8月27日〜28日、岡山県・岡山国際サーキットで、2011年度全日本F3選手権シリーズの第5イベント(第10戦及び第11戦)が開催されました。HFDP(Honda Formula Dream Project)からは、F3参加2シーズン目となる三浦和樹、F3初年度の野尻智紀の計2名が参加しました。
岡山国際サーキットは、2人の選手にとってなじみの薄いコースで、三浦は昨年F3で初めて走り、野尻はF4でレースに参加した経験はあるものの、F3で走るのは今回が初めて。金曜日の練習走行には大事な意味がありました。天気予報では雨が予想されておりコンディションが心配でしたが、雨は降らず、晴れ間が見えるドライコンディションで2回のフリー走行セッションが行われました。野尻は快調にタイムを縮め、最終的にはNクラスの最速タイムを記録し、三浦も4番手タイムを記録して走行を終えました。
土曜日、朝から快晴となった空の下で公式予選が行われました。野尻は快調にタイムを縮め、前日よりも2番手を引き離す好タイムを記録、第10戦、第11戦ともにポールポジションを獲得しました。一方、三浦はセクタータイムでは速いものの1周のラップタイムをまとめるのに苦慮し、2戦ともNクラス最後尾の6番手に終わってしまいました。
土曜日の午後、第10戦の決勝レースが行われました。午前中の予選はドライコンディションのまま終わりましたが、午後になって急激に天候が悪化、激しい雨が降り出してコースは完全にウエットコンディションになってしまいました。F3が決勝レースのためにコースインする頃には雨は止んでいたものの、コースはまだ濡れており、前回のレースに続きタイヤ選択が難しい状況となりました。ここでチームは、野尻にはドライコンディション用のスリックタイヤを装着、グリッド最後尾の三浦にはウエットコンディション用のレインタイヤを装着する作戦をとることにしました。
スタート合図とともに野尻、三浦は好加速を見せ、野尻はNクラス先頭のまま、三浦は前に並んでいた2車をイン側からかわして第1コーナーへ飛び込みました。三浦はさらに1台を抜いてNクラス4番手へ進出。しかし1周目にコース2カ所でアクシデントが発生したためセーフティカーがコースイン、レースは仕切り直しとなりました。
3周目を終えた段階でセーフティカーが退き、再スタートが切られました。野尻はNクラス先頭で第1コーナーへ進入しましたが、後方から野尻のイン側へ進入しようとする選手がコーナーを曲がりきれず、野尻に追突する形で接触が起きました。野尻のマシンの右後輪に相手選手の左前輪が触れ、相手選手はスピンしましたが野尻はマシンの姿勢を維持してポジションを守りレースを続行しました。チームはこの接触でホイールが変形しタイヤのエアが抜ける可能性があると心配しましたが、野尻はペースを落とすことなく先頭を走り続けました。
路面は乾きだしてはいたもののまだ濡れているため、レインタイヤを装着した三浦のペースはよく、三浦はさらに前を行く選手を追い抜いてNクラス3番手へ順位を上げ、さらにNクラス2番手の選手に迫ります。Nクラス先頭の野尻はスリックタイヤ、2番手の選手と三浦はレインタイヤを装着しており、三浦は野尻に続く2番手へ順位を上げようと1秒を切る間隔で激しく2番手の選手を攻めました。
しかし10周目を迎える頃から路面が乾きだしてレインタイヤには厳しいコンディションになり、三浦の後方からはスリックタイヤを装着した選手が逆にペースを上げて迫り始めました。10周目、三浦はスリックタイヤを装着した後方集団に追いつかれてNクラス3番手のポジションを譲りNクラス5番手へ後退しました。あえてペースの大きく異なるスリックタイヤ勢とは争わず、前を行く同じレインタイヤを履いた選手との戦いに集中するためでした。一方、野尻は乾いた路面でさらにペースを上げ、2番手の選手を大きく引き離してNクラス独走の状況へ持ち込みました。
チームは、ポール・トゥ・フィニッシュに加えファステストラップポイントを獲得しようと野尻に「ファステストラップを狙え」と指示を出し、野尻はそれを受けてペースを上げました。その結果、最終ラップにNクラスのファステストラップを記録してNクラスのトップ、総合でも3位でフィニッシュし、今季3回目のNクラス完全優勝を遂げました。三浦はNクラス5番手でチェッカーフラッグを受けました。
