MONSTER ENERGY AMA SUPERCROSSの第10戦は、3月12日(土)に前戦フロリダから一気に北に会場を移し、国境を超えたカナダのオンタリオ州トロントにあるロジャース・センターで開催されました。会場は世界初の可動式屋根付きスタジアムで、AMAスーパークロスシリーズの中で唯一、アメリカ本土を離れて行われる大会となります。この大会でTeam Honda HRCのコール・シーリーは、手堅い走りをみせ、表彰台にこそあと一歩届かなかったものの4位入賞を果たしました。またチームメートのトレイ・カナードは7位でフィニッシュし、チームにとって手応えのある内容のレースになりました。
シーズン中唯一、国外でのレースとなるカナダラウンド。Team Honda HRCは今回ホスピタリティトラックは本国に残し、テクニカルトラックのみでカナダとの国境を通過し、会場に入りました。結果として現場での作業を含め、チームと2人のライダーは、1つの場所で行動を共にすることができました。また、今回パドックは一般に開放されず、シーリーとカナードは、ほかのトップライダーたちとともにロジャース・センタースタジアム内の広場で、VIPチケットを購入したファンに対してサイン会を行いました。わずか30分という短い時間でしたが、2人は約200名の熱烈なサポーターと交流することができました。
日中行われたタイムアタック予選で猛烈な走りを披露したカナードは、ただ一人54秒を切る53秒917を記録。今シーズン2度目となるトップタイムをマークしました。シーリーが記録したタイムは54秒587で全体の6番手、GEICO Hondaのジャスティン・ボーグルは55秒727で12番手に付けました。
予選ヒートレース。1組目に出走したシーリーは、オープニングラップ6番手から終盤にチャド・リード(ヤマハ)をパスして1つ順位を上げ、5番手でフィニッシュ。4番手以内がファイナルに直接進出となるため、シーリーはセミファイナルを経由することになりました。シーリーは、セミファイナル2組目のスタートからリードを保ち、トップでチェッカーを受けて、無事ファイナルに進出を果たしました。一方、ヒートレースで好スタートを決めて、1周目にトップで戻ってきたボーグルは、序盤1つ順位を下げたものの、このポジションをキープし、2番手でファイナル進出を果たしました。また、ヒートレースの2組目に出場したカナードは、こちらも好スタートを決め、オープニングラップをトップでクリアすると、1度もトップを譲ることなくフィニッシュし、2番グリッドからのファイナル進出を果たしました。
迎えたファイナル決勝レース。スタートゲートが倒れると同時に飛び出したシーリーは、CRF450Rとともに果敢な走りをみせて、まず4番手のポジションを確保しました。3周目、1つ順位を落としたシーリーは、レース後半まで5番手のポジションをキープ。迎えた16周目、イーライ・トーマック(カワサキ)に追い付いたシーリーは、これをパスして再び順位を4番手に上げると、このポジションを守ってチェッカーフラッグを受けました。一方カナードも好スタートを決めてレースを開始しましたが、オープニングラップのリズムセクションで転倒に巻き込まれ大きく後退。オープニングラップを14番手で戻ってきたカナードは、前半7番手まで順位をばん回しましたが、後半で上位との差を詰めることができず、7位でフィニッシュ。ボーグルは、オープニングラップのアクシデントによりリタイアとなりました。
なお、イースト地区3戦目となった250SXでは、RSR Starr Cycle Hondaのジェシー・ウェントランドが5位、GEICO Hondaのマルコム・スチュワートが6位入賞を果たしています。
今シーズンのスケジュールでは、ここまで一度も週末に休みを取ることができていません。ライダーたちは週末のレースにピークを合わせるために、トレーニングと休息のバランスを取ることに専念してきました。それでもシーリーは、過酷な予定に対して常に前向きです。現在の状況をシーリーは「確かに異常かもしれませんが、自分は開幕前の6週間しかスーパークロスコースでの練習ができませんでした。だから、まだ準備期間でもあります。昨年の今頃はトレーニングのペースを落とそうなんて考えもしませんでした。それでも1週間の間に体力が尽きるようなことはなかったです。でも今回はちょっと違っています。ここ2週間ほど、ウエイトトレーニングをしたり、自転車をこいだりして、かなり追い込みました。1週間の中でどうバランスをとるかは判断が難しいですが、メンタル面も含めて、全体的に昨年よりもずっと充実できていると思っています」と説明しました。
