驚きと楽しみ、そして充足感に満ちた海外生活
バクー(アゼルバイジャン)は昨年も最初から速く、個人的にも自信を持って走れるサーキットの一つでした。フリー走行は最初のラップからトップタイムだったし、乗っていても楽しかったです。残念ながら、1周目のアタックを終えた時点でリアタイヤに亀裂が入り、プラクティスは1周しかできませんでしたが、1周目にいいコンフィデンス(信頼)を感じられたので、予選に向けてはそんなにナーバスではなかったです。
予選は最後の5分までトップでした。ポールを狙っていましたが、ルクレア選手にすべてのストレートでスリップを使われてしまい、2番手でしたね。終わったあとにGPSデータで比べたら、長い2つのストレートでかなりのタイムを削られていたのが分かりました。ただ、コーナーでは僕が一番速かったので、レースに向けての自信はありました。でも悔しさはありましたね! 次のサーキットでリベンジしますよ。
レース1はスタートでクラッチがうまく作動せずに後方に落ちました。実は今回はスペアのクラッチを使っていて、僕のお気に入りのクラッチはメンテナンスに出ていたので少し予期できないことが起こってしまいました。
それ以外は特に問題はなかったですが、4番手だった中盤のターン1で、ブレーキをがんばって抜こうとしたときに、リアロックを起こしてコントロールを失い、コースアウトになってしまいました。これがすべてでした。
正直、凹みましたが、今はもう吹っきれています。
悔しい思いをしたアゼルバイジャン。次はリベンジします!
次はオーストリア。初めてのサーキットで予選2番手で表彰台という、思い出のある場所ですし、チームが速い車を持っているので狙うは優勝です。苦手なサーキットは特にないですが、チーム的に毎年苦しんでいるのはオーストリアの次のシルバーストーンですね。ある意味正念場です。今年は大きく変えて挑むので、それが活きるのを望んでいます。
筋トレはもちろん、いろんなスポーツで肉体強化
ここ最近、実はほとんどモナコにいるので、パリには戻れてないんです。モナコではトレーニング合宿をメインに行っています。水泳やパドル、自転車、ボクシング、山登り、ジム。トレーニングオプションがすごく多いので退屈しません。モナコはすばらしいところですね。
綺麗な海と山に囲まれて、そこで毎日、トレーニングとしていろんなスポーツをしています。友だちのクルーザーでちょっと走って、人の少ないところで泳いだり、ランチしたりするのが、なんだか映画みたいな感じで楽しかったです(笑)。
思いっきり遊んでリフレッシュするのも大切なんです(笑)
あと、土地柄なのか超美人が多いですね。僕が行くジムの女性たちはとんでもない美人なので、僕はしっかり集中していますが、僕のトレーナーが僕に集中せずに目移りしていることがたまにあります(笑)。
しっかりトレーニングしたあとはイタリアに行って海鮮を食べたりと、都会よりも自然と一緒にトレーニングできるのでとても新鮮です。
世界に名だたるグッドウッドでは最高の経験ができました
僕はイギリスのマクラーレンのテストドライバーなので、かなり頻繁にロンドンへ行きます。個人的な意見ですが、イギリスの街はフランスよりすべてが綺麗なように思います。日本に近い感覚ですかね。なのでイギリスはすごく好きです。
グッドウッド※1は僕が行った車のイベントの中でダントツに一番楽しいイベントですね。F1カー、歴史的なレースカーや世界中のスーパーカーばかりが集まって、お客さんの数もものすごいですし。僕はアイルトン・セナが乗ってたMP4/6(McLaren Honda MP4/6)を運転しました。
セナが乗ったMP4/6をドライブして気合充電!
