08.09.24 vol.185 ヘレステスト

KERSの戦闘力は、十分に期待できる。
ぜひ来年から、実戦投入したいですね。

シーズン中最後の機会となるスペイン・ヘレスでの合同テストには、フェラーリ、フォースインディアを除く、計8チームが参加した。Honda Racing F1 Teamは火曜日から計4日間のメニューを組み、現行マシンでの空力テストのほか、KERS搭載マシンを初めて本格的に走らせた。

 

【プロフィール】
長谷川 祐介(はせがわ・ゆうすけ)
1963年12月1日生まれ、東京都出身。
1986年Honda入社。量産車のエンジン開発や将来パワープラントの研究を経て、2002年よりシステム開発責任者としてF1に携わる。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)エンジニアリングディレクターとして、現場にてパワープラント領域を統括する立場である。

―今回は、異なった2台のマシンを持ち込んでのテストでした。
 ええ。1台は、今年の現行マシン。もう1台は一昨年のクルマに、KERS(運動エネルギー回収システム)を搭載したものです。初日はこのKERS搭載マシンを走らせたんですが、マイナートラブルが発生して、それを見つけるのに時間がかかって、結局20周しかできませんでした。とはいえ、基本的な機能チェックはできました。

―2日目からは?
 2、3日目は、来年のマシンの空力テストがメインでしたね。それから前戦モンツァで雨の中を走った際、低回転域でのドライバビリティが非常に悪いという指摘が、ドライバーからあったんですね。その改善にも、取り組みました。

―そして最終日が……。
 再びKERSです。まだ走っただけという程度ですが、KERSにはご存知のように回生ブレーキというのを組み込んでいます。そうすると、ブレーキを踏んだときのフィーリングがずいぶん変わってしまう。それをどう直していこうかというのを、今やっているところです。

―バッテリーを積んだりすることで、クルマ全体のバランスもずいぶん変わってしまいますよね。
 そうですね。ただ、今試しているクルマは、あくまで暫定的なものですからね。当然ながら、バランスは最適にはなっていません。

―合同テストで初めてKERSを走らせたわけですが、今回のテストを総括していただけますか。
 本格的な走り込みはまだこれからで、今まではシルバーストーンでシェイクダウン程度しかやっていませんでした。ですから今回、レーシングスピードで走らせたことで、回生ブレーキがどう効くかとか、いろいろ見えてきたこともありましたね。シミュレーションとは、だいぶ違いました。

―振動の問題とか?
 それは、大丈夫でした。ただブレーキングの際、思った以上にリアがロックする。それは初日のコンウェイも、指摘していました。ただそれに対しては、エンジンブレーキを調整していくとか、対処の方法はいろいろあります。

―来年から全チームがKERSを搭載するのかどうか、不透明ですが。
 我々としては、ぜひ使いたいですね。それだけの戦闘力は、十分に期待できますから。確かに重くなりますが、それを補ってあまりある武器だと思います。最終日にドライブしたブルツも、KERSの効果を実感し、高い評価をしてくれました。だからマシンパッケージさえちゃんとできれば、相当速くなるでしょうね。

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