08.08.07 vol.180 Rd.11 Hungarian GP

新サスペンション投入の効果は、
今後さらに出て来るはずです。

Honda Racing F1 Teamは今回、まったく新しいリアサスペンション、そしてシャークフィンをはじめとする空力パーツなど、大きな改良を施したマシンで、ハンガリーGPに臨んだ。しかし、ジェンソン・バトン12番手、ルーベンス・バリチェロ17番手からスタートしたレースは、2台ともチェッカーを受けたものの、ポイント獲得はならなかった

 

【プロフィール】
長谷川 祐介(はせがわ・ゆうすけ)
1963年12月1日生まれ、東京都出身。
1986年Honda入社。量産車のエンジン開発や将来パワープラントの研究を経て、2002年よりシステム開発責任者としてF1に携わる。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)エンジニアリングディレクターとして、現場にてパワープラント領域を統括する立場である。

―レースは、残念な結果に終わってしまいました。
 バトンは路面コンディションの悪いイン側スタートで、アウト側のクルサードに並ばれて1コーナーの渋滞に巻き込まれ、順位を落としてしまいました。そしてそれ以上に、1回ストップ作戦のニック・ハイドフェルドに引っかかってしまったのが痛かったですね。一方のバリチェロはバトンに比べ、若干ペースが遅かった。初日からマシン作りに苦しんでいて、その影響をレースまで引きずったということだと思います。

―今回、新たな空力パーツ、そして改良リアサスペンションが、投入されました。実戦での感触は、いかがでしたか?
 走行安定性は明らかに上がっているというのが、ドライバーの評価でした。ただクルマ全体へのバランスの見極めが、まだ十分にできていない。そのため、初日は特にひどいアンダーステアでした。もともと今回投入したリアサス、そしてシャークフィンは、アンダー傾向になるだろうということは予測されていたんですね。事前に対応したのですが、走り出し時点では調整が不十分でした。

―前週のヘレステストでは、十分な見極めができなかった?
  消化すべきメニューが膨大にあって、それを1台のマシンですべてこなさなければならない。やり切れていないところは、非常に多かったですね。新しいサスペンションにしても、まだまだ理解が足りていないということです。ダンパーやバネとの連携は、これからバランス点を探し出さなければなりません。

―これから夏休みに入って実走テストはできませんが、リアサスの熟成作業は進めていくのでしょうか。
 もちろんです。実際にコースは走れないので、今回のレースでのデータと、セブンポスターなどを使ったシミュレーションで、データ収集を行います。それが実戦でのタイムアップにつながっていくことを、期待しています。今回のレースでも、前が空いた状態でのバトンは、レッドブル、トロロッソとほぼ同じか、少し上回るペースでした。もちろんそれでも、結果的には入賞は難しかったですが、新サスペンション投入による効果は出ていると思っています。今後さらに煮詰めていけば、今回以上にタイムに反映するはずです。