
あれから40年以上の時間が過ぎた。今や世界のヒストリックカーイベントの頂点に成長し、世界各国から参加者を集めるようになった大イベント、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで、今年Hondaはメインスポンサーを務めることになった。つまりは、ヨーロッパのレース史の象徴として選ばれたのだ。もちろん日本の自動車メーカーとしては初めての栄誉である。そしてHonda F1のアイボリーホワイトに日の丸を描いたカラーリングは、主役を引き立てる衣装となった。
グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードの主催者であるマーチ卿の邸宅前に建設される、いわゆるセントラル・ディスプレイは、毎年メインスポンサーがプロデュースするモニュメント。今年、Hondaは初めて動きを取り入れた大規模なデザインを採用して大きな話題となった。このセントラル・ディスプレイのデザインは、主催者側がいくつかのアイデアをメインスポンサーに提案し、その意向を聞いて決めるものであるが、今回Hondaは、前代未聞の可動形式の案を迷わず選んだ。Honda U.K.のPRマネージャーは言う。
「確かにとても高価なものになりましたが(笑)、動くことにこだわったのです。動くことで人を驚かせたかった。それがHondaのテクノロジーの象徴だと思った。人が信じられないようなことをやってしまうのがHondaのイメージなんですから」
Honda U.K. は今年で創立40周年、奇しくもHonda F1が初優勝を遂げたのも40年前のことだ。今やグローバルカンパニーに成長したHondaで働く英国人スタッフにとって、白地に日の丸というナショナルカラーに彩られたHonda F1はどのように見えるのだろうか。そう訊ねると、彼はきわめて興味深い感想を述べた。 「当時のHondaという会社の技術を象徴するという意味で、ナショナルカラーをつけたF1マシンを今回のグッドウッドで絶対に走らせなければいけないと思っていました。確かに今ではグローバルカンパニーではあるけれども、ヨーロッパでHondaは、かつて全く異質の技術をヨーロッパに持ち込んだ日本の会社として記憶されているし、その並外れた技術のイメージは、大事にしなければいけないと思うからです」