08.05.28 vol.171 Rd.6 Monaco GP

ベテランらしさを発揮したバリチェロ。
バトンもかなりの結果が、出せたはずでした。

今年のモナコGPは、びしょ濡れのウエット路面からほぼドライへと変化していく、難しい状況でのレースとなった。ただでさえ難易度の高い市街地コースだけに、コースオフやクラッシュするマシンが続出。ジェンソン・バトンもスタート直後、BMWザウバーと接触して、大きく後退してしまう。その一方、ルーベンス・バリチェロはミスのない走りで2時間を走り抜き、6位入賞を果たした。

 

【プロフィール】
長谷川 祐介(はせがわ・ゆうすけ)
1963年12月1日生まれ、東京都出身。
1986年Honda入社。量産車のエンジン開発や将来パワープラントの研究を経て、2002年よりシステム開発責任者としてF1に携わる。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)エンジニアリングディレクターとして、現場にてパワープラント領域を統括する立場である。

―バリチェロが、今季初入賞。一方でバトンは、残念な結果に終わりました。
 そうですね。まったく、そう思います。ただわれわれだけでなくライバルたちも速くなってましたから、期待したほどはポジションが上げられてない。そこはやっぱり、厳しい世界ですよね。そして接戦の度合いは、さらに上がった。それは言い換えれば、少しずつとはいえ上位チームに近づけてるということだと思います。

―1回ストップ作戦でいった理由は?
 シミュレーションでは、2回ストップ作戦の方が速い。でもそれはあくまで渋滞に会わなかったときの話で、モナコは前が詰まってしまうと、ほとんど抜けません。だったら、1回でいこうと。天候は、基本的に回復基調だろうというのはわかってました。スタート時はウエットで、そこから乾いていく展開になるだろうと。一番恐れたのは、乾きかけてるときに再び雨が降る状況でした。そうなったらタイヤ交換を余儀なくされて、1回ストップの有利さが消し飛んでしまう。レース中には、また雨になるという予報もあったのですが、外れてよかったです。

―バトンは前日の雨のフリー走行で速かっただけに、残念でしたね。
 ええ。フリー走行は、フェラーリと遜色のない速さでした。レースもその時とほぼ同じコンディションだっただけに、ちゃんと走っていれば面白い結果になったでしょうね。

―先週のテストでは、「本当のところが見えにくい。実際に本番で走ってみないと、モナコ仕様のマシンの戦闘力はわからない」ということでしたが。
  悪くなかったですね。総じて、うまくまとまっていたと思います。高い次元で、バランスの取れたクルマになっていました。その意味でも、(ジェンソンの結果は)残念でした。予選のアタックが黄旗で中断されなかったら、少なくともジェンソンはトップ10内のグリッドからレースを戦えたでしょう。そうしたら、ハイドフェルドとの接触事故もなかったかもしれない。トップチームと互角に戦うところまではいかなかったにしても、中団の中ではかなり上の方で争えていたはずです。

―次のカナダは?
前回お話したように、カナダ用空力パッケージのテストが雨のために、ほとんどできていない。でも今年は、新開発のものを風洞で試して、大きく外したことがほとんどない。これは去年から改善した点ですね。ですから、ほぼぶっつけ本番とはいえ、カナダ用パッケージも期待できると思ってます。