僕が生まれる前の車ですけど、ものすごく運転しやすいです。V12エンジンでとにかく音がでかいです。耳栓をしてるのに結構うるさいので、外で見ている人はたいへんでしょうね(笑)
この車のシフトはHパターン式なので、鈴鹿レーシングスクールを思い出しましたね(笑)。僕はパドルシフトより好きです。この当時はシフト操作のうまい下手が顕著に出たんだと思います。ドライバーの腕が今以上に出やすい時代だったことが分かりますよね。
すごい楽しい2日間でした。リラックスもできたし、セナのソウルを感じられたので、この先のレースではガンガン行きますよ😏
グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード
福江 剛司 | FIA F2・GP3 Commentator

シリーズは4戦8レースが終了しました。松下選手はこの時点でランキング6位。3位との差は26ポイントとなり、目標のランキング3位以内は少し遠くなってしまいました。第2戦スペイン、第3戦モナコと調子を取り戻したように見え、勢いも感じただけに、第4戦アゼルバイジャンでの戦いはとても悔しいものだったと思います。
昨年悔しい思いをしたレースでリベンジを果たし、大切なヨーロッパラウンドに向けてさらに流れをつかむチャンスだと、周りも期待していただけに残念でした。予選2番手、フロントローからのスタートと、速さをしっかり見せてくれただけに、レース1での0ポイントは、松下選手自身も想定外だったことでしょう。ランキングを考えると、当然ですが、上位の選手による接近したポイント獲得合戦になっていますから、だれかが取りこぼせば直接のライバルにポイントを奪われ、ランキングは大きく変動します。松下選手にとってはランキングを落としてしまった点でも痛いレースでした。
いよいよシーズンはその舞台をヨーロッパへ移し、夏休み前の3戦がランキングの行方を占う佳境に入ります。オーストリア、イギリス、ハンガリーでいい流れをつかみ、しっかりポイントを重ねることが、目標達成の絶対条件になるでしょう。この3戦でランキング3位、もしくは3位に僅差まで到達してほしいところです。速さは十分にある松下選手ですから、流れを取り戻して勢いに乗れば、そう難しい課題ではないと思います。この3戦は目が離せない、F1への試金石となると感じています。
<7月9日 オーストリア決勝レース後のコメント>
松下選手のオーストリアでの戦いは、レース1が6位、レース2は14位に終わりました。予選は好調で、ミスが出たものの6番手。レース1では後半の追い上げができずに6位でしたが、ファステストラップをマークしました。しかし、レース2では、3番手からスタートで大きく出遅れ、1コーナーで後続に追突されて大きくポジションダウン。その際にタイヤにダメージがあり、追い上げは叶わず14位の0ポイントに終わってしまいました。いつものように随所に速さはみせたものの、予想外に残念な結果です。特にレース2では、ランキングを争う直接のライバルが上位を占めていました。
ランキングは、レース1終了に5位に上がりましたが、レース2終了時には6位に戻り、3位との差は37ポイントと広がっています。これ以上、ランキング上位と離されては、目標の3位以内は相当に厳しくなってしまいます。ここからは正念場、夏休み前のイギリス、ハンガリーの2戦で、ランキング3位以内を射程圏内に入れる好結果を期待したいと思います。
<7月16日 イギリス決勝レース後のコメント>
正念場だったイギリスですが、松下選手にとって厳しい結果となりました。シルバーストーンはART Grand Prixが得意としていないサーキットで、マシンの速さが足りなかったのが一番の原因だと思います。予選8番手は厳しいながらもがんばった結果でした。レース1では好スタートを決め、ポジションを5番手まで上げましたが、最初にハード目のタイヤで出た戦略が決まらず、終盤のタイヤ交換後にポジションをダウン。ファステストラップをマークしてポイントをかせぎましたが、10位に終わりました。レース2は8位で1ポイントを得ましたが、ポイントランキングにおけるライバルが上位を占めたため、ランキングでのポジションは7位にダウンし、目標である3位との差は51に開いてしまいました。次戦ハンガリーは松下選手もチームも得意とするサーキットです。厳しい状況を跳ね返す、好走と好結果を見せてほしいと思います。
<7月30日 ハンガリー決勝レース後のコメント>
ハンガリーは松下選手が得意とするコースで、さらに「今回はとても大事なレース」という意気込みでしたが、フリー走行、予選とマシンに速さが足りないようで、思ったようにタイムが伸びませんでした。予選は8番手でしたが、レース1ではペナルティーやトラブルを抱えるマシンが出て、結果的に7番手からスタート。スタート時に装着したソフトタイヤでは調子があまりよくなかったようですが、中盤から後半はペースがよく、5位でフィニッシュしてレース2へ望みをつなぎました。4番手スタートのレース2、松下選手はすばらしいスタートで一気にトップに立ち、後続を引き離すペースで走りきり優勝を果たしました。とても力強い勝ち方でした。この2レースで25ポイントを獲得し、目標のランキング3位との差は32と、前戦を終えた時点から19も縮めることができたのです。本人も「首の皮一枚つながった」と語るように、残り4戦8レースに目標達成の可能性を残す、土壇場での見事な勝利でした。そしてハンガリー後の水曜日、松下選手はF1のテストに参加。ザウバーのマシンで初のF1マシンのドライブを行います。「多くを学び、多くを吸収したい」と前向きな姿勢で臨むこのテストの成果が、シーズン後半に表れてくれることを期待します」