VOL1

操る喜びを追求して、2010年開幕
開幕イベントから表彰台へ

フォーミュラ・ニッポン(第1戦 鈴鹿サーキット)

昨年、新しいシャシー、新しいエンジンを導入した全日本フォーミュラ・ニッポンが、4月17日、鈴鹿サーキットで開幕した。HFDPは、昨年に引き続き、塚越広大を戦線に送り込んだ。

ドライコンディションで行われたノックダウン方式の公式予選で、Q1を5番手で通過した。最高速ではライバル選手を5km/h以上も上回る俊足を見せる。続くQ2は狙い定めたようにアンドレ・ロッテラーに続く2番手で通過。最終的に上位スターティンググリッドを決めるQ3セッションでは塚越は最後にコースイン、タイムアタックに入った。

  • ポールを取る勢いの走りは実らずポールを取る勢いの走りは実らず

小暮卓史選手(NAKAJIMA RACING)がコースレコードを上回るタイムを記録する中、アタックに入った塚越は、小暮選手を上回るほどに驚異的なスピードでセクター1、セクター2を突進した。しかし突然駆動系にトラブルが発生して失速、130R手前コース脇に車両を停止させた。その直後、タイムアタック中だった他選手がコースオフしたため赤旗でセッションは中断され、結果はそのままになってしまった。

  • 決勝スタート前のチーム首脳決勝スタート前のチーム首脳

日曜日の決勝レースも晴天の下で行われた。規定により塚越は6番手からのスタートである。スタートで前にいた山本尚貴(NAKAJIMA RACING)をかわして塚越は5番手でレースを始めた。

先頭はジャン・パオロ・オリベイラ。以降、小暮卓史、伊沢拓也、アンドレ・ロッテラー、塚越と続き塚越の背後にはロイック・デュバルがついて、6台の先頭集団を形作る。

予選同様、最高速の伸びる塚越は徐々にロッテラーに近づき、伊沢、ロッテラー、塚越が3位争い集団を形成した。7周目のシケインではロッテラーがシケインでオーバーラン、塚越は直後に迫ったが順位を入れ替えることはできず。その後徐々に再びロッテラーに引き離される。実はこの頃から変速系に不調が生じていたのだ。

  • ライバルを圧倒する最高速を見せた走りライバルを圧倒する最高速を見せた走り

13周目に入ると変速系はとうとう6速からシフトダウンが出来ない状況に陥り、塚越は大きくペースダウン。コックピットの中で電気系をリセットするなどの対策を2周にわたって試みる間、順位は落ちていった。塚越の対策がみのって変速系は復活し、マシンが元の調子を取り戻したところで予定のピットイン、タイヤ交換、ガス補給をしただけでコースへ復帰した。

復帰後はトップ争いをするライバルに遜色ないラップタイムを刻み続けるが、ペースダウンで受けたハンディは重く、20周目に前を行く石浦宏明(Team LeMans)をかわして9番手、28周目に井出有治(MOTUL TEAM無限)をかわして8番手へ上がったが、追い上げはそこまでで、37周のレースは終わった。

リザルト

塚越広大

  予選 決勝
Rd.16番手8位
  ポイントランキング8位
  • 塚越広大塚越広大
コメント

塚越広大 「決勝ではギヤがダウンしなくなってしまったんです。少し前からその兆候はあったんですが、あの2周は全く動かなくなった。クルマは調子良かったし、予選からトラブルなどが起きなければ良いところまでいけたと思います。それだけクルマは良位ことが確認できて、戦えるという自信が付きましたから、今回の結果で落胆せず自信を持って、次のツインリンクもてぎのレースに行こうと思います。いろいろやって、最後にリセットをかけたら元に戻ったのでレースが続けられました。調子良かっただけに、こういうこともあるね、と思うようにします。ぼくらのチームも、実力があると自信はつけたので、これを克服して戦っていけば結果はついてくると思うので、めげずに前向きに頑張っていきたいと思います」

