08.07.09 vol.176 Rd.9 British GP

待ちに待った表彰台に、最高のタイミングで上がれました

イギリスに本拠地のあるHonda Racing F1 Teamにとって、イギリスGPは日本GPと並ぶホームグランプリである。しかし土曜日の予選では、ルーベンス・バリチェロ16番手、ジェンソン・バトン17番手と、下位グリッドに沈んでしまう。ところが大雨の決勝レースでは、2人は目覚ましい速さを発揮する。バトンは惜しくもリタイアに終わったが、バリチェロは3位でチェッカー。2006年ブラジルGP以来の、Hondaの表彰台となった。

 

【プロフィール】
長谷川 祐介(はせがわ・ゆうすけ)
1963年12月1日生まれ、東京都出身。
1986年Honda入社。量産車のエンジン開発や将来パワープラントの研究を経て、2002年よりシステム開発責任者としてF1に携わる。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)エンジニアリングディレクターとして、現場にてパワープラント領域を統括する立場である。

―今シーズン初の表彰台を獲得しましたが
 すごくうれしい表彰台です。ドライ路面での予選は今ひとつの成績だったので、うれしさもひとしおです。ただ決勝当日は雨の可能性が高く、うちの車とドライバーは雨には強いと思っていました。とはいえ表彰台までたどり着けるとは、正直思っていませんでした。

―3位獲得が成功した要因は?
 ひとつは、深溝のエクストリームタイヤを履いたタイミングが、完ぺきだったことですね。レース中盤、雨が強くなって、ノーマルレインではもう走れないと、バリチェロが飛び込んできた。バトンも同様で、そのため同時ピットインになりました。若干のタイムロスはあったものの、結果的にはあそこで深溝に履き替えたことで、あっという間に上位に進めましたからね。
 二つ目は、ルーベンスがすばらしい走りをしてくれた。他にスピンしたり、飛び出したドライバーが多い中、安定して速かった。ただジェンソンもルーベンスをしのぐような、いいペースだっただけに、リタイアは残念でした。
 三つ目としては、雨のコンディションが我々のクルマに合っていたということが、いえるでしょうね。特に、エクストリームタイヤで走ったドライバーのうち、あのタイムで走れたのはルーベンスとジェンソンだけです。

―2回目のピットインでエクストリームタイヤを履こうとした際、かなり青空が広がってましたよね。すぐに路面が乾いてしまうのでは、という不安は?
 ええ。天気予報でも、「降っても5分」ということでしたから、ある程度晴れを予測し、2回目のピットインの時点で、3ストップ作戦に切り替えました。結局はレース終盤になっても全然乾かなくて、エクストリームタイヤのルーベンスの方が、2位を走るノーマルのハイドフェルドよりはるかに速いぐらいでした。だから逆に、3回目のピットインは、続けて深溝にしようかと悩んだぐらいでしたね。

―予選は非常に厳しい展開でした。
 そうですね。ただ予選ではタイミングが悪くて、いいペースで走れなかったり、雨に降られたりしてしまい、プラクティスのタイムも出せませんでしたから、あれが実力通りだとは思っていません。まあ、結果的に第3セッションに進むことはできなかったと思われます。

―とにかく待望の表彰台でしたね。
 本当にそうでした。ファクトリーのある地元GPで、待ちに待った表彰台に上がれた。これ以上はないというタイミングで、この結果を得ることができました。来週は、ホッケンハイムでのテストもあります。この高いモチベーションをキープして、後半戦、まずはドイツGPに臨みたいと思います。