08.03.31 vol.164 Rd2.Malaysia GP #2

いかに安定して潜在能力を引き出すか。
それがHondaの、当面の課題です。

Hondaは開幕前の予想を覆す戦闘力を発揮し、中団グループ内でライバルたちとしのぎを削っている。とはいえ各チームの実力差は拮抗しており、序盤2戦でポイントを獲得することはできなかった。今季のマシンに、十分な潜在能力はある。厳しい戦いを打開するには、その力をコンスタントに発揮することだと、HRDエンジニアリングディレクターの長谷川は主張する。

 

【プロフィール】
長谷川 祐介(はせがわ・ゆうすけ)
1963年12月1日生まれ、東京都出身。
1986年Honda入社。量産車のエンジン開発や将来パワープラントの研究を経て、2002年よりシステム開発責任者としてF1に携わる。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)エンジニアリングディレクターとして、現場にてパワープラント領域を統括する立場である。

―開幕戦のメルボルンに続き、セパンでも中団グループは僅差の戦いでしたね。
 いや。第2戦は、そうでもありません。たとえばトヨタには、ずいぶん離されてましたしね。それからレッドブルのウェーバーも、ロングランは非常に速かったですね。トゥルーリ(トヨタ)に大きく離されたのは、正直いってショックでした。一方でルノー、ウィリアムズとの比較でいえば、そんなに違わないペースだったと思うんですが。マレーシアの我々は中団グループの中でも、真ん中より下に位置していたと思います。

―予選も、トップ10に入れませんでした。
 まあ予選は、当初想定していた結果だったという感じはします。ただその前のフリー走行でのロングランのペースを見て、今回はよりレースで苦しみそうだと覚悟してました。同じ中団を走るライバルたちは、その時点からけっこう速かったですから。

―第3戦以降も、中団グループの主人公はGPごとに代わっていきそうですか。
 そうだと思います。ウィリアムズは今回苦戦してましたけど、必ず出て来るでしょうし。クルマのセットアップが決まるとか、そのサーキットの特性に合うとか、そういうことで脚光を浴びるチームが変わるでしょうね。

―Hondaはどこで、主人公になれそうですか?
 そうですねえ。ヘレスだと速いんですが、残念ながらレースは行われないですし(笑)。ただポイントを取れなかったマレーシアにしても、ジェンソンは終盤にすばらしい速さを発揮してくれました。ほぼ空タンクに近い状態の最終周に自己ベストを出し、それが総合4番手の速さでしたからね。うまく決まれば、それだけの潜在能力は持っています。とりあえずの課題は、それをいかにコンスタントに出せるかということです。1回目、2回目のピットイン直前も、同じように空タンクに近い状態だったわけですが、速さ的には劣っていましたからね。

―あの速さが、最初から出せていればと。
 そうですね。開幕仕様のパッケージが完成したのが本当にギリギリのタイミングだったことも、マシン性能を使いこなす上での障害にはなってますが、でも遅れたのはわれわれの責任ですから。

―開幕戦でバリチェロのフロントサスに問題が出て、第2戦は2台ともその仕様を使うことができなかった。それによる戦闘力の低下は?
 あったと思います。ドライバーも使いたがっていましたが、対策が完了するまでは実戦への投入を控えました。早ければ、次戦バーレーンGPで搭載できると思います。テストはその第3戦が終わったあとまでないですが、それからは開発も急ピッチで進むはずですよ。