田中弘監督 「(燃料を積んで)重いときのクルマの動きをうまくコントロールしきれない。そのときに返してくるインフォメーションによってセッティングを換えてしまって、後でよくないことが起きている形跡もあります。これはドライバーが学ぶしか、しかたのないことですね。もし予選が正常に終わって、フロントローからスタートしていれば、また本人の気持ちも変わって違ったレース展開になったかもしれないしね」

全日本F3選手権Nクラス

4月17日(土)〜18日(日)、鈴鹿サーキットで2010 全日本F3選手権シリーズの第1大会が開催された。HFDP RACINGの7号車を駆るのは、昨季のフォーミュラチャレンジ・ジャパン(FCJ)シリーズでチャンピオンを獲得した三浦和樹。そして同8号車を駆るのは、昨季に引き続いて全日本F3のナショナル(N)クラスに参戦する小林崇志。小林は本大会で2連勝、三浦もF3デビュー戦で3位表彰台に立った。

  • 小林と三浦が立つ開幕戦の表彰台小林と三浦が立つ開幕戦の表彰台

大会に先立つ16日には曇天のもとでF3の占有走行が行われたものの、セッション開始直後からあいにく雨が降り始めた。3月末に富士スピードウェイで行われた合同テストも大雨に見舞われており、F3ルーキーの三浦はドライコンディションでの走行が不十分というハンディを背負って週末を迎えた。

そのドライコンディションで迎えた土曜日の予選で、小林は第1戦でクラストップ、総合でもCクラスの選手に割って入る5番手と健闘を見せ、第2戦でもクラストップに就けた。一方の三浦は第1戦でクラス3番手、第2戦でクラス4番手に就けた。

土曜日の午後4時前に始まった第1戦の決勝(12周)では、クラストップの小林がスタートで出遅れ、クラス2番手の選手の先行を許した。しかし、タイヤの温まっていない難しい状況の中でも小林は果敢に攻め立て、1周目の130Rコーナーでクラストップを早くも奪還した。一方、三浦はクラス3番手を維持したまま1周目を終え、F3デビュー戦のスタートを無難にまとめた。

  • 初優勝に向かう小林初優勝に向かう小林

小林の快進撃はその後も続き、車両性能で上回るCクラスの選手に食らいつく走りを見せてF3初優勝を飾った。三浦は最後尾から追い上げてきたCクラスの選手との併走で不運にもタイムを失う場面こそあったものの、2番手の選手を終始視界に収めながらの走行で3位表彰台に立った。

  • 初優勝の祝福を監督に受ける小林初優勝の祝福を監督に受ける小林

翌日曜日の午前10時前に始まった第2戦の決勝(17周)では、クラストップの小林が完璧なスタートで順位を維持したまま第1コーナーへ飛び込んでいった。しかし、三浦はスターティンググリッドでエンジンストール、なかなか再スタートできずに最後尾まで順位を落としてしまった。

  • デビューを冷静に終えた三浦デビューを冷静に終えた三浦

1周目を終えた小林は、2周目の第1コーナー進入で2番手の選手に背後へ迫られる場面もあったが、堂々とした走りで危なげなくそれを押さえ込んだ。その後、周回毎にジリジリと後続を引き離した小林は、最後は2位に7秒弱の差をつけて連勝を達成した。最後尾まで落ちた三浦は、トップから30秒以上の遅れというハンディを抱えながらも力の限りの走りを披露した。先行する選手との大きなギャップをジリジリと削り取り、前を行く選手を1台また1台と捕らえ、最終的には8位まで挽回した。

リザルト

小林崇志

 予選決勝
Rd.11番手(Nクラス)優勝
Rd.21番手(Nクラス)優勝
 ポイントランキング1位

三浦和樹

 予選決勝
Rd.13番手(Nクラス)3位
Rd.24番手(Nクラス)8位
 ポイントランキング4位
コメント

小林崇志 「チームがいいクルマを作ってくれていたので、予選では2戦連続のポールポジションを取れました。第1戦でスタートがうまくいかずに順位を落としてしまいましたが、クルマの調子がいいことは分かっていましたので、実際に130Rコーナーですぐにトップを取り戻せました。その後もいいペースで走れましたし、スタートを除けばいいレースだったと思います。第2戦は抜群のスタートを切れました。一度もトップを譲らなかっただけでなく、ファステストラップも取れました。週末を通じていいレースができたと思います。でも、攻めきれていない部分もありましたし、ミスも少なくありませんでした。状況に合わせた運転ができないこともありましたから、決して課題がないわけではありません。また、シーズンの頭で連勝を飾ったとはいっても満足はしていません。シーズンはまだ長いので、今後も一戦一戦、しっかり戦ってチャンピオンを取りたいと思います」

