08.07.29 vol.179 ヘレステスト

次戦ハンガリーGPでも、今回の改良が活かせるはずです。

ドイツGPの翌週、Honda Racing F1 Teamはスペイン・ヘレスで4日間のテストを行った。空力や足回りなど多くの新型パーツを試し、これまでにない大きな手応えを得られたようだ。

 

【プロフィール】
長谷川 祐介(はせがわ・ゆうすけ)
1963年12月1日生まれ、東京都出身。
1986年Honda入社。量産車のエンジン開発や将来パワープラントの研究を経て、2002年よりシステム開発責任者としてF1に携わる。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)エンジニアリングディレクターとして、現場にてパワープラント領域を統括する立場である。

―今回は4日間のテストで、メニューも盛りだくさんだったようですが。
 ええ。来年導入されるスリックタイヤのテストも含めて、かなりいろんなことを試しました。本来のプログラムも足回り、ブレーキ、空力など、たくさんやりましたね。特に足回りテストが、今回のメインでした。

―新しいリアサスペンションということでしたが。
 そうですね。実際に走ってみて、非常にいい感触を得ることができました。この時期のアンダルシア地方は連日非常に暑くて、午後は路面温度が50℃近くまで上がることもありました。それもあって、実際のレースコンディションとの比較は厳密には難しいのですが、それでもドライバー3人の評価も高かったです。
 これまでブレーキング時の挙動の安定性、それからコーナー立ち上がりでのトラクション。この2つの性能向上に我々は苦労してきたのですが、ともにいい方向にいってますね。もちろんこれで、問題がすべて解決したというわけではありません。しかし大きな前進であることは、確かです。

―空力パーツも、多くのものを試したそうですね。
  ええ。いわゆるシャークフィンと呼ばれる大型のエンジンカバーとか、新しいリアウイングとかですね。特にシャークフィンは、コーナーの挙動が安定するという結果が出ました。他チームでは振動の問題などが出たようですが、それも我々は大丈夫でしたね。ファクトリーでデータの最終確認してから、ハンガリーGPで実戦投入するかどうかを決めるつもりです。

―来季から導入予定のKERS(運動エネルギー回収システム)の実走テストをBMWザウバーが今回行った際、感電事故が発生しました。
  そのようですね。とにかく安全性を十二分に確保することが、この新しいステムを導入するための大前提です。我々はお互い、競争相手としてKERS開発にしのぎを削っているわけですが、事故を防ぐことに異論はない。ですからこの分野に関しては、チーム間のノウハウの共有が必要なんじゃないかと思ってます。これまでに起きた事故などの情報を開示し合って、一緒に対策を立てていくべきでしょう。ロス(ブラウン チームプリンシパル)にもそう進言して、次のチーム代表会議で提案してもらうつもりです。レースに事故は付き物ですが、その際にKERSそのものに問題が波及することは絶対に避けたいですから。

―最後に、今回のテストの総括を。
 今回は、非常にいいテストでした。次のハンガリーGPは低速コーナーが多いですから、トラクション性能が重要になる。この改良が活かせれば、タイムにも反映できると思いますよ。