08.07.04 vol.175 シルバーストーンテスト

改良スペックはドライバーからも好評価で、
期待できそうです。

Honda Racing F1 Teamは次戦イギリスGPに向けて、シルバーストーン・サーキットで3日間のテストを行った。前戦フランスGPではRA108の性能を十分に発揮することはできないまま、不本意な結果に終わった。しかし新しい空力パッケージなど、テストでの感触は悪くなかったようだ。

 

【プロフィール】
長谷川 祐介(はせがわ・ゆうすけ)
1963年12月1日生まれ、東京都出身。
1986年Honda入社。量産車のエンジン開発や将来パワープラントの研究を経て、2002年よりシステム開発責任者としてF1に携わる。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)エンジニアリングディレクターとして、現場にてパワープラント領域を統括する立場である。

―今回のテストでは、どんなものを新たに試したのでしょうか。
 空力パッケージが中心でしたが、エンジン側も改良可能な範囲で手を加え、その評価も行いました。

―テストの感触は、いかがでしたか?
 よかったですよ。少なくとも前戦フランスGPのときよりははるかによくなっています。マニクールよりシルバーストーンの方が、路面のグリップがいいことを差し引いても、2人のドライバーからは「クルマはよかった。バランスもいい」という評価でしたね。シーズン中のテストでは1台しか走らせられないために、今までの仕様との比較走行はできにくい。でも着実に進化していることは、確かですね。

―今週のシルバーストーンは、かなり風が強かったようですね。
 強い風だけでなく、風向きも頻ぱんに変わりました。そのために同じコンディションで2周走るということが、なかなかしづらかった。そのためにたとえば、数種類のフロントウィングの比較評価などは、ちょっとむずかしかったですね。とはいえマニクールで出た、全般的なグリップ不足、コーナリングでの不安定さなどの問題は、いっさいありませんでした。

―タイムだけでは、他チームとの比較はなかなかできないと思いますが、感触としては?
 いつものことですが、それほど軽い燃料では走っていません。そのためベストタイム比較では、3日間を通じて7〜8番手ぐらいでした。しかしロングランの速さでは、直接のライバルたちに引けは取ってないはずです。

―マシンの外観での変化は?
 フロントウイング、エンジンカウルの空力パーツなどですね。エンジンカウルと一体型になった、いわゆる"タイプRウィング"が、装着されてます。ただこちらは、イギリスGPに投入するかどうかは、まだちょっと未定です。それからエンジンは出力向上を狙い変更しています。

―今週末のGP本番では、どれほどのパフォーマンス発揮が期待できそうですか。
 相対的なポジションは、実際に金曜日に走ってみないと何とも言えません。ただレース週末に向けて、かなりいい準備ができたことは確かです。RA108のポテンシャルを十分に発揮するための、セットアップもできました。3日間を通じて、まったくトラブルフリーでしたしね。何よりドライバーが、「これまでと、まったく違うクルマになってる」と言ってくれてるのが、心強いですね。