


9 |
- September - |
スパ・フランコルシャンは好きなサーキットの1つだ。でも今年のベルギーGPは思い出したくないレースになってしまった。僕のRA108は、ミディアム・ダウンフォースの構成だと今ひとつパフォーマンスがよくなかった。それでGPの期間中ずっとグリップ不足に悩まされた。
金曜フリー走行の時、空力とサスペンションのセッティングを修正することにした。土曜朝のフリー走行に間に合うように、金曜は夜遅くまで作業した。データを分析し、一歩でも前進するように一番いい方法を考えた。でもその努力の結晶を、セッションで試すことができなかった。ピットから出て最初の周に燃料圧のトラブルでストップしてしまったからだ。
それで、1度も試していないセットアップで予選を走ることになった。そういうことを考えると、チームメートのルーベンス・バリチェロより遅れはしたけれど、その差が0.1秒以内だったから、その点では喜んでもよかったのかもしれない。しかしそうはいっても、2台とも1次予選を突破できなかったのだから、チームにとっては残念だった。
レースはずぶ濡れのコンディション。グリッドでトラクションを得るのはかなり難しかった。さらに、第1コーナーの固まりに引っかかってしまい、勢いがそがれた。僕は1ストップ作戦だった。だから序盤はマシンがひどく重くて、ほかの2ストップで燃料の軽いマシンを追い抜くのはきつかった。
第1スティントの間、アンダーステアがひどかったので、22周目に唯一予定されていたピットストップで、フロントウイングを立てた。でもそのため、レースの後半はオーバーステアに悩まされることになった。特にあと3周というところで雨が降り始めてからがひどかった。クラッシュのリスクを負ってそのまま走るのは意味がなかったから、最後から2周目でピットに入ってウエットタイヤを履き、15位でフィニッシュした。
8月は出だしがよかったのに残念な締めくくりとなってしまった。
ハンガリーGPでは新しいリアサスペンションのおかげで、マシンのバランスがよくなり運転しやすくなった。3週間のブレイク期間中、エンジニアたちがマシンを大幅に進化させてくれた。だから、次のバレンシアには、少しは前進できるだろうと自信を持って臨んだ。金曜午後のフリー走行ではその通りの走りができて、僕は3番手のタイムをたたき出した。
バレンシアはたいていの人が予想していたよりスピードのあるサーキットだった。そのため、セットアップが決めづらかった。スローコーナーではダウンフォースが欲しいが、13秒のバックストレートや最終セクターに続くS字の連続では、あまりダウンフォースが強いとスピードが思うように出せない。
残念なことに、予選では、フリー走行のような走りができなかった。一番大きな原因は、オプションタイヤでグリップがなかったこと。硬いタイヤだとバランスがよかったのだが、柔らかいのを履いた途端それが悪くなった。それで、グリッドでは16番手となった。
バレンシアは走りやすいけれど、オーバーテイクは難しい。原因の1つはオフラインのタイヤかすだ。このせいで滑りやすく、追い抜くのが難しい。何とか13位でフィニッシュした。
バレンシアのあとの水曜、僕はシビック ハイブリッドを運転してモンツァまで行った。木曜と金曜にテストがあったからだ。このサーキット用にダウンフォースの低い空力パッケージを開発するということで、重要なテストだった。さらに、9月14日のイタリアGP前にセッティングを完成させておかなければならなかった。
モンツァは超高速のサーキットだ。走っていて気持ちが湧き立つ。低いダウンフォースのセッティングでピットから出たら、最初の周回から、マシンの感触がこんなにも違うものかと信じられない気分になる。地面に押さえつけるダウンフォースがないと、車体があちこちに動く。それにアクセルの加速のよさも感じる。
テストでは、1度も軽い燃料で走らなかったから、ほかのチームと比べて僕らがどのくらいの位置にいるのかは分からない。イタリアGPでポイントを稼ぐのは相当厳しいだろう。しかし去年も同じようなことを言っていて8位になったからね。どうなるにせよ、スパよりはいい走りが見せられると思う。
モンツァのテストが終わると、車でモナコに戻った。その週末はトレーニングとベルギーGPに向けた準備。それからレースのため水曜にスパへ飛んだ。南フランスより気温が10℃も低かった。
ヨーロッパ・ラウンドはモンツァで終わる。F1はその後3レースをアジアで開催する。そのうち、Honda Racing F1 Teamにとってのハイライトは、10月12日の日本GPだ。このダイアリーを読んでくれている皆さんとサーキットで会えるのを楽しみにしているよ。