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パワーユニットとは

2014年に規則が大幅に変更されましたが、2013年まではエンジンを供給するメーカーは、「エンジンサプライヤー」と呼ばれていました。 しかし、時代の変化に伴い、エンジンに加えて、新たに2種類のエネルギー回生システムがF1マシンの動力として採用されることになりました。この、エンジンとエネルギー回生システムを組み合わせたトータルシステムを「パワーユニット」と呼び、Hondaはこの部分の開発を担うため、「パワーユニットサプライヤー」と呼ばれます。
この、エンジンからパワーユニットへの呼称変更の背景には、馬力に力点を置いたエンジン開発の時代から、エネルギー効率を追求したシステムを含めたパワーユニットの開発にシフトすることにより、環境技術の導入による究極のエネルギー効率の実現が期待されています。

では、先ほど触れた、新たに採用された2種類のエネルギー回生システム、運動エネルギー回生システムと熱エネルギー回生システムを説明します。

パワーユニットとは

※この図は、実際のHondaパワーユニットを反映しているものではありません

まず「運動エネルギー回生システム」は、2009〜13年に搭載されていたKERS(カーズ、Kinetic Energy Recovery System)の発展形となっています。アコード ハイブリッドやフィット ハイブリッドなどの市販車が搭載するハイブリッドシステムと同じような仕組みで、モーターとジェネレーター(発電機)ユニットを利用し、運動エネルギーを電気エネルギーに変換します。

クルマを減速するときにはブレーキをかけますが、ハイブリッドシステムを持たないクルマは、運動エネルギーがブレーキユニット(構成部品)によって熱に変換され、大気に放出されます。つまり、ブレーキ時に発生したエネルギーを捨ててしまうわけです。一方のハイブリッドシステムは、従来捨てていたエネルギーをモーター/ジェネレーターユニットを作動させて回収し、電気に変換してバッテリーに蓄えます。そしてバッテリーに蓄えられた電気エネルギーは、モーターを動かして加速に使われることになります。この運動エネルギー回生システムを構成するモーター/ジェネレーターユニットは「MGU-K」と呼ばれています。MGU-Kの「MGU」はMotor Generator Unitの略、「K」はKineticの略で「運動」を意味しています。

また、もう一つの「熱エネルギー回生システム」は、エンジンから出る排気の熱をエネルギーに変換します。通常、エンジンの燃焼室を出た高温の排気は、排気管を通じて大気に放出されます。この熱エネルギーを再利用するために、専用のモーター/ジェネレーターユニットを作動させて電気を作っているのが熱エネルギー回生システムです。このユニットは、MGU-Hと呼ばれています。MGU-Hの「H」は、Heatの略で「熱」(排熱エネルギー)を意味しています。