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Hondaの人材育成

特集「それぞれ目指す新天地」
JAPAN FORMULA 3 全日本F3選手権
 

昨年、「Hondaフォーミュラ・ドリーム・プロジェクト」から全日本F3選手権を戦った塚越広大と伊沢拓也が今年は新天地へと旅立つこととなった。塚越の行き先はヨーロッパで開催されているF3シリーズ、ユーロF3、伊沢はSUPER GTとフォーミュラ・ニッポンである。

全日本F3
- 全日本F3 -
Koudai Tsukakoshi 塚越広大
 

塚越が所属するのはイギリスの強豪チーム、マノー・モータースポーツで、昨年末にマノーから塚越の名が2008年度の所属選手として発表された。昨年末、塚越はマカオGPに挑戦、総合2位という大戦果を挙げているが、その際にスポット契約を結んだチームがマノーである。

塚越は言う。「念願かなって海外でのレースができるようになりました。このような体制を作っていただいた方々に感謝しています。その期待に応えられるような、いいレースをしてきたいなと思っています」

昨年、塚越は全日本F3選手権で必ずしも思い通りの戦果を挙げることはできなかった。しかし、無駄に一年を過ごしたわけではない、と塚越は胸を張る。

「確かに去年の全日本F3選手権では、決して十分な結果を出すことはできませんでしたが、多くのことを学ぶことができて、レース結果には出てこない部分でいい経験をさせてもらったと思っています。それが、年末のマカオの結果につながったんだと思います」

「マカオは、走り始めからすごくよかった。前の年にもF3でマカオを走った経験もありましたから、そういうものも噛み合ってすごく順調にレースができた結果だと思います。でも、やっぱり日本で戦った経験だったり知識だったりというものが本当に生きたレースだったかなあと思いますね。去年は、僕にとって初めて伊沢選手という『チームメート』がいたシーズンだったんですよ。それまではひとりで戦っていたのですが、初めてフルシーズン、2人で戦ったら、お互い意識して切磋琢磨しあいながら一年を過ごせました。たとえば、データで比べると、伊沢選手のいいところと僕のいいところというのがあって、それがタイム差になったりするのがよくわかりましたから。例えば、鈴鹿でもS字とか、曲がりくねったところは僕の方がよかったり、セクター4のシケインの飛び込みとか、もてぎとか、そういうところは伊沢選手の方がよかったりという違いがあるんですよ。ある意味、ドライバーのタイプとしては極端に違っていたので、お互い、相手のいいところと弱点を勉強しあえた。レース結果だけを見ている人には、納得してもらえないシーズンだったかもしれませんが、そういう意味で僕たちには得るものが多いシーズンだったんです」

今年、塚越は、昨年チームメートとして戦った伊沢と別々の道へ進む。伊沢に対して思うことはあるのだろうか。

「伊沢選手とは、フォーミュラ・ドリームのときはお互いにライバルだったし、F3の1年目も別のチームでした。その相手と去年は1年間同じチームで戦うことになった。彼にはたくさん勉強をさせてもらったし、いつも意識していたし、僕にとっては大きな意味のあるシーズンでしたね。意識する相手ではあったけれど、いい関係でいられたし、友だちとしてもライバルとしても伊沢選手には活躍して欲しいなと思いますね。今年は僕は海外で、伊沢選手が国内で活躍できたらいいと思います」

塚越広大
- 塚越広大 -
 

こうして塚越はヨーロッパへ旅立つ。SRS-F、フォーミュラ・ドリーム、そして全日本F3選手権と着々と経験を積んだ期間を、塚越はどう振り返るだろうか。

「ここまで、結果的に順調に来たと思っています。全日本F3選手権でシリーズチャンピオンを取れなかったのは心残りですが、今は、ユーロF3でチャンピオンになって、より上のレベルへ勢いをつなげていきたいなと思っています」

規則によりユーロF3の本格テストはまだ始まっていない。今は、テスト解禁になる日を心待ちにする塚越だ。

「新しいクルマもシェイクダウンを1回しただけなので、まだなんとも言えませんが、自信はありますし、チームのスタッフもいい人たちなので、いい結果が出せるのではないかと期待はしています。チームには、年が明けてから2回ほど顔を出したのですが、いい雰囲気です。去年のマカオで2位に入ったときと同じエンジニアとメカニックが、今シーズン僕の担当になってくれるんですよ。マカオで2位になったということはやはり大きくて、チームとしてもその勢いで今シーズンいけるんじゃないかと期待してくれているみたいですし、それだけの力があるならチームも力を入れようと思ってくれているようです。本当にいい体制を準備してもらったので、あとは結果を出すだけなんですけどね。チームオーナーもエンジニアも、今年はきっといい結果を残せると自信を持っているようだったので、それに応えようと思っています。僕も『あいつのためにならもっとがんばってやろう』とチームの雰囲気が作れるように、ある意味チームをひっぱっていけるように心がけようと思っています」

