08.11.25 vol.192 バルセロナテスト

来季を見据えた初テストとしては、
非常によかったですね。

11月17日から始まったバルセロナでの合同テストに、Hondaは2台のマシンで参加した。空力規約の大変更や、スリックタイヤ、KERS(運動エネルギー回収システム)の導入などにともない、来季は大きな勢力変化が予想される。そんな中、Hondaは初テストで好感触を得たようだった。

 

【プロフィール】
長谷川 祐介(はせがわ・ゆうすけ)
1963年12月1日生まれ、東京都出身。
1986年Honda入社。量産車のエンジン開発や将来パワープラントの研究を経て、2002年よりシステム開発責任者としてF1に携わる。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)エンジニアリングディレクターとして、現場にてパワープラント領域を統括する立場である。

―まず今回のテストの目的は、どういうことだったんでしょう。
 一番の目的は、09年の空力+スリックタイヤを履いた状態での、クルマの特性を理解するということでしたね。具体的にはフロントウイングは09年の規約に合った形状のもので、それ以外のリアウイングなどは、ダウンフォース値を落として対応しました。

―08マシンに09用の空力パッケージというと、マシンバランスに問題は出なかったですか。
 まさにそのあたりを確かめたかったのですが、予想以上に安定した挙動でしたね。低速から高速コーナーまで、どこかで突然破綻するとか、そういうこともなかったですし。悪くないバランスでした。

―タイヤがスリックになったことも、非常に大きな変化ですね。
  ええ。前回のテストでも分かっていたことですが、グリップレベルは明らかに上がる。そのためにコーナー進入時のブレーキングの安定性だとか、立ち上がりのトラクションのかかり方とか、それらはおしなべてよくなっています。それと意外だったのは、スリックは耐久性に問題があるんじゃないかと思っていたのですが、かなりの周回をこなしても大丈夫でした。性能低下も、さほどではなかったですね。燃料が軽くなる分、タイムが上がっていく感じでしたし。

―ブルーノ・セナ、ルーカス・ディ・グラッシの若手ドライバーも、テストに参加しました。
 二人とも、それほど差はないという印象ですね。ジェンソンのタイムをしのぐことはさすがにありませんでしたが、おおむねコンマ3〜4秒落ちぐらいで、周回を重ねていた。比較的安定して周回を重ねていたし、悪くなかったですね。

―新人にしては、安定していたと。
 特にセナは、今回が初めてのF1ドライブでしたしね。まあ初日は、タイムが揃うまではちょっとてこずっていましたが、2セット目のタイヤになってからは、だいぶよかったですね。スピンやコースからの飛び出しも、なかったですし。特に最終日は、非常に安定していました。

―今回は各チームがいろんな仕様で走った分、直接比較は難しいと思いますが、Hondaはタイムの上で3日間を通じて、比較的上位に位置していました。
 そうですね。テストの結果が、ある程度タイムに反映したといえると思います。走り始めからセットアップがまとまって、非常に順調に作業が進められましたしね。今回に限れば、バランスのいいクルマに仕上がりました。この方向性が正しいことが確認できれば、来年はかなりの戦闘力が期待できるでしょうね。もちろん今の段階でそこまで言うのは、早すぎますが。

 いずれにしてもスリックに対する理解もかなり進んだし、初回のテストとしては非常によかったですよ。