08.07.15 vol.177 ホッケンハイムテスト

課題も出たが、実り多いテストでした。

ルーベンス・バリチェロが3位表彰台に上がった翌々日、チームは次戦ドイツGPに向けて、ホッケンハイムリンクで3日間のテストを敢行した。ブレーキング時の挙動不安定など、課題が浮き彫りになったと同時に、改良パッケージの戦闘力向上も確認できたテストだった。

 

【プロフィール】
長谷川 祐介(はせがわ・ゆうすけ)
1963年12月1日生まれ、東京都出身。
1986年Honda入社。量産車のエンジン開発や将来パワープラントの研究を経て、2002年よりシステム開発責任者としてF1に携わる。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)エンジニアリングディレクターとして、現場にてパワープラント領域を統括する立場である。

―今回のテストでも、いろいろな新パーツが投入されました。
 ええ。空力を中心に、エンジンの給排気系にも改良パーツが入っています。

―変わりやすい天候だったようですね。
 初日と2日目は雨や風に見舞われたのですが、最終日はいい天気でした。かなり盛りだくさんのメニューだったのですが、ほぼ消化できた感じです。ただこのサーキットは、昼休みが2時間もあるんですね。それでその間に路面コンディションが、ずいぶん変わってしまう。そのために比較テストは、なかなかやりづらかったですね。

―2日目のバリチェロにギアボックストラブルが出たり、ブレーキング時の安定性向上に、苦労したとのことですが。
  そうですね。全般的には確かに、ブレーキングで苦労してますね。特にコーナーで進入して、ステアリングを切りながらのブレーキングですね。それはルーベンスだけでなくジェンソンも、同じ症状を訴えていました。前戦シルバーストーンでは、レイアウト的にその問題はほとんど出なかった。それがホッケンハイムの場合、特にヘアピンでの減速が厳しいですね。とはいえGP本番前にその課題が見つかりましたから、これから対策を立てていきます。

―最終日に走ったバトンは、総合2番手の成績でした。
 レースシミュレーションを行う中で、あのタイムを出しました。比較的軽かった時のタイムでしたが、一発タイムを狙ったわけではない。軽い状態で順当に速かったことは、収穫だったと思います。

―シルバーストーンでトラブルが出た給油システムに関しても、今回のテストで検証したということですが。
  ええ。あれは給油トラブルというよりは、緊急ピットインだったために通常の手順ができなかったことが原因です。今後、もし同じような状況になった時、どう対応していくかということを確認しました。

―3日間のテストを振り返って、いかがでしょう。
  先ほど申したような弱点が見つかって、クルマ全体でいうと、ちょっと苦戦するかもしれません。ただ新しい空力パッケージとか、エンジンのドライバビリティ向上など、確認できた成果も多い。もちろんこれから1週間で、できるかぎりの対策を練っていきます。それからこれまでは最高速の点で苦戦していましたが、今回はダウンフォースを減らしたパッケージでも、ある程度いいバランスが得られている。軽い状態での速さと同様、これも好材料です。あとはGP週末に、ライバルたちと比較してどうかというところですね。