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エネルギーの流れ

最後に、パワーユニット内におけるエネルギーの流れを説明します。マシンが走る場面によってエネルギーを蓄えたり、放出してパワーを発揮したりと、流れは異なります。それでは、場面ごとにエネルギーの使い方を見てみましょう。
※すべてのエネルギーはECUを通りますが、ここでは説明のために省略しています

鈴鹿サーキット
1.ブレーキング時
2-1.コーナーの立ち上がり
2-2.ターボラグの解消
3.全開加速時

鈴鹿サーキット

ブレーキング時(運動エネルギー回生)

市販ハイブリッド車がエネルギーを回生するのと同じ流れです。走行中の車両が減速時に捨てている運動エネルギーの一部をMGU-Kが電気として回収(発電)し、エネルギー貯蔵装置に蓄えます。MGU-Kの最高出力は120kW、1周あたりに蓄えられるエネルギー量は2MJと定められているため、規定上限まで回生するには、計算上、約16.7秒の減速時間が必要となります。

ブレーキング時(運動エネルギー回生)

※この図は、実際のHondaパワーユニットを反映しているものではありません

コーナー立ち上がり(MGU-Kによるパワーアシスト)

ダッシュ力を必要とするコーナーの立ち上がりでは、エンジンが発生する出力にMGU-Kの出力を上乗せすることで、パフォーマンスを向上させることができます。

コーナー立ち上がり(MGU-Kによるパワーアシスト)

※この図は、実際のHondaパワーユニットを反映しているものではありません

コーナー立ち上がり(ターボラグの解消)

ターボ車の場合、減速を終えて次に加速しようとアクセルを踏んでも、排ガスの流量が増えてタービンが本来の性能を発揮するのに一定の時間を要してしまいます。この反応の遅れをターボラグと言います。そこで、MGU-Hを利用してコンプレッサーを回転させ、タービンが排気の到達を待たずに機能させることで、ターボラグの解消を行います。

コーナー立ち上がり(ターボラグの解消)

※この図は、実際のHondaパワーユニットを反映しているものではありません

全開加速時(MGU-KとMGU-Hによるパワーアシスト)

(各部の解説で説明した通り、)ターボチャージャーではコンプレッサーが回転し、圧縮した空気をエンジンへ送り込んでいます。全開加速時は、タービンに供給される排気エネルギーが増えるため、エンジンが必要な空気を圧縮するためのコンプレッサーの仕事を上回る場合があります。

そんなときには、使いきれなかった排気エネルギーによってMGU-Hで発電し、その電力を、直接MGU-Kに送ります。MGU-Hでの発電量は制限されていませんから、バッテリーの充放電エネルギー制限に縛られることなく、エンジンにMGU-Kの出力を上乗せして走ることができます。言い換えれば、余った排気エネルギーを、効率良く加速に使うことができるのです。

コーナー出口の全開加速では、MGU-Hからだけでなく、バッテリーからもMGU-Kに電力を供給する場合があります。こうすることで、MGU-Kをレギュレーションで決められた最大出力(120kW)で駆動し、フル加速することができます。

全開加速時(MGU-Hによるパワーアシスト)

※この図は、実際のHondaパワーユニットを反映しているものではありません