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THE BIG CHALLENGE 松下信治 GP2参戦レポート

Vol.5 ロシア・バーレーン・アラブ首長国連邦

第9戦ロシア
波乱の展開のなか、レース1で10位、レース2で7位と連続入賞を果たす

GP2シリーズは終盤戦を迎え、第9戦はロシア・ソチでの戦いとなりました。ソチ・オートドロームは、冬季オリンピックのメイン会場周辺の一般道を一部使用したコースで、松下選手にとっては初めての挑戦となりました。フリー走行は10番手で終えましたが、予選はウエットコンディションとなり、アタックのタイミングがうまくいかずに12番手となりました。

10月10日(土)に行われたレース1では、スタート直後に多重クラッシュが発生し、赤旗中断となりました。コースサイドのバリア修復に時間を要し、日没時間が迫ったため、30周を予定していたレースは15周に短縮されて再開。スタート直後、このクラッシュを避けるため16番手までポジションを落とした松下選手でしたが、再開後はハイペースでポジションを上げます。9周目にタイヤ交換を行い、そこからさらにポジションを上げて10位でフィニッシュ。レースが15周に短縮されたため、松下選手の入賞ポイントは0.5となりました。

翌11日(日)に行われたレース2でも、スタート直後にアクシデントが発生。セーフティカーが導入されます。アクシデントを避け、ポジションをキープした松下選手は、3周目にレースが再開されると前車に迫り、オーバーテイクを重ねて順位を上げます。15周目に7番手に上がった松下選手は、その順位をキープし、21周のレースを終えました。

松下信治選手のコメント
「ソチのコースは好きな感じでしたが、予選では雨でコースインするタイミングが遅れ、満足のいくアタックができませんでした。レース1は、慎重にスタートしました。マシンの感じはよく、ペースもよかったので、前車をパスすることができました。レース2では自分のペースはよかったのですが、前車に抑え込まれてしまいました。もう少し前へ行けるくらいのペースだったので残念です。両レースで入賞は果たしましたが、満足のいくレースではありませんでした。ミスやトラブルを減らし、コンスタントに前にいること、同じようなペースを刻んでいくことが、まだ足りないと思います」

 

第10戦 バーレーン
レース1での自身最高位となる2位を獲得。レース2はアクシデントでリタイア

第10戦は中止となったドイツ戦の代替として、開幕戦と同じバーレーンを舞台に行われました。レースはWEC(世界耐久選手権)のサポートレースとなったため11月19日(木)に予選、20日(金)にレース1、21日(土)にレース2が行われました。開幕戦では予選2番手タイムを記録した松下選手でしたが、今回はタイムを伸ばすことができず予選8番手に終わります。

レース1で好スタートを決めた松下選手は2台をパス。その後も前車より速いペースで走り、6周目には4番手に浮上しました。前を走るライバルの背後に迫るも、タイヤを労わりながらの走行だったため、なかなかパスできない状態が続きました。そして18周目にようやくパスして3番手に上がります。20周目にタイヤ交換のためピットインした松下選手はポジションを落とし途中5番手に下がりますが、レース終盤には激しい争いを展開し、30周目に2番手となります。残り2周、そのポジションを守り切りチェッカーフラッグを受けました。

レース2では、7番手からスタート。松下選手は好ダッシュを決めましたが、直後の1コーナーで後続に追突されコースオフしてしまい、リタイアとなりました。

松下信治選手のコメント
「予選では攻めきれずにいいポジションが獲れなかったことが悔やまれます。開幕戦では2番手だったので残念な結果でした。レース1ではペースがよく、前半はタイヤを労わりアクシデントを避けながら走りましたが、問題なく前車を抜くことができました。後半にチャンスが来ることはわかっていたので、始めはタイヤをセーブしていました。2位はうれしいですが、やはり予選でいいポジションが獲れなかったために、優勝争いまでいけなかったことが反省です。レース2では、ちょっと甘く見ていた部分もありますが、自分自身はどうしようもない状況でしたし、レーシングアクシデントなので仕方ないと思います」

 

