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Hondaの人材育成

マンスリーレポート 第5回
ロードレース世界選手権 250cc スーパーバイク世界選手権
MOTOGP 250CC ロードレース世界選手権 250cc
REPORT
Hondaの人材育成
- 高橋裕紀 -
 

鈴鹿8時間耐久レースに出場したため、ライバルたちに比べて短い夏休みを過ごした高橋裕紀(JiR Team Scot 250)は、第12戦チェコGP(第11戦アメリカGPはMotoGPクラスのみの開催となるため、250ccクラスは11戦目)の舞台となるブルノに元気な姿を見せた。デビューから3年、ブルノでは一度もチェッカーを受けたことがない。1年目は転倒、2年目はケガのために欠場、3年目はトラブルでリタイア。

とはいえ、高橋は「嫌いなサーキットではない。2年目にドイツで優勝したときも、ここのテストでいいセッティングと走りを見つけたから。どちらかといえば好きなコース。今年は、絶対にいいレースにしたい」と言う。

初日は、8耐で乗ったスーパーバイクから軽量コンパクトな250ccのバイクへの乗り換えに重点を置いた。午前中のフリー走行はドライ。午後の予選はセッション開始直後に雨になる。この日、高橋は、黙々と周回を重ねた。初日の予選順位は11番手。

「今日は250のバイクに体を慣らすのが大きな目的だった。それを果たすことができた。予選が雨になったことも僕にはラッキーだった。11番手だけど、2日目は、もう少しグリッドを上げたい」と好調をアピールした。

2日目は、フリー、予選ともにウエット。初日はスペックの違うスイングアームを試していたが、この日はスタンダードに戻し、調子を上げた。「今日もセッティングは順調に進んだ。雨の多い2日間だったが、8耐からの乗り換えを考えれば、よかったかもしれない」と8番手につけた。

決勝レースは青空が広がり、絶好のコンディションで行われた。予選2列目からスタートを切った高橋は、オープニングラップに他車と接触しそうになりオーバーランを喫する。そのために11番手までポジションを落とす苦しい展開となったが、冷静に、そして着実にペースを上げていった。4周目に2台をかわし9番手に浮上。5周目に8番手へ。6周目に7番手に浮上すると、前を走るマティア・パシーニ(アプリリア)とし烈な6位争いを繰り広げる。そして最終ラップにパシーニをかわすと6位でチェッカーを受けた。

GP参戦4年目にして初めてブルノでチェッカーを受けた。トップグループにはややリードを広げられたが、後半戦のスタートとしては、まずまずの結果だった。「今日はスタートがうまくいったが、ぶつかりそうになってポジションを落としてしまった。序盤の2、3周はなかなかペースを上げられなかったが、それからリズムを取り戻せた。とにかくミスをしないように集中して走った。リザルトは6位だけど、得るものは多かった。今回は天候が不安定で、ドライになった決勝はぶっつけ本番のセッティングだった。でも、3日間では一番よかった」と、いい状態にバイクを仕上げたスタッフに感謝していた。

鈴鹿8耐では3位を走行しながら、ペアを組んだジョナサン・レイが転倒してリタイアしたが、今年の鈴鹿8耐で、高橋は自身の成長を証明した。そして8耐で学んだことを、しっかりとGPに生かした。限られた時間で行うセットアップ、決断力、集中力。後半戦の活躍に期待が膨らんだ。

Hondaの人材育成
- 高橋裕紀 -
 

イタリアのアドリア海に面したミサノ・サーキットで開催される第13戦サンマリノGPは、高橋の所属する「JiR Team Scot 250」のホームグランプリとなる。高橋も、サーキットのあるミサノの隣町カトリカに住んでいるので、第2のホームグランプリとして重要なレースである。昨年、ミサノは14年ぶりにグランプリを開催し、チームにとっては初のホームグランプリとなったが高橋は9位に終わった。

レースを前にした高橋は、「今年は、リザルトに波はあるけれど、ここまではいい流れできている。初めてミサノを走った去年は、コースを攻略できないままレースを終えてしまった。今年はバイクのセットアップを早く決めていい走りをしたい。チームにも地元のファンにも喜んでもらえるような結果を残したい」と抱負を語った。

今年は、初日から順調だった。午前中のフリー走行では、エンジンの慣らし運転があったために11番手だったが、午後の予選では一気に5番手に浮上した。「走り出しから気持ちよく乗れている。予選ではセッティングの方向に失敗したが、そのお陰で方向性が見つかった。バタバタした一日だったが、それでも5番手だから悪くない。明日が楽しみ」と好調な滑り出しに笑みを浮かべていた。

昨年の大会は大雨に見舞われて、初日の走行がキャンセルされるなど、大荒れとなった。しかし今年は好天の中で開幕を迎えた。2日目も快晴。連日30℃を越える猛暑となり、タイヤはもちろん、体力的にも厳しい条件となった。

