08.03.26 vol.163 Rd2.Malaysia GP #1

もっとマシンの性能を使い切れていたら、
違った結果になっていたかもしれません

開幕2連戦の後半戦、マレーシアGP。ジェンソン・バトン11番手、ルーベンス・バリチェロ14番手からスタートした決勝レースは、10位、13位という結果に終わった。2台完走を果たしたにもかかわらず、ポイント圏内に入れなかったのはなぜだったのだろう。

 

【プロフィール】
長谷川 祐介(はせがわ・ゆうすけ)
1963年12月1日生まれ、東京都出身。
1986年Honda入社。量産車のエンジン開発や将来パワープラントの研究を経て、2002年よりシステム開発責任者としてF1に携わる。
現在は、ホンダ・レーシング・ディベロップメント(HRD)エンジニアリングディレクターとして、現場にてパワープラント領域を統括する立場である。

―2台完走したものの、ポイント獲得はなりませんでした。今日のレースの感想は。
 端的に言えば、速さが足りなかったということですね。ただレース後、ドライバーたちと話し合った際には、「マシンセッティングの面で、もうちょっと改善の余地があったかもしれない」とも言っていましたね。その意味では、マシン性能を100%出し切れてなかったかもしれません。

―レース直前まで、タイヤ選択にも悩んでいたようですね。
  そうですね。グリッドにつく直前に2人に3周ずつ走ってもらい、そこで決めました。バリチェロは最初にハードタイヤ。残りの2スティントを、柔らかい方のミディアムという選択。一方のバトンは、最初がミディアム、中盤がハード。そして最後に再びミディアム。結果的には、路面コンディションがよくなった終盤でのミディアムが、一番いいペースで走れていましたね。(注:バトンは終盤、自己ベストを更新し続け、最終周に総合4番手となるベストタイムを叩き出した)

―「セッティングの点で、もうちょっとやりようがあった」という部分を、もう少し具体的に教えていただけますか。
 簡単に言うと、アンダーステア(クルマが曲がりにくい状態)が強かったですね。もしやり直せるんなら、フロントウイングをもっと立ててスタートしたかったと、ジェンソンは言ってます。

―ここは本来、オーバーステアになりやすいサーキットですよね。
 そうですね。それを懸念したのですが、むしろこの週末はフロントタイヤが滑って、過熱する症状が出るくらいでした。フロントがグリップしないことで、アンダーステアが出る。そのために、いろいろ対策は立てたのですが。満足すべき挙動になってくれたのは、ようやく最後にミディアムタイヤを履いて以降でした。
 あの時のペースが、レース序盤から出せていたら。あるいはもっとマシンの性能を使い切れていたら。そうしたら違った結果になっていたかもしれないという思いは、ちょっとありますね。

次回につづく