塚越 全日本F3
- 塚越 全日本F3 -
Takuya Izawa 伊沢拓也
 

一方、SUPER GT GT500クラスとフォーミュラ・ニッポンに出場する伊沢は、ともにARTA(オートバックス・レーシング・チーム・アグリ)に所属する。昨年末、伊沢はルーキーテストの場でフォーミュラ・ニッポンの車両を経験し、ルーキーの中で好タイムを記録した一方、SUPER GTでは鈴鹿1000kmでチーム・リアルのサードドライバーに起用され、GT500クラスのNSXでこれもまた安定した走りで実戦体験をしている。

「去年末に行われたフォーミュラ・ニッポンのルーキーテストで初めて走ったのですが、タイム的にも手応えを感じているので、シーズンが始まるのが今はすごく楽しみです。まだ今年のクルマ(パドルシフト・システムが新たに装備された結果、大幅にタイムアップする)には乗ったことがないし、レギュラーのドライバーと同じ場で走ったこともないので、見えていない部分があるのも事実ですけど、去年つかんだよいイメージをそのまま持って、いいレースができればなと思っています」

伊沢にとって2年間経験した全日本F3選手権はどんな意味を持つのだろうか。

「去年、一昨年と全日本F3選手権を戦ったのですが、ここでいろいろなことを学んだからこそ、去年のSUPER GTの1000kmや、フォーミュラ・ニッポンのルーキーテストでいい結果が出たんだと思います。ただ、今年のSUPER GTでは、昨年のチャンピオンカーを示すカーナンバー1を付けて走ることになるのでプレッシャーも感じています。でもすでにセパン、鈴鹿と合同テストに参加してみて、タイム的にも手応えを感じているので、あとは決勝レース中にGT300クラスのクルマがからんできたときの対応に慣れれば、カーナンバー1に恥ずかしくないレースができるようになると思っています」

伊沢拓也
- 伊沢拓也 -
 

伊沢は、レーシングカート、F4、フォーミュラ・ルノー、フォーミュラ・ドリーム、F3とフォーミュラカーで育った。フォーミュラカーに慣れたドライバーにとってSUPER GTは慣れが必要なカテゴリーだといわれているが、伊沢はどう考えているのか。

「僕は去年初めてSUPER GTに乗るとき『フォーミュラカーではないクルマ』という先入観はなかったんです。それで乗ってみたら、フォーミュラカーに近い感覚で乗れるクルマでした。ほとんど違和感はありませんでしたね。重さもあまり感じなかったし、フォーミュラカーと同じ感覚で運転できました。「Hondaフォーミュラ・ドリーム・プロジェクト」として十勝24時間耐久レースにインテグラで出場したこともあったので、その経験も生きたような気がします。インテグラに比べたらGT500はロールも少ないですし、どっちに近いかといったらフォーミュラカーの方に近いクルマだと思います。日本でSUPER GTをやると、レーシングカーの開発という意味ではクルマに関してもタイヤに関しても、最先端の経験ができると思うんです。そこで、これまでよりもっといろんなことを勉強できると期待しています。その経験はフォーミュラ・ニッポンにも生きてくると思いますし、もしそのあと、ほかのカテゴリーへ進出したときにも絶対に役に立つだろうと思っています」

また、「Hondaフォーミュラ・ドリーム・プロジェクト」で過ごした4年間を、どう振り返るのだろうか。

「ヨーロッパから帰ってきてフォーミュラ・ドリームに参加して、そこからここまで来たわけですが、自分としては満足のいくような結果が出なかったという面もあるにはあるんです。でもこの4年間で自分がレーシングドライバーとして大きく成長したなという実感は確実にあります。それを評価してもらえたからこそ、今年はフォーミュラ・ニッポンとSUPER GTへの参戦が実現したんだと思います。フォーミュラ・ドリームからF3に上がったばかりのころ、自分の経験が足りなくてすぐに対応できなかったのは事実です。でも2年間で、ドライビングだけでなくクルマのことも含めて、いろんなことを身につけることができて、この2年間で大きく成長することができたと思っています」

伊沢 全日本F3
- 伊沢 全日本F3 -
 

昨年は同じチームで戦った塚越はヨーロッパへ旅立つ。その塚越に対しては何を想うか。

「去年は僕自身、彼からいろんなことを学ぶことができたし、お互いに切磋琢磨して成長できた面もあると思うので、今年はヨーロッパで彼が活躍してくれたら、きっと僕のエネルギーにもなります。今年はお互いに走る場所もクラスも違うけれど、刺激し合いながらやっていきたいと思いますね。フォーミュラ・ニッポンは、海外のレースと比べてもレベルが高いと思うんです。まだレギュラーの人たちと一緒に走ったことがないのが唯一の不安といえば不安なのですが、そういうレベルの高いところで、たとえば去年の小暮(卓史)選手のように結果を出せば、いろんなチャンスが広がっていくと思うので、まずは今年1勝を目指してがんばっていきたいと思います」

JAPAN FORMULA 3
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