  • 小林崇志小林崇志

三浦和樹 「初めてのF3のレースでしたが、昨年まで参戦していたFCJと大きく違うのはクルマのダウンフォースから来るコーナリングスピードの高さで、クルマの限界付近では自分自身まだ対応が不十分だと正直思いました。安定して同じようなラップタイムは出せますけれど、出せるタイムの次元がまだ低いと思います。今後はロガーデータなどを見て修正したいと思いました。第1戦ではトップから大きく離されてしまったので、次は1周目からもう少しいいペースで走れるようにしたいと思います。第2戦のスタートでのエンジンストールは、路面温度の変化にきちんと自分を修正していなかったことが大きな原因だと思います。最後尾になって大きく遅れてからは頭を切り替え、最後の最後までファステストラップを取ろうと考えて走り続けました。せっかくいいクルマをチームで用意してもらったのに、自分のミスで水の泡にしてしまったのは申し訳なく思っています」

  • 三浦和樹三浦和樹

英国F3(第1ラウンド オールトンパーク)

4月3日、5日、2010年のイギリスF3選手権第1戦がオールトンパークで開催された。今シーズンより、イギリスF3にはレース運営に新しいフォーマットが採用され、全10ラウンド・30レースの長い戦いが繰り広げられることになる。

  • 今年もイギリスで戦う中嶋今年もイギリスで戦う中嶋

新しいフォーマットの基本形は(オールトンパークではエンジンノイズの規制のため2日間開催となり基本と異なる)金曜日は午前午後ともフリー走行、土曜日は午前中に30分間の公式予選、午後は30分間、もしくはそれに準じた周回数による第1レース、日曜日は午前中に20分間、もしくはそれに準じた周回数による第2レース、午後に40分間、もしくはそれに準じた周回数による第3レースが行われるというもの。

スターティンググリッドの決め方も独特で、公式予選のベストタイムが第3レースのスターティンググリッドを決定し、ベストタイムの次に良いセカンドベストタイムが第1レースのスターティンググリッドを決定することになっている。

最も特徴的なのは、第2レースのグリッド決定方法で、第1レースの優勝者が行うくじ引きにより決まる変則リバースグリッドとなる。具体的には、第1レースの優勝者が6位から10位までの順位が書いてあるくじを引き、その結果によって第2レースにおける自分のグリッドを決める。そして、優勝者のグリッドより上が第1レース結果に基づくリバースグリッドとなるのだ。

例えば、優勝者が6位のグリッドを引いた場合には第1レースの上位6人のドライバーによるリバースグリッドとなり、優勝者が10位のグリッドを引いた場合には第1レースの上位10人のドライバーによるリバースグリッドとなる。これは、F3ユーロシリーズでたびたび見られていたリバースグリッドのポールポジション狙いという消極的なレースを防ぐ意味で、とても画期的なルールである。

シリーズポイントについては、第1レースと第3レースでは1位から10位までのドライバーにそれぞれ20・15・12・10・8・6・4・3・2・1ポイントが付与され、第2レースでは1位から10位までのドライバーにそれぞれ10・9・8・7・6・5・4・3・2・1ポイントが付与される。

公式予選は、ウェット路面が乾いてドライ路面へ変化していくという不安定な路面コンディションで行われた。ドライ路面ではトップクラスと遜色のないタイムで走れた中嶋だが、部分的に水が残っていたコーナーで後れを取り、自分では納得のいくラップタイムにまとめることができなかった。結果はベストラップ9位、セカンドベストラップ8位に終わった。

