08.09.30 vol.186 Singapore GP

残念な結果でしたが、
日本GPに向けての手応えも感じられました。

史上初の夜間レースとなった、シンガポールGP。ルーベンス・バリチェロはレース序盤、セーフティカー導入直前の絶妙のタイミングでのピットインに成功し、上位入賞が期待されたが思わぬエンジントラブルで、リタイア。一方、12番スタートのジェンソン・バトンは、9番手まで上がりながら、わずかに入賞圏内に届かなかった。

 

【プロフィール】
長谷川 祐介(はせがわ・ゆうすけ)
1963年12月1日生まれ、東京都出身。
1986年Honda入社。量産車のエンジン開発や将来パワープラントの研究を経て、2002年よりシステム開発責任者としてF1に携わる。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)エンジニアリングディレクターとして、現場にてパワープラント領域を統括する立場である。

―残念ながら、バトンはポイント獲得はできませんでした。
 ええ。とはいえ総じて、クルマの性能向上が実感できた週末だったと思っています。これまでのベルギー、イタリアGPに比べると、状況が好転していることは確かですね。

―バトンはフリー走行2日目までは非常に調子がよかったのが、予選はグリップ不足を訴えて、それまでの速さが出せませんでした。
 特にスーパーソフトの方が、よくなかったですね。柔らかいためにリアが動きすぎて、しっかりグリップしてくれない。固い方のソフトは、まだよかったのですが。とはいえ、すべてがうまくいっていても、トップ10に入れるかどうかというところだったでしょう。

―バリチェロはセーフティカー直前にピットインをこなして、やったと思いました。
 そうですね。セーフティカーが導入される確立はかなり高いと踏んで、2台を違う戦略に振り分けました。バトンはクルマの仕上がりもよかったので、正攻法の2回ストップ。バランスに苦しんでいたバリチェロを、1回ストップ作戦にしたわけです。そしてネルソン・ピケJr.(ルノー)がクラッシュしたことで、すぐにピットに呼び寄せ、2回ストップに変更した。あのままいっていれば、上位入賞は間違いなかったのでしょうけど。一方でバトンにとっては、悪いタイミングのセーフティカーになってしまいましたね。

―バリチェロのトラブルの原因は?
 これから詳しく調べますが、エンジン内部からの出火でした。電装系なのか機械部分なのかまだ不明ですが、今季初めてのエンジントラブルが出たのは残念でした。

―ブレーキはどうでしたか。
 やはり、厳しかったですね。後半はかなりいたわりながら、走る必要がありました。ドライバーにとっては、体力的にも相当キツかったようです。日が暮れても外気温が30℃以下に下がらないし、「とにかく暑かった」と言っていました。それに加えてコーナーが連続して、全く気が抜けない。ずいぶん消耗していましたね。

―入賞こそ逃しましたが、クルマがよくなっていることは実感できた?
 というより、バレンシアで発揮できた速さが、ようやく戻ってきたと言った方がいいかもしれません。スパ、モンツァは、雨に翻弄されたせいもあるのですが、とにかく本来の性能とはほど遠いレベルでしたから。

―この流れで、日本GPに臨めるといいですね。
 最初に走ったときの基本セッティングがよかったのも、好材料でした。新しいリアサスペンションへの理解もかなり進んでますから、手応えは感じてますよ。