しかし、初日に快調なスタートを切った高橋は、2日目にはさらにペースを上げることに成功した。車体のセッティングを大幅に変更して安定性が出たことで、ベストタイムもアベレージも向上した。そして、予選のアタックではひとつポジションを上げて4番手へ上がり、昨年の最終戦バレンシアGP以来のフロントロー獲得となった。「今回は、いい流れでバイクのセットアップも進み、走ることに集中できている。今年になってベストグリッド。決勝は表彰台を目指したい」と、今季2回目の表彰台に向けて手ごたえをつかんだ高橋であった。

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- 高橋裕紀 -
 

決勝日も快晴、朝から30℃を超える猛暑となった。フロントロー4番手から好スタートを切った高橋は、ホールショットを奪う絶好のスタート。一周目に3番手へとポジションを落とすが、アルバロ・バウティスタ(アプリリア)、マルコ・シモンセリ(ジレラ)、エクトル・バルベラ(アプリリア)の4台でトップグループを形成した。

序盤、トップグループの先頭に立ったのはシモンセリ。以降バルベラ、高橋、バウティスタの順でレースは進んだ。中盤には、シモンセリとバルベラが厳しい戦いを繰り広げ、その間隙をぬって高橋が何度も首位に立つという壮絶な戦いとなった。

終盤、シモンセリとバルベラがコーナーの進入でクロス。ともにオーバーランしたことで、高橋とバウティスタが逃げ出す。そして、ストレートでのスピードに優るバウティスタが優勝、高橋は惜しくも2位、バルベラが3位でチェッカーを受けた。優勝こそ逃したが、チームの地元で念願の初表彰台に立ち、地元ファンも大喜びだった。

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- 表彰台の高橋 -
 

この日は、最高気温35℃という猛暑。「その暑さも感じる暇がなかった」というバトルを終えた高橋は、「厳しい戦いになると思っていたが、トップグループで戦えて嬉しい。今日は前に出てもすぐに抜かれる苦しい戦いだったので、タイヤには厳しいが、とにかく積極的に前に出ようと心がけた。前でシモンセリとバルベラがやりあっていたのでチャンスはあると思っていた。最後までミスをしないように集中した。第2戦スペインGP以来の表彰台。チームの地元でいいレースができて本当にうれしい」と、久しぶりの表彰台に、満面の笑みを浮かべていた。

Yuki Takahashi 高橋裕紀
 
Rd.12 予選:8番手 決勝:6位
Rd.13 予選:4番手 決勝:2位
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WORLD SUPERBIKE スーパーバイク世界選手権
REPORT
 

スーパーバイク世界選手権(WSB)第10戦イギリス大会は、清成龍一(Hannspree Ten Kate Honda)にとって記念すべき大会となった。予選では、フル参戦初のフロントロー獲得となる3番手。そして決勝では、第1レースで初優勝を達成、第2レースで2勝目を挙げる快進撃となった。

その1週間前には、鈴鹿8時間耐久レースで2度目の優勝を果たしていた。「次のレースのことを考えると100%喜べなかった。とにかく次のレースが終わるまでは……」と語っていただけに、最高の結果となった。

第10戦が行われたブランズハッチは、イギリススーパーバイク選手権(BSB)で4年間戦った清成にとって第2のホームコースといえる存在。WSB挑戦を開始して初めて迎える走り慣れたサーキットでの大会。続く第11戦も走り慣れたドニントンパークで行われる。清成の目標は、「ブランズハッチで表彰台に立ち、ドニントンで勝つ」というものだった。

その理由は、ブランズハッチはBSB時代に苦手としていたサーキットの1つだったからだ。ショートコースの「インディ」では何度も優勝してきたが、フルコースの「グランプリ」では、BSB初タイトルを獲得した2006年に優勝しているだけ。「8耐の後で、バイクの乗り換えにも苦労すると思っていた。しかも苦手なブランズハッチのフルコース。自分にとってはホームコースだけれど厳しいレースになると思っていた」。そんな予想を見事にくつがえす完全優勝だった。

Hondaの人材育成
- 清成龍一 -
 

ブランズハッチで清成は、初日のフリー走行開始から快調にラップを刻んだ。「走り出して5周目くらいにいいタイムが出せた」と、このセッションで2番手につける。そして午後の予選では、初の暫定ポールポジションを獲得。これで勢いに乗り、2日目2回目の予選でも、総合首位を走るトロイ・ベイリス(ドゥカティ)にわずか0.022秒差の2番手。予選は、トップから1秒差以内に15台という大接戦となったが、アベレージではベイリスをしのぐすばらしい走りだった。そして、上位16台で行われるスーパーポールでは、見事3番手につけて初のフロントローを獲得した。

