第1回のテクニカルインフォメーションでは、走行記録表を記入することをお願いしました。今回は、走行データを記録する必要性と活用方法についてお知らせするとともに、雨の多い季節ですので、雨天走行の注意点と走行後の車両メンテナンスについてお話しします。
サーキットをより速く走行するためには、ライダー自身の好みにセットアップすることが重要です。CBR250Rドリームカップは、改造範囲が規制されていますのでセッティング範囲も限定されます。この限定された範囲でも、走行記録を残して次の練習走行やレースに生かすことが、タイム短縮につながり、ライディング技術の向上になることを理解してください。
今回は走行記録表で重要な項目を説明します。走行記録をつけることで、サーキットサービスでの相談にも活用でき、アドバイスにも役立ちます。第1回で走行管理表の見本を掲載しています。この走行管理表はA4サイズで制作してあるのでコピーして利用してください。下記に各項目ごとにどんなことを記入するといいのかを説明してありますので、参照してください。
【気象条件】
外気温度、気圧、湿度は、エンジンの性能やタイヤの性能に大きく影響します。一般的に内燃機関の空熱比(空気と燃料の混合比)は14・7:1が最適燃焼比と言われ、空気の密度により燃焼状態が変化することを理解してください。
この空気密度は、気温、気圧で変化しますので、微小な燃料の噴射量や点火時期の調整が必要となります。CBR250RはFIシステムに補正機能が装備されていますので、走行するための支障となることはありません。
ただし、サーキットでよりベストなセッティングをトライする場合は、オプションのFIセッティングツールで噴射量、点火時期を細かくセッティングすることで燃焼状態をベストにすることができます。
【サスペンション】
ライダー自身の体重、走行スピード、走行するサーキットにより、サスペンションの働きが大きく変わります。走行ごとにセッティングオーダーを記録することで、走行するサーキットのベースオーダーを把握できるようにしましょう。
走行後の残ストローク管理は、スプリングレートの選択やイニシャル調整の基準となります。必ず毎走行後にチェックし、記録してください。
セッティングの方向性などの詳細は別途【車体・タイヤ編】でお話しいたします。
【ファイナルレシオ】
CBR250Rドリームカップではミッションレシオを変更することができません。したがって、走行するサーキットのストレートやコーナーに合わせることができるのはファイナルレシオの選択だけです。必ず走行時のドライブスプロケットとドリブンスプロケットの丁数を記入し、次回走行の参考としてください。
また、ショートサーキットを走行する場合に2速から5速で走行するか、3速から6速で走行するかで、走り方やラップタイムが変わりますのでトライしてみてください。参考になると思います。 例:ファイナル14/38(2・714)で2速から5速(1・115)で走行していた場合、3速から6速(0・962)を使う場合のファイナルレシオは、14/44(3・143)でトップスピードが同レベルになります。
【タイヤ】
唯一路面と接触しているのはタイヤだけです。エンジンのパワーやブレーキングの制動力を伝えたり、コーナーを曲がる旋回力を路面に伝えるのはタイヤになります。したがって、タイヤパフォーマンスがサーキット走行でのタイムに大きく影響することは皆さん理解していると思います。
タイヤの特性、特徴を少し理解することでサーキット走行でのタイヤパフォーマンスをうまく使うことができます。CBR250Rドリームカップは使用タイヤが限定されていますので、タイヤのエアー圧調整が可能です(ただし、メーカー指定の空気圧基準から大きく変更しないこと)。
・空気圧を下げる方向(基準空気圧から20kpaが目安):テクニカルなコースレイアウトで低速サーキット。
旋回加重が低く、ブレーキ制動力が必要な場合に有効です。また、体重の軽いライダーにも適します。
・空気圧を上げる方向(基準空気圧から20kpaが目安):ストレートスピードが重視される高速サーキット。
トップスピードには、タイヤの転がり抵抗が大きく影響します。少しでも転がり抵抗を減らすために空気圧を上げることが有効になります。ただし、ブレーキの制動力やタイヤの吸収性悪化を招く恐れがあるので注意しましょう。
タイヤ特性の詳細は別途【車体・タイヤ編】でお話しします。
【ラップタイム】
ラップタイム計測は走行しているライダーの状況をピットで計測し、アクシデントなどの異常を確認する上で重要な役割でした。近年はタイム計測器を車体に装着して、走行しながらライダー自身が確認する、単なる走行レベルの確認となっているのが現状です。メカニックがいないなどの状況もあると思いますが、計測器のメモリーなどで確認し、記録するようにしてください。
レースは1ラップの競技ではありません。スタートからゴールまでがレースですのでアベレージ(平均)タイムが勝敗に大きく影響します。練習走行でのタイムの詰まり方やベストタイムの出るタイミング(3ラップ目、4ラップ目など)を把握してレースでの作戦に役立ててください。
【走行距離】
製造メーカーとして、大変重要な管理項目です。各部品の点検時期、交換時期はすべて走行距離で設定し、マニュアルなどに明記しています。したがって、車両管理には大変重要ですので、必ず走行距離を記録するようにしましょう。
雨天走行の注意点と整備について梅雨のシーズンで雨天走行が多いことと思いますが、雨の走行(ウエット条件)での注意点をお話しします。
サーキット走行時は、低速コーナーとシケインなどの切り替えしがミスしやすいので注意しましょう。雨の量などの路面状況で異なりますが、中・高速コーナーはタイヤに掛かる荷重が高く安定していますのでコントロールができますが、荷重の低い低速コーナーや荷重変化の大きい切り返しは滑り始めたら止まらないことを覚えておいてください。以下、雨天走行の際の三つの注意点です。
@ブレーキフルード交換とブレーキキャリパー洗浄を行なう ブレーキフルードは吸水性が高いことが特徴です。雨天走行で水分を含んだ場合、ブレーキレバーの引き代(フィーリング)が変化します。特にブレーキを多用するサーキットでは高温状態となり、変化が大きくなるので注意してください。また、ブレーキパッドの磨耗粉がブレーキキャリパーのピストン部に付着すると、ピストンの作動に影響しブレーキの引きずりやブレーキレバーの引き代変化の原因になるので洗浄することを推奨します。洗浄の際には、ガソリンや洗浄液などの揮発性の高いもので洗浄しないこと。石鹸水などでブレーキパッドを取り外し、ピストン周辺の磨耗分を洗い流してください。
Aドライブチェーンの給油または交換 ドライブチェーンの固着は、駆動系の大きなフリクションとなりエンジン性能をスポイルします。雨天走行により潤滑油が洗い流された状態で放置して、再使用しないように注意してください。
Bヘルメットシールドの曇り注意 雨天走行では、ヘルメットシールドが曇りやすくなります。走行前に曇り止めを塗って対応されているかと思いますが、ライダー自身が注意することは、ヘルメットを着用する前に頭毛を濡らさないようにすること。頭毛が濡れた状態でヘルメットを装着すると体温の上昇でシールドが曇ります。
以上、次回はエンジン性能についてお話しします。
ドライでもウエットでも、タイヤの空気圧管理は重要です。冷間、温間共に空気圧を計測し、記録を残しておくことで、その後の走行に役立てることができます
ブレーキの整備は安全上も速く走るためにも重要です。特に梅雨時で雨天走行の後は、ブレーキフルードとキャリパーのチェックを欠かさず行なうようにしましょう
ファイナルレシオは重要なセッティング要素。必ずデータとして記録しましょう。雨天走行後はチェーンの潤滑油が洗い流された状態で放置しないようにしましょう