08.10.15 vol.187 Japanese GP

母国GPで結果を残せなかったのが、残念でなりません。

今年の富士スピードウェイでの日本GPは、予選、レースともにドライ路面で行われた。しかしHonda勢は初日から速さが発揮できず、予選はルーベンス・バリチェロ17番手、ジェンソン・バトン18番手という結果。そのためレースでは1回ストップ作戦を採り、さらにバトンはスタートからソフトタイヤを履いて、活路を開こうとした。だがレース中もペースは伸びず、13、14位完走という結果に終わった。

 

【プロフィール】
長谷川 祐介(はせがわ・ゆうすけ)
1963年12月1日生まれ、東京都出身。
1986年Honda入社。量産車のエンジン開発や将来パワープラントの研究を経て、2002年よりシステム開発責任者としてF1に携わる。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)エンジニアリングディレクターとして、現場にてパワープラント領域を統括する立場である。

―予選、レースを通じて、非常に厳しい週末でした。
 敗因の1つは、最高速が伸びないことでした。直線でのタイムロスが、非常に痛かった。

―初日のフリー走行で、何種類かのウイングを試していたようでしたが。
 ええ。いろいろ比較して、やっぱりダウンフォースを付ける方向でいこうという結論に達しました。その方がブレーキング時の挙動も安定しますし。でもそのために、ドラッグ(前面抵抗)がひどすぎて全くタイムが出なかった。その意味では初日に決めたセッティングは、保守的過ぎたんだと思います。

―2日目午前のフリー走行が、ウエット路面でした。
  あれは、痛かったですね。あの段階で確認して、予選に臨もうと思っていた。ウエット路面を走るときはダウンフォースを付けた方がいいという結論になるわけですし、ドライでの挙動を見切れないままになってしまいました。

―あそこで、より最高速に振ったセッティングにしていれば、違った結果になったかもしれない?
 かもしれませんね。しかし他にも、タイヤのグレーニング(ささくれ摩耗)に、予選でもレースでも悩まされました。バトンはスタートで10番手まで上がったわけですから、そのあと普通のスピードが出せていれば、十分入賞は可能でした。ところがまったくスロットルが踏めなくて、ずるずる後退していった。

―2回ストップ作戦の可能性は?
 純粋にシミュレーションすれば、2回ストップの方が速い。でもあの後方グリッドからでは、ほかと同じことをやっても上に行けませんから。

―クルマによって、グレーニングの出方にずいぶん差がありました。
 うちのクルマは、特にひどかったですね。それはひとつには、タイヤが温まりにくくて、めくれてしまうんでしょうね。決勝当日は路面温度が20℃前後と、かなり低かったことも不利に働きました。

―新しいリアサスペンションの熟成も進んで、マシンは進化しているという印象だったのですが。
  そうですね。ただスパ、モンツァも同様でしたが、最高速が重要になるサーキットは、どうしてもRA108は苦手です。今回の富士にしても、もし、もっと軽いウイングだったらどこまで戦えたかを、知りたかったですね。結果的に自分で足かせをはめたまま戦うことになってしまって、本来のパフォーマンスを発揮できなかった。それが残念だし、心残りな部分です。

―次の上海も、長い直線がありますね。
 ええ、ただあそこは、もっとダウンフォースを付けますからね。バレンシアやシンガポールなども悪くなかったですから、今回ほど苦戦しないはずです。