迎えた決勝レース。「自分の走りができれば優勝も夢ではない」と清成は、WSBで初めて優勝候補の一角に挙げられてグリッドにつく。この日は、イギリス特有の、断続的に小雨が落ちる難しいコンディション。「緊張した」というレース1は、スタートに失敗して1周目7番手にポジションを落とすが、着実にポジションを上げて、ベイリスと芳賀紀行(ヤマハ)のトップグループを追撃。その後、芳賀が転倒して脱落したためベイリスとの一騎打ちに持ち込む。

「追いついてからは、最後の勝負のタイミングを待っていた」と、終盤にベイリスをかわして逃げ切った。続くレース2は、芳賀との一騎打ちとなった。この戦いでも清成の勢いは止まらず、中盤にトップに立つとそのまま2勝目を飾った。

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- 表彰台の清成 -
 

鈴鹿8時間耐久レースで勝ち、翌週のブランズハッチで2連勝。「8耐で勝って、ブランズハッチに乗り込んでレース1で勝ったときも、まだ次があると喜べなかった。でもレース2で勝てて、これでやっと喜べる」と、3つの優勝をまとめて喜んだ。

BSBで4年。そして今年はWSBルーキーとして、世界の舞台で戦っている。その間、Hondaのエース的存在として鈴鹿8時間耐久レースにも挑んできた。ハイペースをキープすることが要求される8耐に、誰にも負けないスピードと駆け引きが求められるWSBシリーズ戦。清成の成長は、この2つのレースを戦うことで高められてきたのかもしれない。「8耐とシリーズ戦。今年はタイヤも違うので、両方をこなすのは大変だったけれど、それだけにうれしい。応援してくれたみなさんに感謝したい」と喜びを語った。

Hondaの人材育成
- 青山周平 -
 

スーパーバイクのルーキー青山周平(Alto Evolution Honda Racing)にとって、サンマリノ大会の行われたミサノ、チェコ大会のブルノは、WGP250cc時代に経験しているサーキットだった。しかし、第10戦イギリス大会の行われるブランズハッチは、初めて経験するコース。しかも、シーズンを通じて難コースの1つといわれているだけに、ルーキーにとっては、厳しい戦いが待ち受けていた。

ここまで9戦を経験。CBR1000RRにも慣れたことで、初コース攻略もシーズン序盤ほどの戸惑いはない。しかし、これまで多くのルーキーを苦しめてきたブランズハッチ。青山も例外ではなかった。初日はコースを覚え、ギアのセッティングだけで走行時間が終わる。2日目になってタイムを上げるも、目標のスーパーポール進出はかなわず。「予想通り難しいサーキット。2日間だけではとても攻略できない。とにかく、1周でも多く走り込みたい」と決勝日朝のウオームアップまで走りこみに時間を割くほどだった。

その苦難は、リザルトが証明している。第10戦ブランズハッチ大会には、ワイルドカードを含めて31台が出場した。初日のフリー走行はトップから2.564秒遅れの25番手。午後の予選ではタイムを短縮、トップからのタイム差も2.362秒と縮めたが25番手は変わらず。2日目2回目の予選では、さらにタイムを短縮してトップから1.486秒差と詰めるも24番手。この大会はトップから1秒差以内に17台という大接戦となった。ルーキーがスーパーポール進出を果たすには、あまりにも高いハードルだった。

それでも、セッションをこなすごとにトップとの差を確実に縮める青山は、2日目の午後に行われたフリー走行では、23番手へとポジションを上げる。決勝日朝のウォームアップでは16番手。「この数戦、いいレースができていないので、何とかポイントを獲得したい」と決勝レースに意気込みを語った。

Hondaの人材育成
- 青山周平 -
 

しかし、そんな願いはかなわなかった。予選24番手。6列目からスタートを切った青山は、スタート直後に燃料系のトラブルが発生したため、3周目にピットに戻り、リタイアとなった。レース2も電気系のトラブルでペースが上がらない。それでも最後まで全力を尽くし22位でチェッカーを受けた。

CBR1000RRを走らせるライバルたちがトラブルもなく走りきっている。チーム力を問われる世界選手権。セットアップが進まない状況に青山は、フラストレーションをためる。しかし、「満足な状態で決勝レースを走れなかったが、ブランズハッチは面白いサーキットだった。こういうコースを気持ちよく乗れるようになりたい」と、気持ちを切り替え、次戦に向けての意気込みを語った。

Ryuichi Kiyonari 清成龍一
 
Rd.10 予選:3番手 Race1:優勝 Race2:優勝
Shuhei Aoyama 青山周平
 
Rd.10 予選:24番手 Race1:リタイア Race2:22位
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