今週は、第11戦デトロイトに向けて準備を進めることになります。ホンダレッドライダーたちは、金曜日の夕方6時から7時半までサウスゲート(Genthe)ホンダでのイベントに出席します。
FOCUS :「Race Day Schedule」
450SXのメインレース開始まで、ライダーたちは毎回さまざまな準備をしなければなりません。レース当日は、通常10時半から行われるコースの下見に間に合うように会場入りします。トラックウォークの後にはライダーズミーティングがあります。その後、再びコースに戻ってレースに備えますが、時にはチャペルサービスに参加することもあります。準備体操やストレッチをしてからライダーはコースインし、練習走行を開始します。タイムアタック予選を含めた3回のセッションの間にライダーは、チームとともにマシンのセットアップを進め、ビデオでラインをチェックするなど最も大事な仕事をこなします。最初のタイムアタック予選が終了すると、ファイナルレースのため、トラックに向うまでの空き時間にカナードとシーリーは30分ほどサイン会などファンサービスを行います。
オープニングセレモニーが始まるまでの時間をどう過ごすかは、ライダーによって異なります。夕食の後ひと眠りするライダーもいれば、チームとの打ち合わせをするライダーやレースモードに切り換えるために音楽を聴くライダーもいます。いざ本番になると、彼らは再びギアを上げてスタジアムの中に移動します。レースとレースのインターバルのルーチンもライダーにより異なります。練習のときと同じようにビデオチェックに時間を費やし、メインイベントに向って万全の準備を進めます。基本的なスケジュールはどの大会もほぼ同じですが、場合によっては練習の前や後、インターバルに面会があったり挨拶したり、インタビューを受けたりすることも珍しくありません。
コール・シーリー(4位)
「予選はみんなダンゴ状態で、6位だったけど、悪くはなかったと思います。ヒートレースではスタートで出遅れてしまい、7番手くらいだったと思います。直接メインに進めるポジションまであと少しだったけど、残念ながら届きませんでした。セミファイナルを経由すると、どうしてもスタートグリッドが悪くなってしまうから避けたいですね。でも考えようによってはいいラインを見つけ出すことができるし、決勝前にコースがどう変わるか確認できるから、悪いことばかりじゃないです。決勝では外から2番目のゲートで、よくはなかったけど、なんとかなると思っていました。ゲートが倒れると同時にダッシュして、早めにシフトアップ。それがうまくいってスタートで前に出れたし、4番手に食い込めました。全体としてはいい感じで走れたと思います。序盤少し力みすぎてミスもあったけど、気合を入れて前を追いました。マービン・ムスキャンに抜かれたあと、終盤で抜き返して4位になれたのはよかったと思います」
トレイ・カナード(7位)
「全体的によかったと思ってます。予選でトップタイムをマークできたのも大きな収穫でした。ヒートレースでもいいスタートが切れて勝つことができました。決勝もスタートはよかったです。でも最初のリズムセクションで混戦に巻き込まれ、後方から追い上げるのは、今シーズンの課題でもあるのですがかなりきつかったです。でも、思った以上にしっかり走れたし、さらにいい結果を目標とすることが大事だと思います」
ダン・ベトリー | Team Honda HRC監督
「全体として力強さを感じた一日でした。予選は本当によかったですね。トレイがトップで、コールも6番手まで上がってくれました。特にトイレはヒートレース、決勝とスタートを決めてくれました。メインレースでは1周目にほかのライダーと絡んで残念なことになってしまったが、調子が上向きであることが確認できました。今夜はとにかく表彰台を取り戻したかったです。決勝レースでは望み通りというわけにはいきませんでしたが、2人ともいいライディングをみせてくれたし、確実にフィニッシュしてくれました。カギとなる部分を改善できて、この流れを維持すればさらによくなっていくと思います」
