グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードとは

 グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードとは、イギリスの貴族、チャールズ・マーチ卿によって1993年から英国で開催されているヒストリック・モータースポーツイベントである。
 モータースポーツの歴史にその名を残す、さまざまなレーシングカーを間近に見ることができるというだけでも、モータースポーツファンにはたまらないものがある。だが、このグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードの最大の魅力はやはり、「歴代の名ドライバーが、当時のままの姿のレーシングカーを実際に走らせること」だろう。

 3日間の開催期間で、入場者数はF1に迫る合計約14万人。比較的若いイベントであるが、その人気ぶりがうかがえる。会場となるのは、マーチ卿が所有する南イングランドの広大な丘陵地帯で、敷地内にはマーチ卿の祖父が設立したグッドウッド・サーキットをはじめ、競馬場、ゴルフ場、リゾートホテル、自然公園などがある。
 そして、マーチ卿がこのイベントを開催するにあたって設置したのが、このイベントの名物となっている往年のドライバーがマシンを走らせるヒルクライム・コースである。
 グッドウッド・ハウスと呼ばれる館の前から、敷地内をほぼ一直線に貫くコースで、脇には、今日のようなスポンジ製のものではなく、昔ながらの藁でできたバリアが置かれている。そして、そのすぐ後ろからコースを疾走するレーシングマシンの姿を間近に見ることができるのだ。これは、レーシングマシンを愛する人々と、互いに感動を分かち合いたいというマーチ卿のアイデア。
 会場に集まった人々は、それぞれ思い入れのあるマシンそのものと走りを間近に眺め、往年の名ドライバーや現役のドライバーなどが語り合う様子をそこかしこで見ることができる。さまざまなグッズを取り扱うショップを見るのも楽しい。ヒストリックカーのオークションも開催される。グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードは、モータースポーツファンにとって、まさに夢のような時間を過ごすことができるイベントなのだ。

 Hondaは、このイベントに1993年の第1回目から参加している。それは、1959年のマン島TTレース、1964年のF1参戦以来、レースを愛するメーカーとして欧州で親しまれているからだ。
 そして1999年からは、日本の自動車メーカーとして唯一マーチ卿から招待を受け、日本からヒストリックマシンを持ち込んでの参加となった。はじめてヒストリックマシンをグッドウッドの会場に持ち込んだHondaは、英国のモータースポーツファンから、とてもあたたかい歓迎を受けたという。また、当時のオフィシャルたちは、勝手が分からず奔走していたHondaの日本のスタッフを親身になって手伝い、また、レースでのHondaの活躍を知る往年のファンは「よく戻ってきてくれた」と声をかけた。さらに2005年には、マーチ卿から請われて日本の自動車メーカーとしてはじめてこのイベントのホスト役を務め、グッドウッドフェスティバル史上ではじめて可動式の巨大なモニュメントを設置するなど話題を呼んだ。

 長年、一貫してモータースポーツに関わり、情熱を傾けてきたからこそ得ることのできた、ファンからの親愛の情、そして「老舗」としての評価。それは、けっして一朝一夕に手に入れられるものではない。長年、世界のレースに挑み続けてきたHondaならではのものである。
 その好例として、Hondaのブースには唯一赤い絨毯が敷かれており、そこで行われる往年のマシンのエンジン音を聴くデモンストレーションはこのイベントの名物となっており、集まった多くの「聴衆」がそれこそ名曲を味わうように聴き入る。そして毎回、盛大な拍手が沸き起こる。これは、Hondaが「モータースポーツの老舗」として英国の人々に認められていることを物語る事実であるといえよう。
 2007年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードは、6月22日(金)〜24日(日)の3日間開催される。