山本にとってF3は1年目。開幕前テストで初めてのマシンを走らせて、彼は何を感じ取っただろう。
「F3は、乗ってみて非常におもしろいクルマだと思いましたね。当然、いいタイムを出したり勝ったりするためには非常に優れた能力が問われます。FCJに比べると限界点がはるかに高いところにあって、しかもその高い限界点でコントロールできる幅が非常に狭いんです。非常に繊細なドライビングが求められるのでちょっとしたミスも許されない。一瞬でも判断が遅れたら走行ラインが大きく変わってしまうし、タイムにも大きな影響を及ぼす。でも、それだけ細かいところで技術を問われるということについて、すごくワクワクするし興奮もします」
1年目とはいえ、山本に怖じける気配はない。
「F3の1年目ということになりますが、1年目だからといってこぢんまりまとめてしまうことなく、去年FCJで勝ったレースを思い出して、あのときのように思いきり力を出しきるようなレースをしたい。1年目ということを忘れて、まずは早く1勝できるようにしたい。シリーズチャンピオン獲得という大きな目標を持ってシーズンを迎えたいと思っています。とにかく思いきったレースをしたいですね」
山本はレーシングカートでイタリアシリーズや世界選手権を経験、鈴鹿レーシングスクール・フォーミュラ(SRS-F)、FCJと1年ずつ四輪の経験も積んだが、F3ではこれまでとは違い、チームとともに戦う本格的なレースの世界だ。
「F3は、もうプロの世界なので、クルマに乗っているときも下りているときも自分はプロなんだという意識を常に持って、自分を高めていきたいですね。しかもHondaの名前を背負って走ることになるのだから、とても厳しい環境になるというのも覚悟しています。でもそういうプレッシャーがなければ逆に気が緩んで学べるものも学べなくなることもあると思うので、この厳しい環境は絶対に自分にとってその分プラスに働くと思っています。厳しいとはわかっていることで、その中で少しでも学んで、さらにステップアップしていきたいなと思っています」
2月21日に行われたHondaモータースポーツ体制発表会の席に山本はHondaのドライバーのひとりとして加わった。その表情は喜びと誇りに満ちていた。
「これまでTVや雑誌やウェブサイトで見てきた発表会の壇上に、Hondaの白いパイロットシャツを着た自分がいるんだという、何ともいえない興奮と喜びを感じました。これはすごいことなんだなと思うと同時に、これまでの両親の支援や多くの方々の協力のおかげでここに立てているんだなと改めて責任も感じました。だからこそ、このチャンスを無駄にせずステップアップにつなげていきたい。今年もベストを尽くして全力で戦います」
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