08.04.16 vol.166

序盤3戦を終えて〜中本修平DMDが語る

オーストラリア、マレーシア、バーレーンと続いた序盤3戦で、Honda Racing F1 Teamはポイントを獲得することはできなかった。とはいえ中団グループが100分の1秒単位でしのぎを削る中、存在感は発揮しつつある。この3戦を振り返り、そして今後の展開をどう見るのか。中本修平デピュティマネージングディレクターに語ってもらった。

 開幕前に、ここまでいきたいという目標設定があったんですが、残念ながら到達できませんでした。具体的には去年のクルマに対して、2秒4速くしようという目標でした。しかし、メルボルンでは、1秒6ぐらいしか短縮できませんでした。

 それには、いろいろな原因があります。まず空力性能が、目標値まで届かなかったことです。2分の1モデルでは届いていたのが、実機では若干低くなってしまいました。モデルと実機では、形状は同じですが、部品の剛性の違いから変形具合に微妙な違いが出ます。それが空力性能に、影響を及ぼしている様です。両者の比較テストに十分な時間が取れれば、どこがどう違うのか、じっくり分析できます。しかし残念ながらその時間は取れませんでした。開幕直前にようやく、最終パッケージが完成したような状況だったからです。

 空力性能重視で開発を進めたために、メカニカルの分野にも影響が出ました。たとえばサスペンションのアーム形状とか取り付け位置とか、空力チームの要請で変更したところがあります。その結果、簡単にいえば剛性が低下しました。もちろん剛性レベルを維持するという目標を掲げて、それに沿って開発を進めましたが、開幕戦には、間に合いませんでした。この剛性低下が、グリップ性能にどれぐらいの影響を与えるのか、具体的な数値を言えませんが、高剛性であることが理想的なことは間違いが無いので、現在、剛性の高いバージョンを作っている最中です。

 それから今年は、トラクションコントロール以外にも、ブレーキング時にリアタイヤのロックを抑制するオーバーランコントロール(OC:Overrun control)も禁止されました。トップチームはそれに代わるものを、すでにモノにしている様に見えます。我々ももちろん取りかかっているんですが、うまく作動しない場合があります。ドライバーがブレーキバランスを操作する際に、変わり過ぎたり、十分に変わらなかったり、まだまだ改良しなければなりません。

 結局、開幕戦までにここまでいきたいと設定した目標に対して、3戦終えていた時点で、70%ぐらいの達成度です。走行テストができない関係で、バーレーンまでは基本的にバージョンアップはないですから、序盤3戦はそのレベルで戦わざるをえませんでした。それがある程度レース結果に、反映してしまってます。

 ここまで結果が出せてないのはもちろん歯がゆいです。原因は、空力チームを作り変えた関係で、2ヶ月以上遅れての開発スタートだったことです。この遅れを取り戻すために、チームは一丸となってがんばってくれましたが、開幕の時点では、1ヶ月遅れぐらいの感じでした。もともとフェラーリやマクラーレンにはかなわないにしても、もし2秒4の目標が達成できていたら、BMWザウバーに近いところにはいけていたわけです。ちょっと時間が足りなかったなあという思いです。目標を作るのは簡単ですが、それを成し遂げるには、やはりそれなりの時間が必要だということです。

 その1ヶ月の遅れを、これからどう詰めていくか。もちろんライバルたちも、進化を続けていきますが、われわれも今週、バルセロナでテストがあり、空力を中心に次戦スペインGPに向けたアップデートに期待していますし、スペインGPには本来の開幕戦仕様にできるだけ近いものを持って行きたいと思っています。その間に、ライバルたちがどこまで伸びるか。それによって、勢力図は変わってくるはずだし、変えなきゃいけないと思っています。