第11戦 アラブ首長国連邦
最終戦、レース1は11位に終わる。レース2はアクシデントで中止に

GP2最終戦は、ヤス・マリーナ・サーキットで行われました。11月27日(金)に行われたフリー走行では3番手に付けた松下選手ですが、予選ではクリアラップがうまくとれずにタイムを伸ばすことができませんでした。結局予選は9番手に終わり苦しい展開となりました。

28日(土)に行われたレース1では、スタートダッシュは決めたものの、その後のコーナーで後続に先行され、1周目は14番手までポジションを落とします。その後、スーパーソフトタイヤでスタートした上位陣が早めにピットインし、7周目には6番手に上がります。ソフトタイヤでスタートした松下選手はピットインのタイミングを伸ばし、23周目にスーパーソフトタイヤに交換。これにより順位は14番手となり、レース終盤の追い上げに入りました。しかし、タイヤが保たずにペースを上げることができず、11位でレースを終えています。

29日(日)に行われたレース2では、好スタートを決め、8番手までポジションアップ。そのまま第1コーナーへ入りましたが、その直後に多重クラッシュが発生し、マシンの撤去とバリアの修復に時間を要したため、レースはキャンセルされました。

松下信治選手のコメント
「予選はトラフィックにはまってしまい、思うような結果を残せませんでした。フリー走行から調子はよかったので、レースでは巻き返せると思いましたが、最初からタイヤのグリップがなく、ペースが上げられませんでした。タイヤ交換してからも数周でタレてしまい、追い上げることができませんでした。チームメートと比べると、走り方の違いがあり、それがタイヤのデグラデーションに影響があると思います。その違う走り方をレース2で試すつもりでいたので、レースがなくなってしまい残念です」

 

2015年シーズンを振り返って

GP2シリーズは全11大会21戦を終えました。松下選手はハンガリーのレース2で優勝、バーレーンのレース1で2位、オーストリアのレース2で3位を獲得し、シリーズランキング9位となりました。

松下信治選手のコメント
「すばらしいチームメートとともにレースができたことはいい経験でした。常に比べられ、レースでは勝ったこともありましたが、予選では一度も勝てなかったことが悔しいですね。また彼はフリー走行、予選、決勝のすべてにおいて上位にいますが、自分にはまだそのような強さが足りないと感じました。速さをみせることはできたし、自信はありますが、まだ結果にバラつきがあります。今年は、コースをよく知らないという面もありましたが、総合力がまだまだ足りないと思います。ここで戦っているドライバーのレベルは間違いなく高いので、その中で勝つためにはもっと力をつけないといけないですね。勝つためにやっているし、負けるとは思っていないですが、もっと練習し、レベルを上げていきたいと思います。GP2はフリー走行の時間が短く、予選ではいきなりコンパウンドの違うタイヤでアタックしなければいけない難しさがあります。イメージを高めてタイムをポンと出す直感みたいなものも必要で、そういうところのレベルも上げなければいけません。来季もう一度チャレンジできるとしたら、それが可能だと思います。また今年経験したこと、例えばコースはほとんどわかりましたから、それを生かせば今年に比べてだいぶいい状況になると思います。来季チャレンジできれば、もちろんチャンピオンを狙ってがんばります。チームメートがいいデータを残してくれていますし、総合力の高いチームなのでいいドライバーが乗れば勝てる体制です。自分がいいドライバーになって、勝つしかないと思っています」

鈴木亜久里アドバイザーのコメント
「初めてのコースも多かったし、いいときと悪いときのムラがあったが、1年目としてはいいレースができたし、いい経験もできただろうから合格点をあげられると思います。結果もそこそこ出せましたが、それ以上に彼自身が1年間で経験したことの収穫は大きかったでしょう。今年は勉強の年で、それを来年どう生かせるかがポイント。このカテゴリーは何年もやるカテゴリーじゃないので、来年はとにかくいけるところまでいくしかない。それでどこまでいけるか、それが彼のポテンシャルということです。GP2というのはF1に上がるための階段だから、1年目に勉強して、2年目に結果を出して終わりにしないといけないですね。松下選手はすごく真面目だし、勝ちたいという気持ちも強いし、向上心がすごくあるので、来年はいいレースができるだろうし、しなければいけないと思います」

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