08.06.11 vol.172 Rd.7 Canadian GP

今日のレースは、バリチェロの健闘に尽きます

長い直線を、シケインや低速コーナーで結んだレイアウト。最高速と減速時の安定性に不安があるRA108にとって、カナダGPは苦戦が予想された。実際、ジェンソン・バトンは、ギアボックスのトラブルにより、予選アタックを断念して19番手、決勝も11位に終わる。一方、ルーベンス・バリチェロは、今季自己ベストの9番グリッドからスタートし、7位入賞を果たした。

 

【プロフィール】
長谷川 祐介(はせがわ・ゆうすけ)
1963年12月1日生まれ、東京都出身。
1986年Honda入社。量産車のエンジン開発や将来パワープラントの研究を経て、2002年よりシステム開発責任者としてF1に携わる。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)エンジニアリングディレクターとして、現場にてパワープラント領域を統括する立場である。

―今回は初日から決勝当日まで、終始バリチェロの方が速さで優っていました。
 そうですね。バトンは初日から、グリップ不足や減速時の挙動の不安定さに悩んでいた。それでダウンフォースを付ける方向で、2日目以降は対処したのですが、そうしたらタイムが伸びない。さらにギアボックストラブルが追い討ちをかけるという具合で、どうも歯車が噛み合わなかったですね。

―一方のバリチェロは、予選9番手。レースでも、途中までは上位入賞をほぼ手中にしていました。
 ええ。バリチェロは予選、レースを通して、本当にすばらしい走りを見せてくれました。特にレースでは、体調が悪かったにもかかわらず、最後まで走り通した。固い方のタイヤでは、3位表彰台のデビッド・クルサードより速いペースでした。それがスーパーソフトを履いたとたん、ペースがまったく伸びなくなって、順位を落としてしまった。原因はこれからしっかり分析しますが、あれは痛かったですね。そういうクルマでも、バリチェロは入賞圏内にとどまって、完走してくれた。今日のレースは、バリチェロの健闘に尽きますね。

―カナダ仕様を試すはずだったポールリカールでのテストが、雨でほとんど走れなかった影響は?
  けっこう、大きかったですね。ちゃんとテストできていたら、たとえば初日にダウンフォースの小さいウイングから大きいものまで、全部試す必要もなかったでしょうしね。結果的に、かなり軽めのウイングでよかったのですが、その結論に至るまでにずいぶん時間がかかってしまいました。

―バリチェロはモナコに続いて、2戦連続入賞。とはいえマシンパフォーマンスは、決して満足できるレベルではなかった?
  複雑な気持ちですね。最後にバラバラっと抜かれて、4位から7位に落ちてしまいましたから。でも冷静に考えれば、あれが現時点の我々のクルマの限界だった。それをバリチェロは、100%引き出してくれたということですね。