リッチ・シモンズ | コール・シーリー担当メカニック
「コールとってはいい一日だったと思います。我々は今回フープスに合わせてフロント、リアともにサスペンションに若干の調整を施しました。やや動きが固く跳ねる感じだったのです。でも調整がうまくいって、彼も気に入ってくれました。ヒートレースではスタートが決まらなかったものの、メインではうまくスタートして上位につけることができました。前半の4〜5周は力が入りすぎていたように思います。それで何度もミスをしてしまっていました。その後持ち直してペースもよくなり、イーライ(トーマック)に追い付けると思いました。結果4位に上がれて、本当によかったと思います」
ブレント・プレスネル | トレイ・カナード担当メカニック
「取り組みが間違ってなかったことが今日のレースではっきりしました。予選は最高でした。今日のトレイは本当によく乗れていたと思います。ヒートレースもスタートが決まって、ライアン・ダンジーとマービン・ムスキャンを相手に勝つことができました。これはすごいことだと思います。メインレースもスタートは悪くなかったのですが、レースにはありがちな混戦に巻き込まれてしまいました。そこからしっかりと持ち直して、最後にジャスティン・ブレイトンに追い付けると思ったんですが、時間切れで抜くことはできませんでした」
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム/差 |
---|---|---|---|---|
1 | 94 | K.ロクスン | スズキ | 18'32.119 |
2 | 25 | M.ムスキャン | KTM | +03.401 |
3 | 1 | R.ダンジー | KTM | +07.706 |
4 | 14 | コール・シーリー | ![]() | +15.036 |
5 | 3 | E.トーマック | カワサキ | +17.484 |
6 | 10 | J.ブレイトン | KTM | +18.080 |
7 | 41 | トレイ・カナード | ![]() | +19.441 |
8 | 28 | W.パイク | ヤマハ | +32.231 |
9 | 21 | J.アンダーソン | ハスクバーナ | +35.968 |
10 | 12 | J.ワイマー | スズキ | +37.122 |
12 | 55 | ビンス・フリージー | ![]() | +1Lap |
13 | 800 | マイク・アレッシ | ![]() | +1Lap |
17 | 761 | ケイド・クレイソン | ![]() | +2Laps |
21 | 19 | ジャスティン・ボーグル | ![]() | DNS |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 1 | R.ダンジー | KTM | 233 |
- | 2 | 94 | K.ロクスン | スズキ | 199 |
- | 3 | 21 | J.アンダーソン | ハスクバーナ | 175 |
▲ | 4 | 3 | E.トーマック | カワサキ | 170 |
▼ | 5 | 14 | コール・シーリー | Honda | 163 |
▲ | 6 | 25 | M.ムスキャン | KTM | 156 |
▼ | 7 | 22 | C.リード | ヤマハ | 142 |
▲ | 8 | 10 | J.ブレイトン | KTM | 125 |
▼ | 9 | 18 | D.ミルサップス | KTM | 105 |
- | 10 | 12 | J.ワイマー | スズキ | 92 |
▲ | 11 | 41 | トレイ・カナード | Honda | 91 |
▲ | 14 | 800 | マイク・アレッシ | Honda | 61 |
- | 16 | 55 | ビンス・フリージー | Honda | 48 |
- | 17 | 19 | ジャスティン・ボーグル | Honda | 42 |
▼ | 32 | 761 | ケイド・クレイソン | Honda | 6 |
▼ | 35 | 11 | カイル・チゾム | Honda | 2 |
▼ | 37 | 314 | アレックス・レイ | Honda | 2 |
▼ | 38 | 722 | アダム・エンティクナップ | Honda | 1 |