春らしい暖かな日差しの下で第1レースは行われた。8番グリッドから良いスタートを決めた中嶋は、1コーナーまでに2つ順位を上げることに成功する。その後も最後まで集中力を切らさず果敢に攻めて前を走る車のミスを誘ったが、残念ながらこれ以上ポジションを上げることは叶わず、19周のレースを6位でフィニッシュした。このレースの優勝者のひいたくじの結果、リバースグリッド規定により中嶋は第2レースを2番グリッドからスタートすることとなった。

イースターホリデーに伴って日曜日は休息日となり、変則的に第2レースと第3レースは月曜日に行われた。日曜日深夜から月曜日の朝方まで降り続けた雨の影響でハーフウェットのコンディションとなる中、グリッド上の全車がスリックタイヤを選択し第2レースに臨んだ。ホームストレート上にはまだ完全に湿っている状況であったが、スタートで鋭い出足を見せた中嶋は1コーナーまでに首位を奪う。

  • 先頭で1コーナーへ飛び込む中嶋先頭で1コーナーへ飛び込む中嶋

しかし、先頭を走る車にとってコンディションの把握が極めて難しい状況の中で、後続から激しいプッシュを受ける厳しい展開となる。そして4周目、1コーナーでポジションを守るためブロックラインを取った中嶋はコーナー出口で僅かに水の残る部分を踏んでしまってスピードを僅かに失い、続く2コーナーまでの間にR・スヴェンセン・クックに首位を奪われてしまった。しかし、中嶋は諦めることなく懸命に反撃のチャンスを窺う。

路面のコンディションが急速に回復し始めた6周目頃から、時には1周あたりトップよりもコンマ8秒近く速いラップタイムを記録しながら追い上げ、幾度となくトップのすぐ背後まで迫った。しかし、すでに完全なドライコンディションと化していたサーキットにオーバーテイクのチャンスを見出すことは出来ず、自己最高位タイとなる2位でチェッカー旗を受けた。

  • 開幕イベントで表彰台に上がった中嶋開幕イベントで表彰台に上がった中嶋

月曜日午後に行われた第3レースも、完全なドライコンディションで行われた。40分の長丁場となるこのレース、中嶋は土曜日に行われた公式予選の結果により9番手グリッドからスタートする。8番手グリッドの選手がスタート前にリタイヤした事によって、まずは労せず8位へ。さらに1コーナーまでの間に上位を狙うが、ここでは行き場がなく一旦様子を窺う。しかし続く2コーナーで大外にラインを見出した中嶋は一気にオーバーテイクを仕掛け、6位に順位を上げた。

さらに上位を狙ったが、高速コーナーでのバランスに問題を抱えていた中嶋はこの後ペースを上げる事が出来ず我慢の展開を強いられる。5周目にはこのレースに新品タイヤを温存していたJ・カラードにオーバーテイクを許し、7位となる。レース後半に向けてタイヤを労わりながら安定したペースで走行していた中嶋であったが、これ以上順位の変動はなく、26周のレースを7位で終えた。

リザルト

中嶋大祐

 予選決勝
Rd.18番手6位
Rd.22番手2位
Rd.39番手7位
 ポイントランキング5位
  • 中嶋大祐中嶋大祐
コメント

中嶋大祐 「第2レースでは、路面がまだ湿っている最初の数周でペースを上げられなかったことが敗因となりました。2位になってからのペースがとても良かった分、ポジションを守り切れなかった事が悔やまれます。予選もそうでしたが、路面が少しずつ乾いていく中でグリップの限界を掴むスピードをもう少し上げなければいけません。
 もちろん今ラウンドの結果は自分が期待していたものには程遠いですが、残念な結果に終わってしまった予選の後で気持ちをすぐに切り替える事が出来たのは良かったと思います。この気持ちの切り替えを昨年はなかなか上手く出来ず、悪い流れにはまってしまう事がしばしばありました。今年はレース数が増えただけではなく連戦も多いので、ポジティブな気持ちを保ってシーズンを戦う事が出来るように気を付けたいと思います」

フォーミュラチャレンジ・ジャパン

今回は該当レースはありません。