08.11.13 vol.190 -2008年を振り返る- その1

今シーズン不振の原因を語る

今季のHonda Racing F1 Teamは、選手権9位に終わった。第9戦イギリスGPではルーベンス・バリチェロが3位表彰台に上がったものの、それ以降は一度も入賞できないままだった。ロス・ブロウンをチーム代表に迎え、新体制で出発したHondaが、予想以上の不振に陥った原因は何だったのだろうか。そして来季以降の、飛躍の可能性はあるのか。中本修平デピュティ・マネージング・ディレクターに、今季を振り返ってもらった。

 

【プロフィール】
中本 修平(なかもと・しゅうへい)
1957年4月29日生まれ、鳥取県出身。
1983年Honda入社。 ホンダレーシングコーポレーション(HRC)配属。
Hondaの二輪ロードレース部門にて車体開発に携わり、数々のプロジェクトリーダーを歴任。
2000年 テストチームマネージャーとしてHonda Racing Development (HRD)へ赴任。
2008年 Honda Racing F1 Team デピュティ・マネージング・ディレクターを経て、 12月1日からは、本田技術研究所 二輪開発センター MSD室長兼、HRC 副社長に就任。

―空力部門を大きく見直したこともあって、マシン開発が出発の時点から遅れた。そのツケが、今シーズンの結果につながったという印象ですか。
 確かに空力開発のスタートが遅れて、開幕時は苦しみました。でもその遅れは、シーズンを通してばん回したんですね。空力性能だけを取れば、ダウンフォースの絶対値はマクラーレン、フェラーリにはかなわないけれど、たとえばレッドブルなど中団グループには負けていないと思いますよ。
 ただ、各パーツの重量や剛性が、今一歩だったんですね。1月に新車を走らせた段階で、最低限の剛性が確保できていなかったし、重量も重かった。このままいくと剛性が低くなってしまうから、そうならないようにしようと足回りなどを作り直したりしたんですけれど、ばん回できるまでに至らなかった。

−それに関連して、タイヤの使い方には、最後まで苦労されてたようですが。
 2006年までのミシュランタイヤは比較的うまく使えていたのが、ブリヂストンはまったく違う。それをいかに使うか、最後まで苦労しました。2年かかっても、まだちゃんと使い切れていないようです。レース後のタイヤの顔を比較しても、ウチだけちょっと外してる。そう思わざるをえないことが多かった。
 タイヤに熱が入らないので、路面温度の低いコースではグレーニングが出てどうしようもない。さらにスパやインテルラゴスのように、去年より1段階固いスペックを持ってこられると、もう本当に苦労しました。

―ルノーはその辺り、進化が顕著でした。
  (ルノーは)前半、苦労していたけれど、こういう方向だろうとサスペンションを作り変えました。特にフロントですけれど。それで急に速くなりましたよね。要はフロントタイヤがちゃんと温まれば、アンダーステアが消える。アンダーが消えるから、フロントにダウンフォースを付けるのに、いたずらにフラップを立てたりする必要がない。逆にHondaはアンダーが出るので、フラップを立てる。そうしたら空気の流れが悪くなって、リアがナーバスになる。そういう悪循環でしたね。

(その2に続く)