日曜日は朝から快晴となりました。全車とも迷うことなくドライタイヤを装着してスターティンググリッドに整列、スタートを待ちました。ところが、フォーメーションラップが始まる際、三浦のマシンのスターターがトラブルを起こしてエンジンがかからず、三浦はピットへ押し戻され、ピットスタートをすることとなりました。
三浦を除く競技車両がスターティンググリッドにつき、レースはスタートしました。しかし今度は野尻がクラッチミートに失敗、エンジンをストールさせて出遅れ、ポールポジションから最後尾へと順位を落としてしまいました。三浦はその野尻の後方からピットスタート、レースを始めました。野尻はすぐに前方を行く選手に追いつきましたが、前方は集団で走行しており、容易には前へ抜け出せない状況に陥りました。野尻は前を行く選手に接近しながら追い抜くには至らず苦しいレースを強いられ、そのままレースを終えました。しかしながら選手権ポイントでは首位を守り、シリーズチャンピオンへ一歩近づくこととなりました。
一方、大きく遅れて最後尾で単独走行を始めた三浦のペースはよく、Nクラス最速のペースでラップを重ね、野尻との間隔を縮めていきました。しかしながらピットスタートでの遅れは大きく、最終的に追いつくには至らず最後尾でフィニッシュしました。しかし、三浦はこのレースでのNクラスのファステストラップを記録、選手権ポイントを加えました。
三浦和樹
予選 | 決勝 | |
---|---|---|
Rd.10 | 6番手 | 5位 |
Rd.11 | 6番手 | 6位 |
ポイントランキング6位(Nクラス シリーズ第11戦終了時点) |
野尻智紀
予選 | 決勝 | |
---|---|---|
Rd.10 | 1番手 | 優勝 |
Rd.11 | 1番手 | 5位 |
ポイントランキング1位(Nクラス シリーズ第11戦終了時点) |
三浦和樹 「予選は、自分の責任であのような結果になってしまいました。各セクターを分割して見るといいタイムが出ているのですが、それを1周にまとめることができませんでした。突っ込みすぎていると指摘をいただいたので、それを意識して決勝レースを迎えました。第10戦はレインタイヤでスタートしたので、路面が濡れているうちに前へ出ようと考え、うまくいきました。もしセーフティカーが入らなければ、路面が乾く前にもっと前へ出てマージンを稼げたと思うのですが、終盤は苦しくなって、同じレインタイヤを履いている選手を意識してレースを組み立てました。第11戦では、ピットスタートになってしまった結果、単独走行になってペースが上がりました。ピットから「ペースがいいのでこのままいけ」と指示をもらいましたし、自分でもベストを尽くしてプッシュしました。レース結果こそ残念ですが、夏場のレースでファステストラップを記録できたので、自信がつきました。過信してはいけないけど、それをポジティブに考えて鈴鹿に行きます」
野尻智紀 「ここのところ内容がよくないレースが続いていたので、自分でよく考え直しアドバイスももらって気持ちを切り替えて走り出しました。チームも、非常にいいクルマに仕上げて持って来てくれました。それが予選の2連続ポールポジションにつながったのだと思います。第10戦の決勝は、スリックタイヤでなければ勝てないレースだと思っていました。序盤、レインタイヤの選手に迫られましたが、その後すぐに引き離すことができました。終盤、2番手の選手に間隔を縮められたのが反省点です。でも最終ラップには狙っていたファステストラップを記録できたので、その点はよかったと思います。第11戦はクラッチミートで失敗してエンジンをストールさせてしまいました。後ろから追い上げようと思ったのですが、前に集団がいたため追い抜きができませんでした。第10戦の結果を見ても、第11戦の三浦のペースを見ても、クルマがすばらしい状況にあることは確認できたと思います。チャンピオンを取るため、1週間後の鈴鹿でいい結果を出します」