎ出しでハンドルを左右に振ってバランスを取っています。これは速度の上昇と共に安定し、体感的には感じることはありませんが、極微小な舵角バランスで直進しているのです。

ヘッドパイプのベアリング(ステアリングステム)がスムーズに作動しない場合、舵角バランスが乱れ、直進性やコーナー立ち上がりの車体復元性が悪化します。
※ヘッドパイプ及びステアリングステムのベアリング管理と、締め付けトルクの厳守を徹底してください。

  • 01. フロントステアリングステムの構成パーツ。
  • 02. ステアリングヘッドパイプ部の構成パーツ。
  • 03. ロックナットアジャストナット、ロックワッシャーと接触してから90°以内でロックナットを増し締めして、ロックナット溝部をロックワッシャーのタブに合わせる。
ヘッドパイプとスイングアームピボットの管理

■ヘッドパイプの管理

各部ナットの締め付けトルク
@アジャストナット 29N・m
Aロックナットアジャストナット、ロックワッシャーと接触してから90°以内でロックナットを増し締めして、ロックナット溝部をロックワッシャーのタブに合わせる。
Bステムナット 103N・m

締め付けなどが適正でない場合、以下のような症状が現れます。
@締め付け過剰(オーバートルク)の場合・走り出しで左右に蛇行し、バランスが取れない(速度が増すと分からなくなる)。
・複合コーナーの切り返しが重く、軽快性が悪化する。
・コーナー立ち上がりで車両が起きてこない(復元性悪化)。
※特にタイヤが滑りやすいウエット路面では、滑り出しでの舵角バランスが反応できないため転倒に注意。
A締め付け不足の場合
・走行中に小さい振動(軽振動)が継続して止まらない。
・前後の軽い荷重移動でフロント回りからガタ、ショックが発生する。
Bステムベアリングの傷、打痕による作動不良の場合
・オーバートルクや長期間使用した場合、また転倒などでダメージを受けた場合にアウターレース、インナーレースの打痕こんやボール自体の変形が発生する場合があります。フロントタイヤを浮かせ、左右にゆっくり動かしてスムーズに作動するか確認してください。
注意:確認の際はステアリングダンパーを必ず外して確認すること。

■スイングアームピボット管理

2輪車(自転車を除く)は後輪で得られた推進力がスイングアームを介して伝達し、ピボットを押して前進します。従ってスイングアームとフレームが結合するピボットは、スイングアームの作動性以上に結合剛性が重要な管理ポイントとなります。

ピボットシャフトの締め付けトルク88N・m
※スイングアームピボットシャフト締め付けトルク管理を徹底してください。指定トルクで締め付け走行し、基本レベルを確認してからトルクの±10%以内で下記を確認してください。

@締め付けトルクが高い方向
・結合剛性が十分に確保された状態で必要以上のトルクアップは不要です。トルクアップをトライして高速コーナーの安定性や車体のしっかり感(剛性変化)を感じたら、その締め付けトルクで管理してください。ただし、さらに高いトルクで締め上げることは決してやらないように注意してください。
A締め付けトルクを低くする方向
・低速でコーナーのRが小さいサーキットを走行する場合は、結合剛性を下げることで旋回しやすい特性が得られます。また、体重の軽いライダーも同様の特性が得られますのでトライしてみてください。結果、変わらない場合は指定トルクに戻すこと。さらに締め付けトルクを落とさないように注意してください。
※上記指定締め付けトルクの範囲を外れた場合は、ねじ部のかじりや折損、あるいはナットの脱落が発生する可能性がありますので十分注意願います。

サスペンションのセッティング

CBR250Rドリームカップでは、フロント、リアサスペンション共に変更することができませんので、サスペンションの機能とちょっとしたアドバイスを説明します。

〈サスペンション機能〉
サスペンションは走行中に発生する荷重変化と、路面から受ける衝撃荷重を吸収安定させる機能を有しています。

・荷重変化とは
ブレーキングでのフロントに移る重量や加速でリアへ移る重量で、慣性力の移動とコーナリング(旋回)での遠心力になります。

MotoGPなどの高性能クラスではブレーキ、加速共に1Gを超える重量変化が発生していますが、CBR250Rクラスではタイヤのグリップ限界、ブレーキ性能、動力性能から、レーシング走行でも1Gを超えることはありません。したがって、サスペンショング)が必要で、このライディング感覚がモーターサイクルの魅力でもあります。

仮に、乗り手である人が操縦しなかったらモーターサイクルは倒れてしまいます。2輪車の操縦性、安定性にかかわるキャスター角、トレール量、ホイールベース、重量分布(ヨー、ロール、ピッチの慣性力)などは、基本車両をCBR250Rに限定していますので割愛させていただきます。

車体の基本
車体(スイングアーム含め)での可動部分はヘッドパイプ(前輪の操舵)と、スイングアームピボット(後輪ストローク)の2カ所だけです(スロットル、レバー類、ペダル類は除きます)。 この2カ所の可動部が正常に機能しない場ンに求められる性能も違ってくることを理解してください。

・スプリング(荷重吸収)
スプリングは収縮することで荷重を吸収し、荷重が安定すれば収縮も安定してうまくバランスが取れます。路面の衝撃荷重や速い荷重変化では、オーバーストローク(反力)で収縮が安定せず動き続けます。

・ダンパー(減衰)
スプリングと併用されるダンパーは、内蔵されたオイル(液体)の移動(流路抵抗)により得られた減衰力で、スプリング収縮スピードをコントロールし、スプリング反力を抑えて安定させる機能です。
●スプリングの機能とは:走行時の荷重変化を吸収して車体姿勢をコントロールする。
●ダンパーの機能とは:荷重変化のスピードをコントロールする。
と、覚えてください。

サスペンションのセッティングアドバイス

CBR250Rドリームカップではサスペンション変更はできませんので、リアサスペンションのスプリングレートとイニシャル調整について説明します。フロントのスプリングレート、イニシャルはリアサスペンションと重複するダンパー調整について説明します。

■リアサスペンション
スプリングは交換可能です。スプリングレートの選択、イニシャル調整及び車高調整も若干ですが可能です。スプリングレート変更は、収縮する荷重の変化ですので、上のグラフのように傾斜が変わります。イニシャル調整はスライド移動となり、使用するストロークの範囲が変わると理解してください。調整の目安は走行記録の残ストロークです。

同時に、走行中の車体姿勢も変化しますので、走行フィーリングがスプリングレート、イニシャル調整なのか車体の姿勢変化なのか把握できるようにします。走行後は必ず残ストロークを確認し、記録するようにしてください。

・車高調整
スプリングのスプリングレート及びイニシャル調整で車体姿勢が変化します。走行記録用紙に項目がありませんが、スプリング変更前に現状の1Gストロークを計測してください。1Gとは、リアサスペンションが全伸び状態から車体重量で沈んだときのストロークです。1Gストロークの補正はレギュレーション『7‐3‐4‐3 サスペンション上部のフレームとの取り付け部に、シムを追加して車高調整することが認められる。(シム厚、5o以内)』で、調整幅が限定されますが可能です。リンクレシオは約2倍となりますので、シム厚1mmで車高は2mm変化します。

・フロントサスペンション
ダンパー内部の部品変更、加工はレギュレーションで禁止されています。しかしサスペンションのオイルを変更する
ことで、減衰力(特性)のセッティングができますのでトライしてみてください。
※注意点:オイル粘度の違いで減衰力の差異が得られますが、リバウンド及びコンプレッションの両方で変化しますのでバランスに注意してください。

次回、第5回『車体編U』でセッティングの方向性について詳しくお話します。